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イザベラ、目覚める

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 パチリ。
 目が覚めた。そこには知らない天井――があると思いきや、メチャクチャ豪華絢爛な天蓋があった。まるで夜空を模したかのような濃紺の布地に、星のようにキラキラと……多分、宝石や金の刺しゅうと思われるものが上品に縫い付けてある。高そう。

 そう言えばイザベラは公爵令嬢だったわね。しかも、超がつくほどわがままなご令嬢。
 そしてそのわがままで、公爵家の財政を破綻させるのが私の最初の仕事。
 
 腕の見せどころなのだけど、生前は両親に少しでも負担をかけないようにと質素倹約に努めていた。そんな私がお金持ちの生活に慣れることができるかしら?
 
 ああ、ダメよダメダメ。弱気になってはダメよ。ほら、熱い男が言っていたじゃない。できる、できる、絶対できる。気持ちの問題だって! って。私にもできるわ。きっと。

 頭の中のちょっとした混乱が落ち着いてきたところでまずは現状の確認。
 どうやら目は見える見たいね。頭は……多少動くわ。体は何とか動くけど、まるで油が切れたブリキ人形のようね。何だが動きがぎこちないわ。ギギギ……とか音がしそう。ブリキの人形とか持ってなかったけど。雰囲気よ、雰囲気。
 
 身につけているおべべは……どうやら高級品みたいね。触り心地が尋常じゃないわ。汚してしまったらどうしようかしら。着ているのが怖いわ。いっそ脱いでしまおうかしら?
 いやでも、誰か来たときに全裸だったら、それはそれでまずいのでは?
 全裸令嬢とか、多分アウトだわ。

 でも、どうやら無事に転生したようね。さっきお母様に会って、出会い頭に猫だまし的に回復魔法を使ったから実感がなかったけど、ようやく実感が湧いてきたわ。
 ……そう言えば、魔法はうまくいったのかしら? まさかお母様、死んでないわよね?

 そう思うと何だか背筋が寒くなってきた。それに下半身も冷たく――。ちょっと待って、お漏らし令嬢とか、シャレにならないからね?
 色々と確認したいが、うまく身動きがとれない。ええい、動け! なぜ動かんのだ! 

 私は必死に全身をモゾモゾと動かした。
 そんな私の様子に誰かが気がついたようである。人の気配が近づいてきた。

 私をのぞきこんだのは――お母様だ! 良かった、生きてた。それにさっきとはまるで別人のように元気そうだ。さすがパーフェクト・ヒール。効果がダンチだわ!
 お母様の元気な様子に安心して、私は笑った。

「あら、起きたのね。私の可愛いイザベラちゃん」

 お母様はそう言うと私を優しく抱きかかえた。あ、お母様、おむつが湿ってますので気をつけてね。悪気はなかったのよ。体の一部が勝手に動いただけなのよ。

「あらあら、お母様に会えてそんなにうれしいのかしら? でもね、イザベラ。魔法を無闇に使ってはいけませんよ。あなたに万が一のことがあったら……そのときは、お母様も一緒ですからね」

 お母様はニッコリとほほえんだ。どうやら早くも私が魔法を使ったことがバレてしまったらしい。なぜバレたし。
 しかしお母様のその宣言は、ちょっと重過ぎるような気がするのだが……。もしかしてだけど、もしかしてだけど、お母様にはヤンデレ成分が混じっているじゃないの~?

 そう言えばゲームの中のイザベラもヤンデレ成分を持っていたわね。アレはお母様からの遺伝だったのね。ガッテンがいったわ。合点、合点!

 いや、そんなことよりも。私はアレをやってない。これをやらないと私の新しい人生の幕開けを告げられないわ。

「お、オギャア、オギャア!」

 ヤバそうな話題をそらすのにはこの手に限る! 必殺、うそ泣きだ。

「あらあら、おなかがすいたのね。それにおむつも替えないといけないみたいね」
 
 お母様は私のまろい顔を優しくなでた。そしてすぐそばに付き添っていた使用人に私のおむつを替えさせた。
 サササッと素早くおむつを替えるその手際は、まさに忍者。早すぎて私の目じゃなくてもきっと見逃してたわね。アイェェエ!? って叫ばなくて良かったわ。
 
「さあ、おなかがすいたでしょう? しっかりと飲んで、大きくなりなさい」
 
 そう言うとお母様は胸元を崩した。そこには美しく整った豊満な胸があった。ママのおっぱいを見てどう思うかって? すごく……大きいです……。

 お母様の血を引いている私も、もちろん将来はこうなる。ビックリするぐらいのグラマラスな女性になる。何せ、私の立ち絵だけはすごかったからね。
 悪役令嬢でなければ抱ける、と露骨に世の男どもが言っていたわ。いやらしい。

 目の前いっぱいに広がるおっぱいの光景にどうしようかと思ったが、赤ちゃんの本能には逆らえなかった。
 私は無我夢中でママのおっぱいにかぶりついた。しかしこれ、吸いにくいな。立ってないからかしら? でも私が刺激するとお母様が「やんっ、ちょっと、そこは……っ!」ってあえぐのよね。複雑だわ。
 それでも何とか母乳を飲んだ私は偉いと思う。
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