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フィナーレ
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「と言うわけなんですよ。あなたにはとんだ迷惑をかけてしまいましたね」
話によると、どうやら大地の精霊とフランツと天照大神様はつながっていたらしい。本来の予定では、大地の精霊を私にくっつけて、そこから直接助言をするつもりだったのだが、私がそれを断ったことで大誤算! となったらしい。
正直スマンかった。まさかそんな取り決めになっているとはつゆ知らず。天照大神様は特に大地の精霊を操っていたというわけではなく、魔力の塊である精霊と対話がやりやすかったのでお願いしただけだそうである。
「でも、今の話だと、天照大神様もこの世界には干渉してはならないのではないですか?」
「普通ならそうなんですが、事が事ですからね。この世界に連れ去られた私の愛し子はあなただけではないのですよ」
なるほど。だからここまで再現性の高いゲームの世界を作り上げていたのか。絵本も地球にあったものと同じような話のものが多かったし、改めて考えると、文明も西洋風だものね。
「それで、これから私はどうすればいいのですか?」
今の話だと、私の役目は終わったのだろう。それならば、私はこのまま元の世界に帰ることになるのだろうか? でも、帰るって言っても、私が死んだのは確かなのよね。またおぎゃあって生まれるのかしら。今度は前世の記憶を持たずに……。
「そんなにおびえることはありませんよ。確かにあなたの魂は回収させてもらいます。ですが、今ではありません。あなたがこの世界での天寿をまっとうしたあとに、改めて回収させてもらいますよ」
「良かった。ありがとうございます」
頭を下げた私を優しくなでてくれた。どうにも慈悲深い創造者のようである。
「これから先どのように生きるのかはあなたの自由です。あなたの望むままに、自由に生きなさい。私ともここでお別れです。フランツ君に体を返してあげなければなりませんからね」
そう言うと、片目を閉じた。どうやらここで天照大神様とはお別れのようである。困ったときに助言をもらえたら心強かったのだけれど、そうも言ってはいられないわね。
これ以上、心配をかけるわけにはいかないわ。
「何から何まで、ありがとうございます」
こうして天照大神様は去って行った。ここから先はシナリオのない世界。どんな明日が待っていることやら。ちょっと楽しみね!
ランドール公爵家の食卓に暗い顔が並んでいる。一体何事? わけが分からない私は、隣に座るソフィアに目配せをする。ソフィアも何が起きたか分からないようで、無言で首を左右に振った。
「あの……お母様?」
「イザベラ、これを見なさい」
手渡されたのはテストの通知表。
クリスマスダンスパーティーは中止になったが、その後にはキッチリと来年のクラス分けのテストがあったのだ。私には関係のないテストだと思っていたのだが、何か問題があるのだろうか。
「わあ、ひどい点数!」
「イザベラ」
「ごめんなさい」
おおう、怖いわお母様。きれいな顔が台無しどころか般若のようになっているわ。これはイザベラ忍法、言わ猿を使わざるを得ないわね。
「はぁ。まったく、どうしたらいいのかしら。イザベラ、あなたは来年Fクラスだそうよ」
「え、Fクラス!? それって一番下のクラスじゃない! どうして!?」
お母様はもう一度、大きなため息をついた。
「どうしてって、あなたの成績が悪いからに決まっているでしょう」
「え、でもだって、お父様の口利きでみんなと同じAクラスにしてもらえるんでしょう?」
「そんなことをするわけがないでしょうがー!!」
雷が落ちた。それも本物の雷である。窓から見える空には、ハッキリと真っ黒な暗雲が立ちこめているのが見えた。そして私は思い出した。
そうだ、ゲームのシナリオはお釈迦になったんだった。自分がギロチンにならないことが分かって浮かれ過ぎていたわ!
その日から、お母様がつきっきりで勉強を教えてくれた。ついでにマナー講習もやらされた。何だかいつもやっているマナー講習よりも、まるで王族に求められるかのような上級者向けのマナー講習だったんだけど、気のせいかしら?
そうしてやって来た新学期初日。
私は通知されていたようにFクラスへと向かった。やはり結果は覆らなかったようでる。まあいいか、ソフィアも一緒だし。
八年間のブランクがあるソフィアは私と同じFクラスになった。一人じゃないってすばらしいと思いながらも、そこまで飛び級できるほどの知識をこの短期間で身につけたソフィアに戦慄した。
もしかしなくても、超優秀なんじゃ……。さすがはヒロインね。
「イザベラお姉様、おはようございます」
「師匠、おはようございます!」
「えええ! どうして二人がFクラスにいるの!? 二人ともAクラスのはずよね」
そこにはいないはずのユリウスとローレンツの姿があった。えっと、確か二人は優秀な頭脳を持っていたはず。こんな下っ端のクラスには、逆立ちでもしなければ入れないはずである。
「フッフッフ、イザベラお姉様の実力ならFクラスになるだろうと思ってましたわ。 ですからテストの点数を操作してFクラスに入りましたのよ!」
勝ち誇ったように高らかと宣言するユリウス。ここに逆立ちしたやつがおった。でもちょっと傷ついたぞ。それならローレンツは……そう言えばコイツ、脳筋だった! 勉強ができるはずがないわ!
ごめんなローレンツ、脳筋にしてしまって、と一人で心の中で謝っていると、聞き慣れた声が聞こえてきた。
「ソフィア、イザベラ様!」
振り返るとそこにはレオナールの顔が。どうやらレオナールも手抜きして、ソフィアのいるFクラスになったようである。うーん、これが愛の力か。ソフィアと同じクラスになれるのなら、どのクラスであろうと関係ない。
レオナールを見てうれしそうな顔をするソフィアを見ながら、一人ニヤニヤしていた。
そのとき、周囲がにわかに騒がしくなった。今度は何事?
「おはよう、イザベラ。今日も元気そうだね」
「え? フィル王子!? なぜここに!?」
何でAクラスにいるはずのみんながここに集まって来ているのか。まさか王子……。
「イザベラ、フィルと呼んでくれといつも言っているだろう? なぜって、そりゃあテストの点数が悪かったからに決まっているだろう?」
そんなわけない。そんなわけがあるものか。あるとしたら……さてはFクラスにするように口利きをしたな、王子ー!
何で王子が悪役王子みたいなことをやっているのよ。大丈夫なの、それ? 変なフラグを立ててないわよね?
「そろっているみたいだな。ほら、全員席につけ。私が今日からこのクラスを担当するルーク・ランドールだ。厳しく鍛えるつもりなので、そのつもりでいるように」
お兄様、お前もか!
こうして私の新しい生活が始まった。この先、私たちがどうなるのかは、神様でも分からない。
Fin
話によると、どうやら大地の精霊とフランツと天照大神様はつながっていたらしい。本来の予定では、大地の精霊を私にくっつけて、そこから直接助言をするつもりだったのだが、私がそれを断ったことで大誤算! となったらしい。
正直スマンかった。まさかそんな取り決めになっているとはつゆ知らず。天照大神様は特に大地の精霊を操っていたというわけではなく、魔力の塊である精霊と対話がやりやすかったのでお願いしただけだそうである。
「でも、今の話だと、天照大神様もこの世界には干渉してはならないのではないですか?」
「普通ならそうなんですが、事が事ですからね。この世界に連れ去られた私の愛し子はあなただけではないのですよ」
なるほど。だからここまで再現性の高いゲームの世界を作り上げていたのか。絵本も地球にあったものと同じような話のものが多かったし、改めて考えると、文明も西洋風だものね。
「それで、これから私はどうすればいいのですか?」
今の話だと、私の役目は終わったのだろう。それならば、私はこのまま元の世界に帰ることになるのだろうか? でも、帰るって言っても、私が死んだのは確かなのよね。またおぎゃあって生まれるのかしら。今度は前世の記憶を持たずに……。
「そんなにおびえることはありませんよ。確かにあなたの魂は回収させてもらいます。ですが、今ではありません。あなたがこの世界での天寿をまっとうしたあとに、改めて回収させてもらいますよ」
「良かった。ありがとうございます」
頭を下げた私を優しくなでてくれた。どうにも慈悲深い創造者のようである。
「これから先どのように生きるのかはあなたの自由です。あなたの望むままに、自由に生きなさい。私ともここでお別れです。フランツ君に体を返してあげなければなりませんからね」
そう言うと、片目を閉じた。どうやらここで天照大神様とはお別れのようである。困ったときに助言をもらえたら心強かったのだけれど、そうも言ってはいられないわね。
これ以上、心配をかけるわけにはいかないわ。
「何から何まで、ありがとうございます」
こうして天照大神様は去って行った。ここから先はシナリオのない世界。どんな明日が待っていることやら。ちょっと楽しみね!
ランドール公爵家の食卓に暗い顔が並んでいる。一体何事? わけが分からない私は、隣に座るソフィアに目配せをする。ソフィアも何が起きたか分からないようで、無言で首を左右に振った。
「あの……お母様?」
「イザベラ、これを見なさい」
手渡されたのはテストの通知表。
クリスマスダンスパーティーは中止になったが、その後にはキッチリと来年のクラス分けのテストがあったのだ。私には関係のないテストだと思っていたのだが、何か問題があるのだろうか。
「わあ、ひどい点数!」
「イザベラ」
「ごめんなさい」
おおう、怖いわお母様。きれいな顔が台無しどころか般若のようになっているわ。これはイザベラ忍法、言わ猿を使わざるを得ないわね。
「はぁ。まったく、どうしたらいいのかしら。イザベラ、あなたは来年Fクラスだそうよ」
「え、Fクラス!? それって一番下のクラスじゃない! どうして!?」
お母様はもう一度、大きなため息をついた。
「どうしてって、あなたの成績が悪いからに決まっているでしょう」
「え、でもだって、お父様の口利きでみんなと同じAクラスにしてもらえるんでしょう?」
「そんなことをするわけがないでしょうがー!!」
雷が落ちた。それも本物の雷である。窓から見える空には、ハッキリと真っ黒な暗雲が立ちこめているのが見えた。そして私は思い出した。
そうだ、ゲームのシナリオはお釈迦になったんだった。自分がギロチンにならないことが分かって浮かれ過ぎていたわ!
その日から、お母様がつきっきりで勉強を教えてくれた。ついでにマナー講習もやらされた。何だかいつもやっているマナー講習よりも、まるで王族に求められるかのような上級者向けのマナー講習だったんだけど、気のせいかしら?
そうしてやって来た新学期初日。
私は通知されていたようにFクラスへと向かった。やはり結果は覆らなかったようでる。まあいいか、ソフィアも一緒だし。
八年間のブランクがあるソフィアは私と同じFクラスになった。一人じゃないってすばらしいと思いながらも、そこまで飛び級できるほどの知識をこの短期間で身につけたソフィアに戦慄した。
もしかしなくても、超優秀なんじゃ……。さすがはヒロインね。
「イザベラお姉様、おはようございます」
「師匠、おはようございます!」
「えええ! どうして二人がFクラスにいるの!? 二人ともAクラスのはずよね」
そこにはいないはずのユリウスとローレンツの姿があった。えっと、確か二人は優秀な頭脳を持っていたはず。こんな下っ端のクラスには、逆立ちでもしなければ入れないはずである。
「フッフッフ、イザベラお姉様の実力ならFクラスになるだろうと思ってましたわ。 ですからテストの点数を操作してFクラスに入りましたのよ!」
勝ち誇ったように高らかと宣言するユリウス。ここに逆立ちしたやつがおった。でもちょっと傷ついたぞ。それならローレンツは……そう言えばコイツ、脳筋だった! 勉強ができるはずがないわ!
ごめんなローレンツ、脳筋にしてしまって、と一人で心の中で謝っていると、聞き慣れた声が聞こえてきた。
「ソフィア、イザベラ様!」
振り返るとそこにはレオナールの顔が。どうやらレオナールも手抜きして、ソフィアのいるFクラスになったようである。うーん、これが愛の力か。ソフィアと同じクラスになれるのなら、どのクラスであろうと関係ない。
レオナールを見てうれしそうな顔をするソフィアを見ながら、一人ニヤニヤしていた。
そのとき、周囲がにわかに騒がしくなった。今度は何事?
「おはよう、イザベラ。今日も元気そうだね」
「え? フィル王子!? なぜここに!?」
何でAクラスにいるはずのみんながここに集まって来ているのか。まさか王子……。
「イザベラ、フィルと呼んでくれといつも言っているだろう? なぜって、そりゃあテストの点数が悪かったからに決まっているだろう?」
そんなわけない。そんなわけがあるものか。あるとしたら……さてはFクラスにするように口利きをしたな、王子ー!
何で王子が悪役王子みたいなことをやっているのよ。大丈夫なの、それ? 変なフラグを立ててないわよね?
「そろっているみたいだな。ほら、全員席につけ。私が今日からこのクラスを担当するルーク・ランドールだ。厳しく鍛えるつもりなので、そのつもりでいるように」
お兄様、お前もか!
こうして私の新しい生活が始まった。この先、私たちがどうなるのかは、神様でも分からない。
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