完結 R18 絶縁の恥さらし公女は、厄介者の王子様にまとわりつかれる。

にじくす まさしよ

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2 リサイクルボックス以下

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 弟の成人式という、非常に大切な日に騒動を起こした私は、あのあとすぐに連れ戻された。20mくらいしか離れていない自分の部屋に。

 私を取り押さえた人たちが言うには、

 私が知らずに鳴らした、城全体に響き渡るようなけたたましい警告音は、誤作動だということにしたみたい。そして、両親も弟も、ここにくることなく、式典を最後までやりきった。

 とのことだった。

「もう二度と、このような迷惑極まりない騒ぎは起こさないでください。あなたは、ここで一生を過ごすのです。いいですね?」

 時間とともに、私が、両親が決めた禁忌を破って外にでようとしたことへの怒りの感情がおさまったのか、私の腕を掴んだ人がそう言った。

 その顔には、年に一度、私に見せてくれる両親と同じ、優しそうな笑顔を浮かべて。

 両親が、そのあとここに来たわけではない。弟に至っては、私という存在がいることを知っているかどうかも怪しい。

 本当はわかっていたのだ。

 両親が、私を疎ましいと、思っていることを。
 はやくいなくなればいいと、思っていることを。

 だというのに、彼らが私に年に一度やさしい笑顔を見せることができるのは、閉じ込めている私のことをどうでもいい、無関係な存在だと思っているということを。

 私は、両親にとって、目障りだけど、怒ったり悲しんだり、ましてや楽しいといった気持ちをゆさぶるような、ではないのだ。そのへんにある、ペットボトルのリサイクルボックスと同じ。
 誰が、リサイクルボックスが不潔な存在だからといって、憎いとおもうだろうか。排除しようとするだろうか。
 そのリサイクルボックスと同じ、いてもいなくてもどうでもいい存在だから、適当に笑うことができるのだ。

 まだ、リサイクルボックスなら、回収されたあと、新たな商品に生まれ変わるものを一時的に保管するという価値がある。

 でも、私は? 

 雷の国で、絶縁という特異体質を持つ私には、彼らにとっては、1Aほどの利用価値すらないのだ。


 私は、何を期待していたのだろうか。

 両親からの笑顔か? ハグか? それとも、愛?

 弟が、私に満面の笑顔で駆け寄って「お姉様」と呼んでくれて、それを微笑ましく見ている両親の姿か?

 そんな光に満ちた未来、私には絶対に来ない。

 それを痛感した私は、その日から言われた通り大人しく過ごすことにした。

 廊下にもほとんど出なくなって1週間。

 もしかしたら、罰としてひどい目に合わされるのかもしれないと恐れていたのだが、両親にとって、私は本当にリサイクルボックス以下の存在だったみたい。

 私が外にさえでなければ、ここで何をしていようともなんとも思わないのだろう。もしかしたら、ひとしれず天に帰ったとしても、メイドが気づくまで誰も知らずに捨て置かれて、笑顔で喜ぶのかもしれない。

 なんて、自分で考えてもバカバカしいことを考えていると、突然窓が開いた。そこそこ強い風が吹いていたのか、カーテンがはためき、私の髪を乱す。

「……っ!」

 一瞬、息がつまるほどの風のせいで、びっくりしたけれど声が出なかった。

 目を閉じて、開いた本で頭を保護していると、風が徐々にやんでいった。

「いまのは一体……」

 こんなことは初めてだ。外部からも、私を見ることができなように、この窓には強力な電子ロックがされており、勝手に開いたことはない。

 帽子のように頭に乗せた本を置き、顔を隠している髪を払いのける。目を開けると、目前に黄色い物体がこちらを興味深そうに覗き込んでいた。

「ナ?」

 私を心配そうに見つめてくるのは、本で見たことのある雷の精霊だった。手のひらほどの大きさの精霊は、体全体がまばゆい黄色のような体毛に覆われている。耳は体毛に埋もれているのか見えない。小さな鼻に、きゅるんとしたつぶらな瞳。そして、笑っているかのようなキュートな口元。
 ひものような長い尻尾の先に、もふっとしたぼんぼりのような毛先がついている。

「精霊、さん?」
「ナナッ!」

 なんて言っているのかわからないけれど、こちらの言うことはわかっているようだ。

 精霊は、人の前にはほとんど姿を現わさない。人間ぎらいの彼らは、基本的に精霊の世界にいる。ごくたまに、こちらの世界にやってきたとしても、姿を消しているからだ。

「ナッ!」

 想像していた以上に愛らしい姿に、思わずかわいいなあと見つめていると、3ミリくらいの何かを小さな手で差し出してきた。それは、球体で、透明の内部には、光が閉じ込められている。

「とてもきれいね。私に?」
「ナーナッ!」

 はやく受け取れと、ぐいぐいこちらにそれを近づける。いかんせん、精霊の腕が1センチもないから、こちらには全然届かなくて可愛すぎる。

 指先をそっとそれに近づけると、精霊は私の指先にそれを乗せた。
 すると、その玉から、壁に向かって光が放射状に広がった。

「これは、光魔法?」
「ナッ!」

 私は、どうだ、すごいだろう!と、胸を張りドヤっている精霊を手のひらにのせて、壁に映し出された男性と見比べていると、男性が静かに話し出した。


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