伝説の鍛冶屋ダナイ~聖剣を作るように頼まれて転生したらガチムチドワーフでした~

えながゆうき

文字の大きさ
127 / 137
第五章

お酒の力

しおりを挟む
 師匠に言われた通り、手土産にブランデーを買った。金なら余っていたので、年代物のブランデーを樽で購入した。それを見ていたリリアがさすがにあきれて苦言を言ってきた。

「随分と思い切った手土産ね。それでそのゴンさんが何も知らなかったらどうするの?」
「そんときはそんときさ。師匠の相弟子なら、仲良くしておいて損はないさ。もしかすると、師匠も知らない技術を習得しているかも知れん」
「でもあなた、調べれば分かるわよね?」

 う、いつになく厳しい。確かにそうだが、そうじゃないんだよ。

「ほら、やっぱり聞くのと、実際に自分の目で見るのとじゃ、大違いだろ?」
「それはそうかも知れないけど、でも、いくら何でもお金を無駄遣いしすぎよ」
「あー! リリアがダナイをいじめてる~!」

 ジュラの言葉にリリアが笑顔で振り向いた。

「いじめてないよ~」

 俺たちが言い争っているのを見つけてジュラが駆け寄ってきた。助かった。リリアはその事実を認めたくないのか、笑顔でジュラに接している。どうやらリリアは、自分が優しいイメージを作りあげたいようである。
 でもな、手遅れだと思うんだ。以前鬼のような形相でジュラを怒ったもんな。

「お帰り、ダナイ。良いお酒はあった?」
「おう、バッチリだよ、アベル。これなら文句は言わせねぇ」
「お、自信があるみたいね。王都でお酒を探したのは正解だったわね」

 マリアがサムズアップをしながら言った。
 俺たちは今、王都のそれなりに良い宿に泊まっていた。いつもの高級宿だとライザーク辺境伯にこちらの動きが伝わりそうなので、今回ばかりは別の宿にしたのだ。
 今の俺たちは魔導船による空の移動によって、短時間で王都まで行くことができる。その早さ故に、疑惑の目を向けられかねない。そのための回避策である。

 冒険者ギルドからドワーフが大体どの辺りに住み着いているのかの情報を得ることができた。ドワーフは武具の作成に長けている。冒険者の中には、ドワーフに武器を作ってもらおうと、ドワーフのところに直接交渉に行く人もいるらしい。

 しかしドワーフはかなりの気分屋だそうであり、滅多に武器を作ってくれないとのことだった。ドワーフ製の武器は高値で売れる。一つ売ればかなりのもうけになるので、たまに作るくらいで十分らしい。もちろん、大量に作って価値が下がらないようにしているという側面もあるだろう。思ったよりもしたたかな種族なのかも知れないな。


 翌日、俺たちは王都の北門からドワーフが住み着いている山岳地帯へと向かった。王都の流通は主に、東西と南が中心だ。北側からの交易はほぼないと言っても過言ではない。そのため、北門を訪れる人は少なく、それに伴って王都北門は寂れていた。

「何だかここだけ王都じゃないみたいだね。イーゴリの街みたい」
「おいマリア、さすがにそれは失礼なんじゃないのか。どっちにとっても。確かに冒険者は少ないみたいだが……これだと俺たちは目立つかな?」

 北門を出入りしているのは、北門周辺に畑を持っている人たちが多いようである。冒険者の姿は見えなかった。それもそうか。山に魔物はいない。そうなれば、討伐依頼も素材採取依頼も張り出されないだろう。

「大丈夫よ。冒険者がドワーフの武器を求めて北に向かうことはよくあるって言ってたでしょ。私たちもある意味でその一員だし、問題ないわ」

 リリアの意見にうなずいて返した。確かにそうだな。頻繁に北門を出入りしなければ怪しまれることはないだろう。なるべく早くオリハルコンが見つかるといいな。

「それじゃ、出発するとしよう。地図の通りなら二日程度で到着するだろうからな。魔物もいないし、道中が危険と言うわけじゃないだろうが、油断せずに行こう」

 俺たちは北門から出ると、まっすぐに山へと向かった。思っていたよりもドワーフのところに向かう人が多いのか、山までは小さな道が続いていた。しかしそれも、すぐに獣道へと変わった。

「道があるだけマシって感じね」
「ほらマリア、頑張ってなの!」
「ジュラは楽そうでいいわねー」

 マリアが遠い目をしている。そんなジュラはただいま俺の肩の上に乗っている。足下は非常に悪い。しかもジュラは子供だ。さすがに歩かせるのは困難だと判断し、俺が抱えて移動することにしたのだ。
 そのかいあってか、順調に先へと進んでいる。

「ダナイ、あとどのくらい?」
「あと一日くらいだな」
「うえー」

 そろそろ休憩時間かな。だがな、マリア、俺たちは恵まれている方だぞ。夜は快適な部屋が待っているんだからな。

 そんなこんなで山道を進んで行くと、急に視界が開けた。どうやらこの辺りだけ木々が刈り取られているらしい。ということは、ドワーフのところに着いたのかな?
 辺りの岩山を見ると、ところどころに穴が開いていることが分かった。おそらくはこれがドワーフが住んでいる穴蔵なのだろう。

 ドワーフたちを刺激しないようにソロソロと師匠に言われた場所へと向かって行った。
 そこは師匠が言った通り、先ほどの場所から多少、いや、随分と離れたところにあった。その一体だけ、下草が刈り取られている。

「多分ここだな」
「そうみたいなの。穴の中に誰かいるの」

 ジュラが何かを敏感に察知したようである。ジュラは植物を操れるからな。木の根っこ何かを使って、地面の中の様子が見られるのかも知れない。
 みんな不安そうな顔をしている。ここは同じドワーフとして、俺が行くことにしよう。

「それじゃ、ちょっと行ってくるわ」

 そう言うと、穴の方へと向かった。穴蔵の中は真っ暗だった。しかし奥に扉があるのが見えた。扉の前に行くと、俺は声を張り上げた。

「ゴンザレスさんいませんか? 俺はダナイと言う者です。俺の師匠、ゴードンの紹介で来ました。手土産にブランデーを樽で持ってきたんですが……」
「おお、ゴードンの弟子か! よく来たな!」

 ものすごい勢いで扉が開いた。ブランデーの話が出るまではまったく反応がなかったのに。
 ゴンさんは確かに他のドワーフよりは小奇麗にしているようだった。以前王都で見かけたドワーフに比べれば随分とマシである。まあ、俺にはかなわないがね。
 そんなゴンさんは俺をマジマジと見ていた。

「まさか兄弟、お前もドワーフか?」

 どうやら早くも兄弟と見なされたようである。お酒の力ってスゲー。ケチらなくて良かったぜ。効果はバツグンだ。

「ええ、そうです。こんなドワーフなんで街で暮らしています。他にも連れがいるんで、呼んでも良いですかね?」
「ああ、構わんよ。中に入ってくれ」

 俺はリリアたちを呼ぶと、穴蔵の中へと入って行った。穴蔵の中は思ったよりも明るかった。ゴンさんお手製の魔道具なのだろうか? 見たことがないタイプの魔道具のランプが部屋を照らしている。

「ゴンさん、突然尋ねてすいません。これはお近づきの印です」

 そう言って俺の印籠型マジックバッグから樽でブランデーを出した。樽から僅かににじみ出ている匂いを敏感に察知したのか、ゴンさんの目の色が変わった。

「お、おお、すまんな。……飲んでみても?」
「もちろん構いませんよ。そのために持ってきたのですから」

 俺がそう言うと、うれしそうに人数分のコップを持ってきた。まあ、俺たちは飲むつもりはないのだが。「これからまだすることがあるので」と断ったが、ゴンさんは特にそれに気を悪くすることなくブランデーを飲んだ。
 どうやら気に入ってくれたようである。続けて二杯ほど飲んだ。大丈夫かな?

「いい酒だ。感謝するぞ。それで、どうしてここにやって来た?」
「それですが、実はオリハルコンを探しておりまして……」
「オリハルコン……」
「はい」

 ゴンさんは考えるように目をつぶった。それから目を開けると、もう一杯飲んだ。

「そうか、オリハルコンか。こんなことなら俺が持っておくべきだったな」
「と、言いますと?」
「俺の師匠がな、死ぬ間際に俺にオリハルコンをくれたんだよ。だが俺は……それを売り払ったんだよ」

 どこか悔やむような、そんな声が聞こえた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

RPGのストーリー開始前に殺されるモブに転生した俺、死亡フラグを回避してラスボス助けたら女主人公が現れてなぜか修羅場になった。

白波 鷹(しらなみ たか)【白波文庫】
ファンタジー
――死亡フラグのあるモブに転生した。なぜか男主人公の姿で。 王国に孤児院の子供達を殺された少女ミュライトがラスボスのRPG『プリテスタファンタジー』。 物語後半でミュライトと主人公は互いに孤児院出身であることが分かり、彼女を倒した主人公がその死を悲しむ絶望的なエンディングからいわゆる「鬱ゲー」と呼ばれているゲームでもある。 そして、そんなゲームの物語開始前にミュライトと同じ孤児院に住んでいた子供に転生したが…その見た目はなぜか男主人公シュウだった。 原作との違いに疑問を抱くものの、このままストーリー通りに進めば、ミュライトと主人公が戦って悲惨なエンディングを迎えてしまう。 彼女が闇落ちしてラスボスになるのを防ぐため、彼女が姉のように慕っていたエリシルの命を救ったり、王国の陰謀から孤児達を守ろうと鍛えていると、やがて男主人公を選んだ場合は登場しないはずの女主人公マフィが現れる。 マフィとミュライトが仲良くなれば戦わずに済む、そう考えて二人と交流していくが― 「―あれ? 君たち、なんか原作と違くない?」 なぜか鉢合わせた二人は彼を取り合って修羅場に。 こうして、モブキャラであるはずのシュウは主人公やラスボス達、果ては原作死亡キャラも助けながらまだ見ぬハッピーエンドを目指していく。 ※他小説投稿サイトにも投稿中

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

【完結】悪役に転生したのにメインヒロインにガチ恋されている件

エース皇命
ファンタジー
 前世で大好きだったファンタジー大作『ロード・オブ・ザ・ヒーロー』の悪役、レッド・モルドロスに転生してしまった桐生英介。もっと努力して意義のある人生を送っておけばよかった、という後悔から、学院で他を圧倒する努力を積み重ねる。  しかし、その一生懸命な姿に、メインヒロインであるシャロットは惚れ、卒業式の日に告白してきて……。  悪役というより、むしろ真っ当に生きようと、ファンタジーの世界で生き抜いていく。  ヒロインとの恋、仲間との友情──あれ? 全然悪役じゃないんだけど! 気づけば主人公になっていた、悪役レッドの物語! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。

処理中です...