伯爵令息は後味の悪いハッピーエンドを回避したい

えながゆうき

文字の大きさ
18 / 48

誕生日プレゼント大作戦②

しおりを挟む
 俺は用意していた図面をジョナサンに見せた。図面には、とがった先端部分に向けて何本もの筋が走った、奇妙な筒状のものが描かれている。その筒状のものも、太かったり細かったりと緩急がつけられてある。

「これは?」
「ガラスペンだよ。羽根ペンが使いにくいから、もっと使いやすいペンが欲しいと思ってね」

 ジョナサンはその設計図を不思議そうな目で見ていた。これが本当にペンの役割を果たすのか、そう思っているのかも知れない。

「ジョナサン、このいくつもついた筋にインクをためておくんだよ。これならば、一度インクをつけただけで、長い時間ペンを走らせることができると思うんだよ」

 思う、とは言ったが、前世では実際に存在しているものなので間違いはない。半信半疑でも構わないので、一本でも作ってもらえれば俺としてはオッケーだ。

「無理そうかな? 持ち手の部分を色ガラスで作ってもらって、それを俺の婚約者の誕生日プレゼントに贈ろうと思っているんだけど……」
「ハッハッハッハ。面白いですな、フェルナンド様の発明は。よろしい。何とかやってみましょう。それにこんなときはお願いではなく、命令すればいいのですよ。我々はガジェゴス伯爵家の後ろ盾があるからこそ、こうやって伸び伸びと仕事ができるのですから」

 優しい声色だったが、こげ茶色の瞳は食い入るように図面を見ていた。すでに職人の顔である。どうやってこれを作るのか、真剣に考えている様子だった。俺はお礼を言うと、これ以上邪魔をしないように工房を後にした。

 その三日後、完成した商品を持ってジョナサンがガジェゴス伯爵家を訪ねて来た。ジョナサンが伯爵家に訪れたのは、俺が知っている限り初めてのことであり、両親もものすごく驚いていた。山が動いた、と。大げさである。

「ガジェゴス伯爵様、伯爵夫人、ご無沙汰しております」
「おお、ジョナサン。気にする必要は何もないぞ。いつもきみの鍛冶工房から送られてくる品々はどれも素晴らしい。それで、一体どうした?」

 困惑するお父様。来客室には両親と俺、ジョナサン、そして数人の使用人が壁の花となっていた。猫足のついた飴色のテーブルは、天井のシャンデリアが映り込んでいる。そのテーブルの上に、ジョナサンが小さな長方形の箱を二つ、静かにおいた。

「本日はフェルナンド様に頼まれた品をお持ちしました。そして、一つお願いに参りました。フェルナンド様が開発された『ガラスペン』を我が工房で作らせていただけないでしょうか?」
「ガラスペン?」

 両親がそろって首を左に傾けた。シンクロしてる。さすがは夫婦。そしてそのままシンクロの状態でこちらに顔を向けた。何だろう、目が「お前、何をしでかしたんだ?」って無言の圧力をかけてくる。

「こちらです。フェルナンド様からの注文は婚約者様のものだけでしたが、おそろいでフェルナンド様の分もご用意いたしました。工房で一般販売させてもらう商品はこれよりも品質が悪いものになります。この水準のものですと、オーダーメイドにする予定です」

 すかさずジョナサンがフォローしてくれた。ナイスフォロー。俺は差し出された小さな箱を開けた。両親がほうと声を上げた。
 お父様はすぐに製品化の許可を出した。そして自分たちの分をその場で注文した。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件

言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」 ──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。 だが彼は思った。 「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」 そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら…… 気づけば村が巨大都市になっていた。 農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。 「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」 一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前! 慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが…… 「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」 もはや世界最強の領主となったレオンは、 「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、 今日ものんびり温泉につかるのだった。 ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

銀眼の左遷王ケントの素人領地開拓&未踏遺跡攻略~だけど、領民はゼロで土地は死んでるし、遺跡は結界で入れない~

雪野湯
ファンタジー
王立錬金研究所の研究員であった元貴族ケントは政治家に転向するも、政争に敗れ左遷された。 左遷先は領民のいない呪われた大地を抱く廃城。 この瓦礫に埋もれた城に、世界で唯一無二の不思議な銀眼を持つ男は夢も希望も埋めて、その謎と共に朽ち果てるつもりでいた。 しかし、運命のいたずらか、彼のもとに素晴らしき仲間が集う。 彼らの力を借り、様々な種族と交流し、呪われた大地の原因である未踏遺跡の攻略を目指す。 その過程で遺跡に眠っていた世界の秘密を知った。 遺跡の力は世界を滅亡へと導くが、彼は銀眼と仲間たちの力を借りて立ち向かう。 様々な苦難を乗り越え、左遷王と揶揄された若き青年は世界に新たな道を示し、本物の王となる。

悪徳領主の息子に転生しました

アルト
ファンタジー
 悪徳領主。その息子として現代っ子であった一人の青年が転生を果たす。  領民からは嫌われ、私腹を肥やす為にと過分過ぎる税を搾り取った結果、家の外に出た瞬間にその息子である『ナガレ』が領民にデカイ石を投げつけられ、意識不明の重体に。  そんな折に転生を果たすという不遇っぷり。 「ちょ、ま、死亡フラグ立ち過ぎだろおおおおお?!」  こんな状態ではいつ死ぬか分かったもんじゃない。  一刻も早い改善を……!と四苦八苦するも、転生前の人格からは末期過ぎる口調だけは受け継いでる始末。  これなんて無理ゲー??

「ときめかない」ものなど捨てておしまいなさい

megane-san
ファンタジー
私、クリスティーナは、前世で国税調査官として残業漬けの日々を送っていましたが、どうやら過労でぶっ倒れそのまま今の世界に転生してきたようです。 転生先のグリモード伯爵家は表向きは普通の商会を営んでおりますが裏では何やら諜報や暗部の仕事をしているらしく…。そんな表と裏の家業を手伝いながら、前世で汚部屋生活をしていた私は、今世で断捨離に挑戦することにしたのですが、なんと断捨離中に光魔法が使えることが発覚! 魔力があることを国にバレないようにしながら、魔術師の最高峰である特級魔術師を目指します!

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

竜の国のカイラ~前世は、精霊王の愛し子だったんですが、異世界に転生して聖女の騎士になりました~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
辺境で暮らす孤児のカイラは、人には見えないものが見えるために悪魔つき(カイラ)と呼ばれている。 同じ日に拾われた孤児の美少女ルイーズといつも比較されていた。 16歳のとき、神見の儀で炎の神の守護を持つと言われたルイーズに比べて、なんの神の守護も持たないカイラは、ますます肩身が狭くなる。 そんなある日、魔物の住む森に使いに出されたカイラは、魔物の群れに教われている人々に遭遇する。 カイラは、命がけで人々を助けるが重傷を負う。 死に瀕してカイラは、自分が前世で異世界の精霊王の姫であったことを思い出す。 エブリスタにも掲載しています。

【完結】それはダメなやつと笑われましたが、どうやら最高級だったみたいです。

まりぃべる
ファンタジー
「あなたの石、屑石じゃないの!?魔力、入ってらっしゃるの?」 ええよく言われますわ…。 でもこんな見た目でも、よく働いてくれるのですわよ。 この国では、13歳になると学校へ入学する。 そして1年生は聖なる山へ登り、石場で自分にだけ煌めいたように見える石を一つ選ぶ。その石に魔力を使ってもらって生活に役立てるのだ。 ☆この国での世界観です。

処理中です...