奴隷の少女がどうやら伯爵令嬢みたいです

えながゆうき

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白猫は見た①

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 奴隷商から出ると、ギルマスは仕事が残っているからと言って逃げるようにこの場を去った。俺もひとまずは家に帰った方がいいな。家で留守番をしているシロにも紹介しなければならないだろう。

 なだらかな丘の上に色とりどりの屋根が見えて来た。屋根の形も実に様々であり、それぞれが「我こそは」と自己主張しているようだった。
 そこはこの街の高級住宅街。そのうちの一軒、瑠璃色の屋根を持つ家へとまっすぐに向かった。プラチナ級冒険者の財力はだてじゃない。小さいが、一軒家を所有しているのだ。

「帰ったぞ」
「ここがご主人様の家……」
「おかえ……だれよ、その女!」

 シロが元々つり上がっている猫目をさらにつり上げてやってきた。ちなみにシロはオスである。お互いにやましい関係ではない。

「ふえっ!? ね、猫が、しゃべった!?」

 突然の出来事に目を白黒とさせると、口に手を当てて一歩退いた。シロは召喚獣である。よって話すことなどお手のものだ。もちろん召喚者は俺。そんな風に軽く説明すると、納得してくれたようである。

「召喚魔法……ご主人様は色んな魔法が使えたんですね」

 うん、まあ、色々と魔法は使える。だが魔法剣で斬った方が周囲に被害を出さなくてすむから、普段はド派手な魔法は使わない。事と次第によっては遠慮なく使うけどね。

「初めまして。ボクの名前はシロだよ。んで、ご主人様、その子はなぁに?」

 シロが首をかしげた。緑色の目が興味深そうに俺たち二人を交互に見ている。

「俺の奴隷だ」
「奴隷!? まさかご主人様にそんな趣味があったなんて……」

 あんぐりと口をあけたシロに挨拶するべく、彼女はマントを脱いだ。フードの下から少し青みがかった、キレイな銀色の髪が現れてふわりと揺れた。スズランのようにほほ笑むと腰を曲げて礼の姿勢をとった。

「シロ様、よろしくお願いいたしますわ」
「ちょっと!? 見えてる、見えてるから!」

 その声に、ハッとした様子で慌てて胸元を隠した。そして赤い顔をして俺の方を振り返った。大丈夫、大丈夫。俺には見えてないからね。シロは見てはならないものを見てしまった、と言った感じで後ろを向いている。思ったよりもシロはウブなようである。

 居間に彼女を座らせると、その正面に座った。まずは最初にやらなければならないことがある。

「君、名前は?」
「……奴隷の名前はご主人様が決めるものです。私に名前はありません」

 それだけを言うと視線をテーブルの上に落とした。

「ふ~ん?」

 こちらには目を合わせない。確かに奴隷の名前は主が好きに決めても良いことにはなっている。しかし本来の名前があるのならば、混乱を避けるためにその名前を使うのが一般的である。

「この子、名無しなんだね」

 先ほどのショッキングな光景を気にしているのか、シロは照れ隠しするかのように顔の毛繕いを始めた。そんなに衝撃的だったのか。……俺も見たかったな。

「そうなのです。ですから私に好きな名前を付けて下さい」

 顔を上げてこちらを向いた。

「そうか。それでは『パメラ』で」
「……え?」
「パメラで」

 俺の方を向いて完全に固まったパメラ。もしかして、俺が気がついてないとでも思っていたのかな? 甘い、甘い! 蜂蜜よりも、角砂糖よりも甘いんだよなぁ。
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