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想定外
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「でー、あるからしてー……」
はいどうも、イザベラです。私は今、絶賛校長先生のありがたいお言葉を聞いている最中です。校長先生の長話なんて、漫画やアニメ、ゲームの世界だけの話だと思っていたけど、本当にあるのね。
あ、そういえば、この世界はゲームの中だったわね。
イスに座ってはいるものの、最高クラスの身分である私は校長先生の真正面の一番前。さすがに居眠りすることはできなかった。眠りたいのに眠れないことがこんなにつらいことだったなんて、初めて知ったわ。
ようやく長きにわたるありがたいお話が終わると、在校生代表と、新入生代表が互いに挨拶をする。
新入生代表はもちろん、この国の王子であるフィリップ王子である。
その堂々としたたたずまい。すでにゲームスタート時の王子とは別人である。本来は豆腐メンタルスタートである王子は、そのメンタルの弱さから、新入生代表の挨拶を別の人に替わってもらっていたはずであった。
それが何ということでしょう。そこには堂々と挨拶をする王子の姿が。そして終わり際にこちらに向かって笑顔を向けることも忘れない。私の後ろ側で、誰かが倒れる音がした。
どうやら王子スマイルの餌食になったご令嬢が何人かいたようである。本当に罪深い王子に育ったものだ。
そしてその罪深い王子を作った犯人が、どうやら私のようなのだ。
お母様に「フィリップ王子はイザベラの隣に立つのにふさわしい男になろうとしているみたいよ」と言う話を、耳にたこができるくらいに聞いている。
だが残念なことに、私は王妃にはなれない。もうすぐゲームセットだしね。まことに残念である。今から王妃教育とか御免被りたい。フィル王子の隣に立つのにふさわしい人物はもっとたくさんいるはずである。
こうしてようやく終わった入学式。新入生はその場でどのクラスになるのかを言い渡されて、それぞれの教室へと散って行った。
もちろん私はAクラス。高位貴族のみが集められた特別クラスである。と言えば聞こえがいいが、腫れ物をまとめて集めたクラスと言っても間違いではなかった。
取りあえず一年生の間に、しっかりと「この学園では身分差は認められず、平等であること」をたたき込むつもりなのだろう。高位貴族の子供ほど傲慢ちきだからね。
「新入生の諸君、入学おめでとう。私がこの一年Aクラスの担任、ルーク・ランドールだ。ビシビシ鍛えるつもりなので、その心積もりでいるように」
キャー、という黄色い声がご令嬢たちから上がった。かたや私は思わず頭を抱えそうになった。
確か、ゲームの中での一年生の担任はどこかのおじいちゃんだったはずである。なぜ、兄のルークが担任をしているのか。それが分からない。
家でもそんな話してなかったぞ。サプライズかな? でも全然うれしくなーい! なぜかしら? チラリと隣に座っているフィル王子を見ると、笑顔に見えない笑顔を浮かべていた。実に器用である。
ルークの監視の目から逃れられると思った矢先のこれである。出鼻をくじかれたな、フィル王子。
今日は顔合わせだけで終わるらしく、それぞれの自己紹介が終わると解散することになった。さすがは最高身分のクラスだけあって、何たら伯爵やら、どうたら侯爵などがたくさんいた。幸いなことに公爵は私だけだったので、フィル王子以外には気を使わなくても良さそうだ。
でもせっかくだから、友達百人欲しいかな? 夢だったのよね、友達を作るのが。前世はボッチだったからね。
え? フィル王子やユリウス、ローレンツがいるじゃないかって? 私は普通の友達も欲しいのよ。クセの強い友達だけじゃなくて、常識人が欲しいのよ!
こうして私の憧れの学園生活が始まったわけだが、ちょっと想定外のことが起こっていた。
メンタルが強くなったフィル王子、すっかり女学生になったユリウス、すでに脳筋のローレンツは置いておくとして、何やらヒロインのソフィアがAクラスの教室がある別館の近くに出没しているらしいのだ。
実は私たちAクラスが使っている教室は、残りのB~Fクラスとは別の建物の中にあるのだ。そして、基本的にその建物には、他のクラスの子供たちは近寄ってこないし、許可なく立ち入ることはできない。
それもそのはず。その建物を出入りしてる子供たちは、全員が高貴な身分の子供たちなのだ。難癖でもつけられたら、たまったものではない。きっと親からも「あそこは魔窟だ。近づくな」と口を酸っぱくして言われているはずだ。
なのに、である。「平民の女の子が近くをウロウロしている」という話を私は友達から聞いた。そして私はピンときた。もしかしてそれ、ソフィアじゃね?
うわさになっている女の子の髪の色はピンク。ヒロインと同じ髪の色である。どうやら間違いなさそうだった。
これは一体どうしたことか。ソフィアが一年目からアグレッシブに活動していたという話はなかったはずである。むしろ、その目立つ容姿から、どこぞの貴族に目をつけられて、隠れるように学園生活を送っていたはずである。
と言うかソフィアよ、あなたの相棒のレオナールはどこに行った? 確かレオナールはいつもソフィアと一緒にいて、ソフィアのことを守っていたはず。そんなボディーガード役が一緒じゃないなんて、おかしすぎるわ。人のことを言えた立場ではないけれども。
……気になる。非常に気になる。主にレオナールがどのような状態になっているのかがすごく気になる。気になっていても立ってもいられない状況になった私は、ローレンツを引き連れて即座に現場へと急行した。
目指すはレオナールが所属しているFクラスである。
はいどうも、イザベラです。私は今、絶賛校長先生のありがたいお言葉を聞いている最中です。校長先生の長話なんて、漫画やアニメ、ゲームの世界だけの話だと思っていたけど、本当にあるのね。
あ、そういえば、この世界はゲームの中だったわね。
イスに座ってはいるものの、最高クラスの身分である私は校長先生の真正面の一番前。さすがに居眠りすることはできなかった。眠りたいのに眠れないことがこんなにつらいことだったなんて、初めて知ったわ。
ようやく長きにわたるありがたいお話が終わると、在校生代表と、新入生代表が互いに挨拶をする。
新入生代表はもちろん、この国の王子であるフィリップ王子である。
その堂々としたたたずまい。すでにゲームスタート時の王子とは別人である。本来は豆腐メンタルスタートである王子は、そのメンタルの弱さから、新入生代表の挨拶を別の人に替わってもらっていたはずであった。
それが何ということでしょう。そこには堂々と挨拶をする王子の姿が。そして終わり際にこちらに向かって笑顔を向けることも忘れない。私の後ろ側で、誰かが倒れる音がした。
どうやら王子スマイルの餌食になったご令嬢が何人かいたようである。本当に罪深い王子に育ったものだ。
そしてその罪深い王子を作った犯人が、どうやら私のようなのだ。
お母様に「フィリップ王子はイザベラの隣に立つのにふさわしい男になろうとしているみたいよ」と言う話を、耳にたこができるくらいに聞いている。
だが残念なことに、私は王妃にはなれない。もうすぐゲームセットだしね。まことに残念である。今から王妃教育とか御免被りたい。フィル王子の隣に立つのにふさわしい人物はもっとたくさんいるはずである。
こうしてようやく終わった入学式。新入生はその場でどのクラスになるのかを言い渡されて、それぞれの教室へと散って行った。
もちろん私はAクラス。高位貴族のみが集められた特別クラスである。と言えば聞こえがいいが、腫れ物をまとめて集めたクラスと言っても間違いではなかった。
取りあえず一年生の間に、しっかりと「この学園では身分差は認められず、平等であること」をたたき込むつもりなのだろう。高位貴族の子供ほど傲慢ちきだからね。
「新入生の諸君、入学おめでとう。私がこの一年Aクラスの担任、ルーク・ランドールだ。ビシビシ鍛えるつもりなので、その心積もりでいるように」
キャー、という黄色い声がご令嬢たちから上がった。かたや私は思わず頭を抱えそうになった。
確か、ゲームの中での一年生の担任はどこかのおじいちゃんだったはずである。なぜ、兄のルークが担任をしているのか。それが分からない。
家でもそんな話してなかったぞ。サプライズかな? でも全然うれしくなーい! なぜかしら? チラリと隣に座っているフィル王子を見ると、笑顔に見えない笑顔を浮かべていた。実に器用である。
ルークの監視の目から逃れられると思った矢先のこれである。出鼻をくじかれたな、フィル王子。
今日は顔合わせだけで終わるらしく、それぞれの自己紹介が終わると解散することになった。さすがは最高身分のクラスだけあって、何たら伯爵やら、どうたら侯爵などがたくさんいた。幸いなことに公爵は私だけだったので、フィル王子以外には気を使わなくても良さそうだ。
でもせっかくだから、友達百人欲しいかな? 夢だったのよね、友達を作るのが。前世はボッチだったからね。
え? フィル王子やユリウス、ローレンツがいるじゃないかって? 私は普通の友達も欲しいのよ。クセの強い友達だけじゃなくて、常識人が欲しいのよ!
こうして私の憧れの学園生活が始まったわけだが、ちょっと想定外のことが起こっていた。
メンタルが強くなったフィル王子、すっかり女学生になったユリウス、すでに脳筋のローレンツは置いておくとして、何やらヒロインのソフィアがAクラスの教室がある別館の近くに出没しているらしいのだ。
実は私たちAクラスが使っている教室は、残りのB~Fクラスとは別の建物の中にあるのだ。そして、基本的にその建物には、他のクラスの子供たちは近寄ってこないし、許可なく立ち入ることはできない。
それもそのはず。その建物を出入りしてる子供たちは、全員が高貴な身分の子供たちなのだ。難癖でもつけられたら、たまったものではない。きっと親からも「あそこは魔窟だ。近づくな」と口を酸っぱくして言われているはずだ。
なのに、である。「平民の女の子が近くをウロウロしている」という話を私は友達から聞いた。そして私はピンときた。もしかしてそれ、ソフィアじゃね?
うわさになっている女の子の髪の色はピンク。ヒロインと同じ髪の色である。どうやら間違いなさそうだった。
これは一体どうしたことか。ソフィアが一年目からアグレッシブに活動していたという話はなかったはずである。むしろ、その目立つ容姿から、どこぞの貴族に目をつけられて、隠れるように学園生活を送っていたはずである。
と言うかソフィアよ、あなたの相棒のレオナールはどこに行った? 確かレオナールはいつもソフィアと一緒にいて、ソフィアのことを守っていたはず。そんなボディーガード役が一緒じゃないなんて、おかしすぎるわ。人のことを言えた立場ではないけれども。
……気になる。非常に気になる。主にレオナールがどのような状態になっているのかがすごく気になる。気になっていても立ってもいられない状況になった私は、ローレンツを引き連れて即座に現場へと急行した。
目指すはレオナールが所属しているFクラスである。
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