奴隷の少女がどうやら伯爵令嬢みたいです

えながゆうき

文字の大きさ
10 / 50

後悔先に立たず②

しおりを挟む
 早速パメラには買った服に着替えてもらった。もちろん、胸元が大きくあいていない、大人しいタイプの服である。空色をしたワンピースに着替えたパメラは、先ほどの扇情的で大人びた服とは違い、年相応の見た目になっていた。

「パメラ、良く似合っているぞ」
「あ、ありがとうございます」

 語尾は段々と細くなっていき、顔は段々と赤くなっていった。まずはこのすぐに顔が赤くなるのを何とかしないといけないな。さすがにこれだけ顔に出るのは貴族の奥方としてよろしくないだろう。貴族に必要なのものは、何を考えているか分からないポーカーフェイスである。

「それじゃ、食料の買い足しに行こう。何か嫌いなものはあるか?」
「いえ、何でも食べられます。……多分」

 うーん、これは慎重に食料を選んだ方がいいな。おいしいけど、昆虫なんかの見た目があまりよろしくない食べ物はやめておいた方が無難だろう。ビジュアル的にも良くないし。トラウマになっては困る。

「そうか。それじゃ、まずは野菜からだな。その後に、肉と魚を買おう。あとは飲み物も必要だな。お酒は飲める方か?」
「……も、もちろんです!」

 ……怪しい。俺の第六感が、「こいつはウソをついている」と叫んでいる。多分パメラはお酒は飲めない、もしくは、飲むとまずいタイプだな。気をつけておこう。
 もしもお酒に酔うと服を脱ぎだすタイプだったら非常にまずい。俺の理性が抑えきれない可能性がある。

 俺たちは八百屋や肉屋、魚屋、酒屋を一回りして帰路に就いた。そのまま外食をすることも考えたが、まだ日が高いのでまた今度にしよう。パメラが料理もできると言っていたし、その実力も見ておきたい。
 か、勘違いしないでよね。別にパメラの手料理を食べてみたいとか、そんなんじゃないんだからねっ!

「ただいま。シロ、良い子にしていたか?」
「……何それ。今までそんなこと言わなかったよね。どんな風の吹き回しなのかな?」

 シロがジト目でこちらを見た。シロはもう少し空気を読む力を身につけた方がいいな。こちらはこれから夜の時間帯になるから緊張しているというのに。
 シロはいいなぁ。部屋でゴロゴロしてればいいだけだもんなぁ。

「シロ様にもお土産がありますよ」
「わ~い! ちゅるとろだ~」

 パメラに差し出されたちゅるとろをシロは夢中でかじっている。その姿はまるで本物の猫。とても召喚魔法で造り出したとは思えない。さすがだな、俺の才能。
 パメラは瞳を星のように輝かせて、その光景をしゃがんで見ていた。

「あ、パメラ、ボクのことは呼び捨てで良いからね。お嬢様に様付けされるの嫌だからさ」
「私は奴隷ですが……分かりました。シロちゃん。これで良いですか?」
「オッケー!」

 あ、奴隷設定はあくまでも続けるんですね。個人的にはやめても良いんじゃないかな、と思うんですけどね。奴隷契約で伯爵令嬢を縛り付けていることが世の貴族連中に知られたら、とても面倒くさいことになりそうだ。

 さて、どうでもいいけど、パメラのそのしゃがんだ格好、シロ目線だとパンツ丸見えなんじゃないですかねー。知らんけど。俺は煩悩を打ち払うべく、頭を軽く振ってから氷室へと向かった。

 氷室に野菜や肉を保存しておけば、長期保管することができる。魔法で溶けない氷を作って家の地下室に入れているだけなのだが、なかなかどうして便利なものである。
 俺がポイポイと【奈落の落とし穴】から食料を出しているとパメラがやってきた。

「立派な氷室ですね。私の実家にある氷室と遜色ないですわ。それにこの氷、もしかして『溶けない氷』ですか!? さすがにこれは実家にありません。すごいです!」

 パメラが手をたたいて絶賛しているけど、キミ、もう隠す気ないよね? でもこれを言ったら空気が悪くなるよね。ここはグッとこらえておこう。今しばらくは辛抱だ。

 食料の片付けが終われば、次はパメラの部屋の片付けだ。二階には一応、客間がある。もちろんこれまでだれもこの部屋を使ったことはない。だがついに、役に立つときが来たのだ。

「パメラ、この部屋を自由に使ってくれ」
「嫌です」
「なんで!?」

 即答したパメラを見ると、強い眼力でこちらの目を見返してきた。

「奴隷の私に部屋などいりません。エル様のそばに、いつも、お仕えいたします」

 そうきたか。ものは言い様だな。どうしたものか。確かに俺の部屋は広いから、住人が一人増えたくらいでどうと言うことはないのだが……いいのかね~?
 だが、彼女の意志を尊重しよう。それだけの覚悟を持ってここに来ているはずなのだから。

 というのは建前で、本音は泣かれそうなので怖い、である。泣いてしまったらどうやって慰めれば良いのか俺には分からない。こんなことならもっとレディとお付き合いをしておくべきだった。まさに後悔先に立たずだな。母上に相談してみようかな……。

「分かった。それじゃ俺の部屋にパメラが買ってきたものを詰め込むとしよう」
「はい!」

 パメラがうれしそうに笑った。うん、これで良かったということにしておこう。
 客間にあった衣装棚を俺の部屋に持ち込むと、パメラに買ってきた服をしまうように言った。

 パメラがちゃんと衣装棚に服をしまえるだろうかと心配しつつ、黙ってその作業を見守った。チラチラ見えたパメラの下着――それ、本当に下着なんですかね? 何か隠す面積がほとんど無いような気がするんですけど。紐だと言われても俺は納得しちゃうよ?

 しまっているパメラも分かっているのだろう。恥ずかしくなってきたのか段々と赤くなっていた。
 ハァ。声に出して言いたい。だったら買うんじゃありません!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編7が完結しました!(2026.1.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

処理中です...