伯爵令息は後味の悪いハッピーエンドを回避したい

えながゆうき

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新・生徒会

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 今季初の生徒会主催のイベントが無事爆散し、ざまぁと思っていたのもつかの間、俺たちに厄介事が降りかかった。

「そういうわけなんだ。俺が新しい生徒会長、フェルナンドが副会長だ」

 あれから生徒会は急速に求心力を失った。生徒会役員は白い目で見られるようになり、多くの人がやめていった。
 そんな中、生徒会長が殿下の前に現れたらしい。そして土下座で謝罪され、自分は生徒会長をやめるから、その後を殿下に引き継いで欲しいと懇願してきたそうである。

 断れば良かったのに、と思ったのだが、場所が王城であったこと、隣に王妃様とマリーナ様がいたことで、無下に扱うことができなかったそうである。二人にも説得されてしぶしぶ引き受けることになったらしい。

「分かりました。引き受けましょう」
「おお! フェルナンドならそう言ってくれると思っていたぞ。ありがとう、我が心の友よ!」

 殿下が俺に抱きついてきた。あんまりうれしくないが、はねのけるわけにもいかず。なされるがままにさせていた。
 殿下を生徒会長にして放っておけば、何をしでかすか分からない。間違いなく、監視、もしくは裏から操る人物が必要だ。それが俺なのだろう。

 まずは生徒会役員を一新することから始めた。全員解散である。そのあとで改めて有能な人材を引き込むのだ。あらかじめ目を付けていた人物たちに来てもらった。外見ではなく、中身重視である。

 もちろん、ヒロインであるビラリーニョ嬢はクビである。彼女がいれば生徒会はまとまらない。そう殿下に訴えた。殿下も思うところがあるようで、異論はなかった。

 それから妙な疑いをかけられないようにするため、殿下の婚約者のマリーナ様と、俺の婚約者のリアにも生徒会役員になってもらった。主に俺たちの監視役である。成績も優秀だし、十分な戦力になるだろう。

「これであらかたの戦力は整ったようだな。みんな、よろしく頼むぞ」

 殿下が満足そうに生徒会室に集まった生徒会役員を見て言った。立て直しは容易ではないだろう。まずは運営資金の確認からだな。何か事を起こすにしても、必要になるのは残念ながらお金である。

 俺たちが生徒会に復帰したことで、王家からの援助が再開された。もちろん俺たちの家からも援助金が出ることになっている。新生生徒会に期待が高まっているのか、他にも援助を申し出る家も増えて来ている。これはお金には困らなそうだな。

 次は今回の「スケッチ大会」の終わらせ方についてだ。旧生徒会がどんな終わらせ方をしていたのか聞いたところ、「何もしない」とのことだった。
 それはまずいだろう。本当に絵を描いただけで終わらせるつもりだったのか。そこまで機能不全に陥っていたとは思わなかった。

 しょうがないので、描いた絵は、名前を伏せて審美眼を持つ人たちを呼び寄せて評価してもらった。そして評価が高かったものに対しては、名前を公表して食堂に張り出した。
 これは好評だったみたいであり、描いた生徒はずいぶんと囲まれているようだった。中には売ってくれ、と直談判する強者も現れたらしい。

 そこで生徒会は売買を許可することにした。お互いに納得のいく値段で取り引きするように、トラブルがあった場合は生徒会が間に入るという条件を付け加えている。そして現在、ちょっとした絵画ブームとなっている。

 このブームに乗り遅れないように、俺たちの描いた絵も売り出した。もちろん王立学園内ではなく、既存のオークションである。殿下たちの名前は有効に使わせてもらった。そのかいあって、俺の絵も含めた四点セットで、高値で取り引きされた。

 王族の絵がオークションに出回るのは今回が初めてである。話題性もあったようで、ずいぶんと白熱したものになったそうだ。
 そしてそこから得たお金は当初の予定通り、全額、国内の孤児院に寄付した。もちろん「王立学園四天王」の名前である。事前にどこにいくら寄付するかを決めていたこともあって、スムーズに寄付金は送られた。

 俺たちの試みは大いに国内で話題になった。まねして偽名で寄付する貴族が現れたくらいである。今では貴族が孤児院に寄付するのが当たり前のような風潮になってきている。
 これはこれで良かったかな。タンスの中で肥やしになっているお金が少しでも出回れば、経済も少しは動くだろう。

 王立学園内でも「王立学園四天王ってだれだ?」とウワサになっていた。バレバレな名前なのでみんな分かっていて言っているんだと思う。俺たちを尊敬のまなざしで見る目がちょっと痛かった。

 だって、絵画そのものの善し悪しではなくて、知名度で売ったようなものだからね。まあ、コレクターにとっては価値のあるものだと思っておこう。
 なお、しばらくの間、俺に画家の先生がつけられた。ほっとけ!


「フェルナンド、次は何をする?」

 ウキウキ、とした表情で殿下が尋ねてきた。どうして俺に頼るんだ。少しは自分で考えたらどうなんだ?
 だが、期待の目で見ているのは殿下だけではなかった。リアもマリーナ様も他の生徒会役員も同じような目で見ている。いつから俺がボスになったと錯覚している?

「そうですね、何とか挽回したものの、あのスケッチ大会だけでは物足りなかったように思います」

 見回すと、全員がうなずいている。どうやらみんなそう思っているようである。このまま夏休みに突入すると、領地や実家に戻ったときに楽しい話はできないだろう。それじゃあどうするか。

「そこで、チェスとダーツの大会を開いてはどうでしょうか? これなら王立学園内でできますし、場所もそれほど必要ではありません。クラスごとに予選をして、上位何名かで観客を入れた決勝トーナメントを行う。どうでしょうか?」
「なるほど、それならどちらも苦手な人でも最後まで楽しむことができそうだな。そうだ、お金でも賭けるか?」
「いや、お金を賭けるはちょっと……」

 そんなことをしたら、八百長が続出するのが目に見えている。ここはスポーツマンシップに則ってプレイしてもらいたい。

「フェルナンド様の言う通りですわ。お金が動くとなれば、それを利用して悪巧みをする人たちがきっと現れますわ。それに対処しようと思ったら、相当の労力が必要ですわ。お金を賭けるのは却下です、殿下」

 マリーナ様がビシッと言ってくれた。さすがは殿下の婚約者。そこがしびれる、憧れる! マリーナ様の一喝で殿下は大人しくなった。よしよし、これで他の生徒会役員も「お金を賭けるのはダメ」として動いてくれるだろう。

 王立学園でチェスやダーツが広がれば、それらの遊具がますます売れるはず。ジョナサンたちの鍛冶工房の売り上げも上がるはずだ。そしてその売上金の一部は俺の懐にも入ってくる。ウッシッシ。

「フェル様、うれしそうですわね」
「そ、そりゃあもちろん。チェスやダーツはそれなりに人気が出てきていますが、まだ大きな流れにはなっていません。武道大会のように大会になれば、もっと盛り上がると思ったのですよ。そうなれば、国民の楽しみも増えるでしょう?」
「なるほど、そこまでお考えでしたか。さすがはフェル様ですわ!」

 声を弾ませてリアがそう言った。ズキッと胸が痛んだ。いや、胸が痛む必要はないだろ。半分は正解だし! お金のことだけ考えてないし!
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