奴隷の少女がどうやら伯爵令嬢みたいです

えながゆうき

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寝るよ②

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「明日は色々とやってみたいこともあるしパメラも疲れているだろう。今日は早めに寝ることにしよう」
「分かりましたわ。ベッドの用意はしてありますわ」
「ありがとう、パメラ」

 ベッドメイクまでできるようになっているのか。何だか悪い気がするな。なるべく手伝うようにしないと……というか、別にベッドメイクなんてしなくても良いんだけどね。寝ることができれば、そのままでいいじゃん。
 パメラはいそいそと二階へと移動した。それを見届けたシロが俺の肩に飛び乗った。

「ご主人様、さっきベッドメイクしていたパメラがすごい勢いで枕の匂いを嗅いでいたんだけど、あの子、大丈夫だよね?」
「……多分。自分を監視する人がいないから、頭のネジが一本取れてしまったのかも知れないな」
「あとで探しておくよ」

 いや、シロ、例え話だからね。本当にネジが落ちているわけじゃないからね?
 さすがのシロでもおかしいと思うレベルなのか、パメラは。これは思ったよりも重症なのかも知れない。いや、全裸で風呂場に突入してくる時点で察するべきだった。

 二階のベッドルームに行くと、すでに準備万端とばかりにパメラがベッドインしていた。さすがにバスローブは脱いでいないようである。シロをベッドに投げると、キレイな空中三回転を決めて着地した。さすが猫もどき。

 俺が使っているベッドはキングサイズのベッドであり、大人二人でも十分に寝ることができる。シロはいつもの枕元のポジションに移動すると、クルリと丸くなった。

 ベッドサイドのランプに明かりをともすと、天井から部屋全体を明るくしていた魔道具のスイッチを切った。
 ベッド横の薄暗いランプの光が、緊張した面持ちのパメラを淡く照らし出した。俺が隣に滑り込むと、パメラは口を引き結ぶと、ギュッとその目を閉じた。

「お休み、パメラ」

 パメラが口を開くよりも早く、俺は催眠魔法【眠り姫】を使った。すぐにパメラから静かな寝息が聞こえてくる。これでよし。何かパメラがしでかす前に眠らせてしまえばこっちのもんよ。

「ご主人様、まさか寝ているパメラに手を出すつもりじゃ……」
「そんなわけないだろう。それよりも、シロ君? キミ、俺のことをヘタレ呼ばわりしたみたいだね?」

 むんずとシロをつかんだ。シロが焦っているのが手に取るように分かる。足をバタバタさせている。フッフッフ、踊れ、踊るがいい!

「ご主人様! お風呂場で許してくれるって言ったじゃない!」
「確かに言ったな。だが、あれはウソだ」

 ウソ……とシロがつぶやいた。あきらめたのか、足がダランと垂れ下がる。フッフッフ、今日のところはこれで許してやろう。
 シロを定位置に戻すとポンポンとその頭をなでた。耳をペタッと下げたシロがこちらを見上げた。俺はそんなシロを安心させるようにゆっくりと笑いかけた。

「ねえ、ご主人様、パメラのこと、どうするつもりなの?」
「そうだな……。きっと何かしらの深いわけがあるんだろう。正直に言えば、厄介事にはかかわりたくない。だがここまで好意を向けられたら、無下にすることもできないよなぁ」

 クモの糸に絡め取られたかのような感じだ。思わずため息がこぼれた。

「……パメラのこと、嫌いじゃないんでしょ?」

 俺の心の中を見透かしたかのような声だった。
 耳は依然として垂れ下がったままである。

「そうだな……」

 嫌いじゃない。嫌いだったり、不快だったりしたら、押しつけられても買うことはなかっただろう。俺はパメラのことが好きなんだと思う。それでも、どうするべきか迷っている。俺は「今の生活」と「パメラと共に過ごす生活」を天秤にかけている。

「パメラに正直に話した方が良いんじゃないの?」
「俺が隣の大陸全土を支配している『魔法大国イデア』の第三王子であることをか? そんなことを話したら、パメラに大きな負担をかけることになりかねない。今はまだ言えない」

 ハア、とシロが大きなため息をついた。

「それだけパメラのことを大事に思っているなら、さらっていけば良いのに。だれも文句は言わないし、言わせないでしょ?」
「ハハハ……」

 乾いた笑いしか出てこなかった。
 俺はヘタレなんだ。あいにく、そんな勇気は持ち合わせていない。
 俺が兄たちみたいに、もっと社交的な人間だったら良かったのに。何度そう思ったことか。
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