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ついに始まる学園生活
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あれから月日はたち、私は十六歳になった。いよいよゲームの舞台である王立学園へと入学するときがきたのである。
王立学園で過ごす期間は二年間。その中でゲームとしてプレイできるのは、王立学園の最終学年である二年目である。
長かったような、短かったような。いよいよ私の人生が終わるのかと思うと、普通ならば今頃恐怖している頃だろう。しかし、私は違う。
これまでの十六年間で大事な人たちがたくさんできた。何だかんだ言っても家族のみんなのことは好きだし、フィル王子もユリウスもローレンツも大好きだ。そんなみんながこれから先も生きていけるのならば、この命、それほど惜しくはないと思っている。
でもちょっと不安要素もあるのよね。
私が処刑台に送られたら、みんなが黙っているのかしら? ローレンツにいたっては、絶対にギロチン台を破壊して私を助けにくるはずだわ。ユリウスにしても、そのまま国外に私を連れて行きそうな感じだし。
ゲームのエンディングの一つに、ヒロインとユリウスが駆け落ちするエンドがあるのよね。どうも最近、その国のことをユリウスが調査している感じがあるのよ。
普通に考えれば、ゲーム補正でそのような行動と取るようになっているのだろうと思うのだけれども、なぜか私に相談してくるのよね。
この国に行ったとしたら、どこの観光名所に行きたいですか? ってね。
まあ、観光名所を聞いてくるくらいならまだ分かるのよ。卒業旅行にみんなで行きたいわねってことだろうから。
でも、「一緒に住むなら、この国のどこに住みたいですか?」って質問は違う気がするのよね。それ、私と一緒に住む気、満々じゃない。騎士団長になる夢はどこに行ったのか小一時間問い詰めたい衝動に駆られたわ。しなかったけど。
フィル王子はフィル王子で何やら裏でコソコソとやっている節があるのよね。お母様も、私に王妃教育を施そうと画策しているみたいだし。
でも私、勉強する気、ないから。だって、あと二年で終わりなのよ? 勉強して何になるというのか。
そんな時間があるのなら、残りの二年間をいかに満喫して過ごすかを考えた方がずっとマシである。
それに加えて、勉強する必要は全くないのだ。
王立学園の一年目は、単純に身分によってクラス分けがされる。当然私は最高クラスのAクラスである。フィル王子もしかり。
そしてそれぞれの護衛に付いているユリウスとローレンツもAクラス入りは間違いないだろう。ちなみに五歳年上の兄、ルークは非常勤講師として学園で教鞭を執っている。その点だけは、シナリオ通りである。
お父様が悪の道に走らなかったことと、ランドール公爵家が財政破綻するどころか、メキメキと力を付けていること、などの想定外のできごとが起こっているが、ゲームのシナリオとはあまり関係ないから大丈夫だろう。多分。
王立学園の二年目は実力主義でクラス分けされる。
そこで最高クラスのAクラスに、平民出のヒロインとレオナールが名だたる貴族を押しのけて入って来ることで、様々なドラマが生まれるのだ。
もちろんそのAクラスには悪役令嬢イザベラもいる。
イザベラは全く勉強できないアホの子だったが、悪の道に走ったランドール公爵による裏工作によって、Aクラスに入ることができるのだ。
そこでアホの子の役である私も、アホの子を演じる必要があるのだ。素晴らしい。
いやー、残念だなー、本当はバリバリ勉強して、お母様に「勉強しすぎだからもう止めて」って言われたかったのになー。本当に残念だ。
勉強しなくていいだなんて、素晴らしい!
そんな素晴らしいことだらけの学園に入学する日がやって来た。真新しい制服に身を包むと、魔法の杖を腰に差した。
今さらではあるが、この世界で魔法を使うには、何かしらの媒体が必要とするのが普通である。
唯一の例外が身体強化魔法である。これは自分の中で完結する魔法であるために、魔法の杖などの媒体は要らない。
ハァアアー! とか適当に言っておけば勝手に強化されるのだ。
そのため、魔法を使うための媒体として、一般的には杖やら剣やらが必要なのだ。
そう、一般的には、である。例外中の例外である私は魔法の媒体なしで魔法を使える。最初に使った完全回復魔法がそうだしね。
そのため私は魔法の杖なしで魔法を使っていたのだが、それに気がついたお母様とフランツによって即座にお母様の部屋へと連れて行かれた。
そしてそこで「魔法の杖なしでは魔法を使ってはならない」と、こんこんと言われたのであった。
そうして渡された、フランツ特製の魔法の杖。何とこの杖、初級魔法しか使えないように細工されているのだ。何これ、呪いの杖なの? と言うか、フランツ、あなた杖も作れるの?
もちろん私は抗議した。
「お母様、これでは学園での魔法の授業に支障をきたしますわ。私も、「キャー、イザベラ様ー!」って黄色い声援を受けたいですわ!」
「イザベラ、あなたね……」
頭を抱えながらお母様が一枚の紙を取り出した。ん? 何これ、魔法の授業免除証明書? まさか……。
「お母様、これってもしや……」
「イザベラ、あなたは学園で魔法の授業を受ける必要はないのよ。全属性持ちに無限の魔力。一回で魔法を覚える才能。あなたは知らないかも知れないけど、すでに一部では大賢者と呼ばれているわ」
「そんなバカな」
初めて聞く話である。寝耳に水も良いところだ。大賢者なんて存在、ゲームにはなかったぞ。
「それでもイザベラがみんなと授業を受けたいだろうと思って、その杖を作ってもらったのよ。どうする?」
「ありがたく頂戴いたします」
「素直でよろしい」
やはりお母様には勝てなかったよ。そしてフランツにも。一体何者なんだ、フランツ。どうも普通の人ではないような気がするのよね。
王立学園で過ごす期間は二年間。その中でゲームとしてプレイできるのは、王立学園の最終学年である二年目である。
長かったような、短かったような。いよいよ私の人生が終わるのかと思うと、普通ならば今頃恐怖している頃だろう。しかし、私は違う。
これまでの十六年間で大事な人たちがたくさんできた。何だかんだ言っても家族のみんなのことは好きだし、フィル王子もユリウスもローレンツも大好きだ。そんなみんながこれから先も生きていけるのならば、この命、それほど惜しくはないと思っている。
でもちょっと不安要素もあるのよね。
私が処刑台に送られたら、みんなが黙っているのかしら? ローレンツにいたっては、絶対にギロチン台を破壊して私を助けにくるはずだわ。ユリウスにしても、そのまま国外に私を連れて行きそうな感じだし。
ゲームのエンディングの一つに、ヒロインとユリウスが駆け落ちするエンドがあるのよね。どうも最近、その国のことをユリウスが調査している感じがあるのよ。
普通に考えれば、ゲーム補正でそのような行動と取るようになっているのだろうと思うのだけれども、なぜか私に相談してくるのよね。
この国に行ったとしたら、どこの観光名所に行きたいですか? ってね。
まあ、観光名所を聞いてくるくらいならまだ分かるのよ。卒業旅行にみんなで行きたいわねってことだろうから。
でも、「一緒に住むなら、この国のどこに住みたいですか?」って質問は違う気がするのよね。それ、私と一緒に住む気、満々じゃない。騎士団長になる夢はどこに行ったのか小一時間問い詰めたい衝動に駆られたわ。しなかったけど。
フィル王子はフィル王子で何やら裏でコソコソとやっている節があるのよね。お母様も、私に王妃教育を施そうと画策しているみたいだし。
でも私、勉強する気、ないから。だって、あと二年で終わりなのよ? 勉強して何になるというのか。
そんな時間があるのなら、残りの二年間をいかに満喫して過ごすかを考えた方がずっとマシである。
それに加えて、勉強する必要は全くないのだ。
王立学園の一年目は、単純に身分によってクラス分けがされる。当然私は最高クラスのAクラスである。フィル王子もしかり。
そしてそれぞれの護衛に付いているユリウスとローレンツもAクラス入りは間違いないだろう。ちなみに五歳年上の兄、ルークは非常勤講師として学園で教鞭を執っている。その点だけは、シナリオ通りである。
お父様が悪の道に走らなかったことと、ランドール公爵家が財政破綻するどころか、メキメキと力を付けていること、などの想定外のできごとが起こっているが、ゲームのシナリオとはあまり関係ないから大丈夫だろう。多分。
王立学園の二年目は実力主義でクラス分けされる。
そこで最高クラスのAクラスに、平民出のヒロインとレオナールが名だたる貴族を押しのけて入って来ることで、様々なドラマが生まれるのだ。
もちろんそのAクラスには悪役令嬢イザベラもいる。
イザベラは全く勉強できないアホの子だったが、悪の道に走ったランドール公爵による裏工作によって、Aクラスに入ることができるのだ。
そこでアホの子の役である私も、アホの子を演じる必要があるのだ。素晴らしい。
いやー、残念だなー、本当はバリバリ勉強して、お母様に「勉強しすぎだからもう止めて」って言われたかったのになー。本当に残念だ。
勉強しなくていいだなんて、素晴らしい!
そんな素晴らしいことだらけの学園に入学する日がやって来た。真新しい制服に身を包むと、魔法の杖を腰に差した。
今さらではあるが、この世界で魔法を使うには、何かしらの媒体が必要とするのが普通である。
唯一の例外が身体強化魔法である。これは自分の中で完結する魔法であるために、魔法の杖などの媒体は要らない。
ハァアアー! とか適当に言っておけば勝手に強化されるのだ。
そのため、魔法を使うための媒体として、一般的には杖やら剣やらが必要なのだ。
そう、一般的には、である。例外中の例外である私は魔法の媒体なしで魔法を使える。最初に使った完全回復魔法がそうだしね。
そのため私は魔法の杖なしで魔法を使っていたのだが、それに気がついたお母様とフランツによって即座にお母様の部屋へと連れて行かれた。
そしてそこで「魔法の杖なしでは魔法を使ってはならない」と、こんこんと言われたのであった。
そうして渡された、フランツ特製の魔法の杖。何とこの杖、初級魔法しか使えないように細工されているのだ。何これ、呪いの杖なの? と言うか、フランツ、あなた杖も作れるの?
もちろん私は抗議した。
「お母様、これでは学園での魔法の授業に支障をきたしますわ。私も、「キャー、イザベラ様ー!」って黄色い声援を受けたいですわ!」
「イザベラ、あなたね……」
頭を抱えながらお母様が一枚の紙を取り出した。ん? 何これ、魔法の授業免除証明書? まさか……。
「お母様、これってもしや……」
「イザベラ、あなたは学園で魔法の授業を受ける必要はないのよ。全属性持ちに無限の魔力。一回で魔法を覚える才能。あなたは知らないかも知れないけど、すでに一部では大賢者と呼ばれているわ」
「そんなバカな」
初めて聞く話である。寝耳に水も良いところだ。大賢者なんて存在、ゲームにはなかったぞ。
「それでもイザベラがみんなと授業を受けたいだろうと思って、その杖を作ってもらったのよ。どうする?」
「ありがたく頂戴いたします」
「素直でよろしい」
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