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クリスマスダンスパーティー
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王立学園では、貴族と平民の身分の垣根を少しでもなくすため、指定された制服を着ることになっている。
しかし、王立学園全体で行われるイベントである「クリスマスダンスパーティー」のときだけは違う。この日だけはだれもが自由な服装をして良いことになっていた。
この日ばかりは貴族出身の子供たちも、自分の身分を強く押し出した豪華な服装に身を包む。もちろん私も例外ではない。
これでもランドール公爵は王族に次いで身分が高いのだ。そのため私が着ているドレスはとても豪華なものになっていた。
「すごく動きにくいわ」
「お嬢様、とても良くお似合いですよ」
さすがに一人では着ることができないため、使用人たちが着付けを担当している。使用人たちは満足げに、先ほどまであちこちいじっていた手を止めた。
鏡を見ると、それは見事なご令嬢が鏡に映っている。さすがは社交界の華、お母様の娘だわ。自分で言うのも何だけど、これはほれてしまうやつだろう。
「だ、大丈夫かしら?」
「大丈夫ですわ、お嬢様! お嬢様の姿を見れば、どんな殿方でもイチコロですよ。ああ、学園側の規則で宝石類を身につけてはいけないのが残念で仕方がありませんわ」
うん。大丈夫じゃないことが分かったわ。これ、絶対注目を集めるやつだな。でも今さら行かないわけにも行かないし。
正直に言うと、今年のクリスマスダンスパーティーはものすごく楽しみだったりするのだ。来年のクリスマスダンスパーティーは全然楽しめそうにないからね。何せ、破滅宣言をされるのが来年のこの日だから。
そう思うと、何だかあんまりうれしくなくなってきたわ。でも、今年は違う。最後くらい楽しまなきゃもったいないわよね。うん、そうしよう。はっちゃけよう。
私を乗せた馬車はガラガラと小気味好い音を立てながら王立学園へと向かってゆく。その私の目の前ではお兄様が食い入るように見つめていた。
「お兄様、そんなにしっかりと見なくても……家で散々見たでしょう?」
あきれてそう言ったが、お兄様にはまったく聞こえていないようである。先ほどから顔がだらしなくゆがんでいる。
こんなルーク先生の姿、生徒たちには見せられないよ!
「お兄様、しっかりして下さいまし! 生徒たちに笑われますわよ」
「そんなこと言われても仕方ないじゃないか。イザベラがかわいすぎるのがいけないんだよ」
プリプリと怒るお兄様。かわいいとな。私ももう十七歳になったのだ。かわいいよりかは、美人、と言われたいお年頃なんだけど。お兄様にとっては、いつまでもかわいい妹なのだろう。ほんと、お兄様は昔から変わらないなー。
「うーん、これはフィリップ王子には見せられないな。どうするか……」
「お兄様、今さら何を……」
あきれてものが言えなくなるとはこのことか。一体何を言い出すことやら。同じ学園の、同じクラスなのだ。今日のクリスマスダンスパーティーで顔を合わせないということはありえないだろう。
諦めるんだな、ルーク。この私のように。
そうこうしているうちに、馬車が王立学園に到着したようである。馬車が小さな音を立てて止まった。すぐにお兄様が油断なく周囲を確認する。
私がだれかに狙われていることが分かってから、お兄様は常に警戒を忘れなかった。
ようやく安全が確認できたようである。馬車のドアが開いた。お兄様はドアから顔を出し左右の安全を確認すると、エスコートするべく手を差し伸べた。
その手をつかみ外に出ると、ざわめきが襲いかかってきた。一体何事!?
驚いて周囲を確認すると、私に注目が集まっていた。顔が見える範囲にいる男の子はもちろんのこと、一部の女の子も顔が赤い。
もしかしてと言うか、やはりと言うか、どうやら初っ端から注目を集めてしまったようである。
やっぱり無理を言ってでも制服で参加すれば良かったかな。クリスマスダンスパーティーには制服での参加も認められているのだ。そうでなきゃ、平民の中には参加できない人が出てくるかも知れないしね。ドレスコードを持っている平民なんて、ほんのわずかしかいないだろう。
あ、ローレンツがこちらにやって来たわ。あれ? ユリウスは一緒じゃないのかしら。
「い、イザベラ……様?」
「あらローレンツ、ご機嫌よう」
ローレンツに対して、久しぶりに淑女の礼をとる。普段はしないのだが、今日は特別な日だし、たまにはいいか。しかしあれだな。ローレンツの目が珍獣を見たような目になっているぞ。何か失礼だぞ。
私が礼をとった瞬間、わあ、っと声が上がった。礼をしただけでこれである。これは動いただけでも声が上がりそうだ。何だろう、この人気アイドルにでもなったかのような感じは。しかも悪くない感じなのはなぜかしら。
「イザベラ様! ああ、美しいですわ」
そのとき、ローレンツのすぐそばからユリウスの声が聞こえた。
「あ、ユリウス。ご機嫌よ……何でユリウスはドレスじゃなくて、騎士団の礼服を着てるの!? 私が送ったドレスはどうし……」
言葉を言い終わらないうちに、ユリウスが頭に腕を当ててグラリと倒れる。
「ちょっとユリウス!」
慌てて身体強化魔法を使ってユリウスを支える。ユリウスのこの反応、さては私の美しさに目がくらんだな? うれしいけど、ちょっぴり複雑だわ。
でも何で私がプレゼントしたドレスじゃなくて、騎士団の礼服を着ているのかしら? 腰にも剣を刺しているし……。
そりゃすぐそこに居たことに気がつかないわけだわ。てっきりドレスを着ていると思っていたもの。それにしても、剣を持っているなんて、何かまずいことでも起きているのかしら?
「ローレンツ、見てないで助け……ローレンツ? ローレーンツ!」
ダメだこいつ。立ったまま意識を飛ばしていやがりますわ。
しかし、王立学園全体で行われるイベントである「クリスマスダンスパーティー」のときだけは違う。この日だけはだれもが自由な服装をして良いことになっていた。
この日ばかりは貴族出身の子供たちも、自分の身分を強く押し出した豪華な服装に身を包む。もちろん私も例外ではない。
これでもランドール公爵は王族に次いで身分が高いのだ。そのため私が着ているドレスはとても豪華なものになっていた。
「すごく動きにくいわ」
「お嬢様、とても良くお似合いですよ」
さすがに一人では着ることができないため、使用人たちが着付けを担当している。使用人たちは満足げに、先ほどまであちこちいじっていた手を止めた。
鏡を見ると、それは見事なご令嬢が鏡に映っている。さすがは社交界の華、お母様の娘だわ。自分で言うのも何だけど、これはほれてしまうやつだろう。
「だ、大丈夫かしら?」
「大丈夫ですわ、お嬢様! お嬢様の姿を見れば、どんな殿方でもイチコロですよ。ああ、学園側の規則で宝石類を身につけてはいけないのが残念で仕方がありませんわ」
うん。大丈夫じゃないことが分かったわ。これ、絶対注目を集めるやつだな。でも今さら行かないわけにも行かないし。
正直に言うと、今年のクリスマスダンスパーティーはものすごく楽しみだったりするのだ。来年のクリスマスダンスパーティーは全然楽しめそうにないからね。何せ、破滅宣言をされるのが来年のこの日だから。
そう思うと、何だかあんまりうれしくなくなってきたわ。でも、今年は違う。最後くらい楽しまなきゃもったいないわよね。うん、そうしよう。はっちゃけよう。
私を乗せた馬車はガラガラと小気味好い音を立てながら王立学園へと向かってゆく。その私の目の前ではお兄様が食い入るように見つめていた。
「お兄様、そんなにしっかりと見なくても……家で散々見たでしょう?」
あきれてそう言ったが、お兄様にはまったく聞こえていないようである。先ほどから顔がだらしなくゆがんでいる。
こんなルーク先生の姿、生徒たちには見せられないよ!
「お兄様、しっかりして下さいまし! 生徒たちに笑われますわよ」
「そんなこと言われても仕方ないじゃないか。イザベラがかわいすぎるのがいけないんだよ」
プリプリと怒るお兄様。かわいいとな。私ももう十七歳になったのだ。かわいいよりかは、美人、と言われたいお年頃なんだけど。お兄様にとっては、いつまでもかわいい妹なのだろう。ほんと、お兄様は昔から変わらないなー。
「うーん、これはフィリップ王子には見せられないな。どうするか……」
「お兄様、今さら何を……」
あきれてものが言えなくなるとはこのことか。一体何を言い出すことやら。同じ学園の、同じクラスなのだ。今日のクリスマスダンスパーティーで顔を合わせないということはありえないだろう。
諦めるんだな、ルーク。この私のように。
そうこうしているうちに、馬車が王立学園に到着したようである。馬車が小さな音を立てて止まった。すぐにお兄様が油断なく周囲を確認する。
私がだれかに狙われていることが分かってから、お兄様は常に警戒を忘れなかった。
ようやく安全が確認できたようである。馬車のドアが開いた。お兄様はドアから顔を出し左右の安全を確認すると、エスコートするべく手を差し伸べた。
その手をつかみ外に出ると、ざわめきが襲いかかってきた。一体何事!?
驚いて周囲を確認すると、私に注目が集まっていた。顔が見える範囲にいる男の子はもちろんのこと、一部の女の子も顔が赤い。
もしかしてと言うか、やはりと言うか、どうやら初っ端から注目を集めてしまったようである。
やっぱり無理を言ってでも制服で参加すれば良かったかな。クリスマスダンスパーティーには制服での参加も認められているのだ。そうでなきゃ、平民の中には参加できない人が出てくるかも知れないしね。ドレスコードを持っている平民なんて、ほんのわずかしかいないだろう。
あ、ローレンツがこちらにやって来たわ。あれ? ユリウスは一緒じゃないのかしら。
「い、イザベラ……様?」
「あらローレンツ、ご機嫌よう」
ローレンツに対して、久しぶりに淑女の礼をとる。普段はしないのだが、今日は特別な日だし、たまにはいいか。しかしあれだな。ローレンツの目が珍獣を見たような目になっているぞ。何か失礼だぞ。
私が礼をとった瞬間、わあ、っと声が上がった。礼をしただけでこれである。これは動いただけでも声が上がりそうだ。何だろう、この人気アイドルにでもなったかのような感じは。しかも悪くない感じなのはなぜかしら。
「イザベラ様! ああ、美しいですわ」
そのとき、ローレンツのすぐそばからユリウスの声が聞こえた。
「あ、ユリウス。ご機嫌よ……何でユリウスはドレスじゃなくて、騎士団の礼服を着てるの!? 私が送ったドレスはどうし……」
言葉を言い終わらないうちに、ユリウスが頭に腕を当ててグラリと倒れる。
「ちょっとユリウス!」
慌てて身体強化魔法を使ってユリウスを支える。ユリウスのこの反応、さては私の美しさに目がくらんだな? うれしいけど、ちょっぴり複雑だわ。
でも何で私がプレゼントしたドレスじゃなくて、騎士団の礼服を着ているのかしら? 腰にも剣を刺しているし……。
そりゃすぐそこに居たことに気がつかないわけだわ。てっきりドレスを着ていると思っていたもの。それにしても、剣を持っているなんて、何かまずいことでも起きているのかしら?
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