伝説の鍛冶屋ダナイ~聖剣を作るように頼まれて転生したらガチムチドワーフでした~

えながゆうき

文字の大きさ
121 / 137
第五章

エルダートレントの討伐②

しおりを挟む
 俺たちはエルダートレントに気がつかれないように慎重に進んだ。こちら側の射程距離圏内に入ったところでアベルが聞いてきた。

「どうする? 不意打ちする?」
「そうだな……不意打ちしたらめちゃくちゃ怒ったって言っていたから、試しに正面から行ってみるか。まずは葉っぱの威力を確かめたい。俺たちなら不意打ちなんてしなくても大丈夫だろう。ダメそうだったら一端引こう。足はそんなに速くないみたいだから、逃げることは可能のはずだ」

 トレントは根っこを足のように使って移動する。そのため、タコのように地面をはうように移動するそうである。そのため、そこまで足は速くない。トレントにとっては根っこは大事な食事をするための器官であるため、よほどのことがない限り攻撃には使わないそうである。

 エルダートレントはそれなりに背が高く、ヒョロッとしている。あの身長を支えるためには、それなりに根を伸ばさないといけないはずだ。根っこによる攻撃はそれほど考えなくても良さそうだ。

 俺は隣に並ぶアベルを見た。アベルがうなずいたのを確認すると、魔鉱製の盾を構えると、ゆっくりと前に進んだ。
 今回の俺の装備は右手にハンマー、左手に大きな盾を持っている。これで攻撃を回避しつつ、打撃で派手にエルダートレントの注意を引きつけるのが仕事だ。俺に注意が向けば向くほど、アベルが戦いやすくなる。

 基本的には他のみんなにはアベルの援護をしてもらう。俺は忍術を使えるし、盾もある。それにドワーフはとても丈夫だ。一発や二発くらったところで、どうということはないだろう。

 ソロリソロリとエルダートレントに近づくのには、もちろんわけがある。一つ目は、エルダートレントに気がついてもらうこと。もう一つが攻撃範囲を知るためである。
 木の枝を振り回す攻撃なら大体の範囲は分かるのだが、葉っぱカッターの範囲が分からない。今はそれだけが不安要素である。

 そのとき、エルダートレントが気がついたのだろう。その目が、カッ、と見開かれた。そこには真っ黒な穴が開いているだけである。かなり不気味である。夜道であったらおそらく悲鳴を上げていただろう。

 エルダートレントはそのままジッとしていて動かない。さらに俺たち二人が距離を詰めると、葉っぱをガサガサと動かし始めた。そして――矢のような勢いで葉っぱが一枚飛んできた。

 警戒していたので、難なくそれを盾で防いだ。カン、というまるで金属と金属がぶつかったかのような音が聞こえた。盾を確認したが、特に傷などはついていないようである。
 どうやら葉っぱの硬度は魔鉱以下のようである。

「盾に傷は入ってねぇ。魔鉱程度の堅さがあれば大丈夫だ!」
「分かったわ」
「分かったなの」

 これで随分と楽になった。魔鉱製の盾に傷が入るようなら、より慎重に立ち回らないといけなくなるところだった。その後もエルダートレントは葉っぱを飛ばしてきたが、俺は盾で、アベルは剣で難なく防いでいた。

 うむ、どうやら葉っぱを連続で大量に飛ばすことはできないみたいだな。俺たちは枝での攻撃がギリギリ届かない範囲まで近づいたが、葉っぱの物量で飽和攻撃を仕掛ける素振りはなかった。

 飽和攻撃に備えてリリアとジュラが準備していたが、どうやら大丈夫そうである。そしてついに、俺たちは枝の攻撃範囲内に入った。
 すぐにエルダートレントからの攻撃が来た。様子見なのか、一度にたくさんの枝による攻撃がくるのではなく、太い枝の一本がこちらへと振り下ろされた。

 素早くそれを回避すると、アベルの剣がその枝に向かって走った。
 アベルの剣は音もなく枝を切断した。見た感じ、抵抗感はなさそうである。

 エルダートレントを斬ることができる。

 それは俺をホッとさせると共に、アベルに勇気を与えたようである。アベルはニヤリと笑うと、エルダートレントの幹へと向かって走って行った。
 俺はそんなアベルを援護するべく、こちらに向かってきた枝を盾で防ぐと、ハンマーをたたきつけた。

 ガキン! という木とは思えない音が辺りに鳴り響いた。硬い! 俺の魔鉱製のハンマーでへこみもしないとは。ヤツの樹皮は魔鉱以上の硬さか! 一体どんな体の作りをしてるんだ。

「ダナイ、気をつけて! エルダートレントは身体強化の魔法でカチカチになってるの!」

 なるほど、身体強化の魔法で防御力を上げているのか。きっと同時に魔法耐性も上げているのだろう。エルダートレントの魔力量は計り知れないな。

「アベル、気がついたか!?」
「うん。どうやら攻撃してくる枝は、葉が茂っていない枝だけみたいだね」
「さすがは植物。光合成に必要な葉を粗末に扱うようなことはしないか!」

 葉のついていない枝が、再びこちらへと振り下ろされた。それを回避しながら、再び打撃を与える。俺の攻撃が無駄であるのは百も承知だ。注意がこちらに向けばそれでいい。
 アベルは攻撃を回避しながら幹に斬りかかった。

 今度は先ほど枝を切り払ったときとは違い、ザクリ、というシャベルで地面を掘ったかのような音が聞こえた。
 エルダートレントの幹を斬ることはできたようだが、さすがに一撃で両断することはできなかったようである。すぐにアベルがバックステップで下がった。

 アベルに向かって飛んできた葉をマリアが打ち落とした。どうやら葉っぱはそれほど強度がなさそうだ。魔法も効果があるみたいだ。

「どうやら足下には葉っぱを飛ばせないようだな」
「そうみたいだね」

 ニヤリと笑いかけると、アベルも笑い返してきた。どうやら余裕はありそうだ。こちらもエルダートレントの攻撃は防ぐことができるので、余裕がある。
 先ほどのアベルの斬った感じだと、あと二、三回斬りかかれば切断できるだろう。

「アベル、行けるか?」
「もちろん!」

 再び俺たちは足並みをそろえてエルダートレントへ向かって行った。知能があると言っても、どうやら大したことはないようである。さっきと同じように注目を引くように攻撃すると、すぐにこちらに目を向けた。

 ザクリ、さっきと同じ音がなった。よし、これでまた一度引いて、体勢を立て直そう。

「アベル? おい、一度下がるぞ!」
「う、うん」

 どうした、アベル。何だか複雑な顔をしているぞ。
 そのとき、エルダートレントが全身を激しく前後左右に揺すった。これは、葉っぱを飛ばしてくる合図だ。だがさっきまでとは違う。もしかして、大量に飛ばしてくるつもりか!?

「リリア、ジュラ、援護を頼む! ダナイ忍法、風遁、暴風障壁!」
「ウインド・シールド!」
「二人を守って! 世界樹の盾!」

 重なった風の壁は飛んできた葉を吹き飛ばし、なおも突き進んできた葉は木の盾に、カン、カン、カンと音をたてて跳ね返された。さすがは世界樹の盾、何ともないぜ。
 エルダートレントを見ると、頭の上に茂っていた葉っぱはまばらになっていた。これ以上やれば、光合成はできなくなるだろう。
 それを知っているのか、エルダートレントはその根っこを地中から引き抜き始めていた。

「アベル、どうした!」
「剣が……悲鳴を上げた……」

 ああ、さすがのミスリルの剣でもあの硬さであの太さは厳しいのか。アベルの顔がみるみる曇ってゆく。剣が大好きだもんな、アベル。宝物が悲鳴を上げたらそんな顔にもなるか。

「アース・バインド! どうしたの!?」
「動いちゃダメよ、つる縛り!」

 リリアとジュラが今にも歩き出そうとしていたエルダートレントを地面にくくりつけた。そのすきにマリアは残りの葉っぱを打ち落としていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

鬼の兵法伝承者、異世界に転世せしむる

書仙凡人
ファンタジー
俺の名は桜木小次郎。 鬼一法眼を祖とする鬼一兵法の令和の伝承者。 だがある時、なぜか突然死してしまったのだ。 その時、自称神様の変なペンギンが現れて、ファンタジー世界の転生を持ちかけられた。 俺はヤケになって転生受け入れたら、とんでもない素性の奴にログインする事になったのである。 ログイン先は滅亡した国の王子で、従者に毒盛られて殺されたばかり。 なにこれ? クーリングオフねぇのかよ!

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。 音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、 幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。 魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。 そして再び出会う幼馴染。 彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。 もういい。 密かにやってた支援も打ち切る。 俺以外にも魔道具職人はいるさ。 落ちぶれて行く追放したパーティ。 俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

処理中です...