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11 何をあげたらいいのかわからなかったから、実用的な物がいいと思って
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「あの、これは?」
ムキ王子の少し照れくさそうな顔と、軍手を交互に見る。
私の両手にも、同じような軍手をしているが、穴なんてあいていないし、ゴム部分だってすり減ったり傷も入っていない。
ゴムは、絶縁の私にとって不要のようでいて、滑りにくいし、刃物から皮膚を守ったり、1.6~2.0ミリの銅線を折ったり何やかやする際に、軍手がないと痛くなるから重宝している。
「キャップだけを渡すのは、アレだから、お土産というか。プレゼント」
「ぷれぜんと……あ、昨日のお礼ですか? でも昨日もいいましたけれど、別に助けたわけじゃ」
しかも、なぜにチョイスがゴム付きの軍手?
仮にも女性には花とかお菓子、アクセサリーやバッグなんかが定番じゃ?
まさか、電設の女には、軍手が人気No1のプレゼントとかいうランキングでもあるのか?
「お礼もあるけど、プレゼント。何をあげたらいいのかわからなかったから、実用的な物がいいと思って。だから」
ムキ王子のことは、あれから学園長にちょっと聞いた。やはりというか、キャブタ王子には逆らえないというか、あえて逆らっていないみたい。
原因の女子生徒の世話役を、キャブタ王子に今から変更するには、王妃や王子の婚約者のこともあってできないので、ムキ王子がこのままやられたい放題のほうが、学園としても助かると言っていた。
いじめを容認するのかとちょっとモヤるけど、私は電設の女。教師ではないので、当事者や学園長がそのつもりならそれでどうでもいい。
とにかく、そんな状況だから、ムキ王子には周囲にはほとんど人がいない。女性へのプレゼントなんて、母親以外にあげたこともないのだろう。
色々考えすぎて、たどり着いたのが軍手とは。
ふふっと、思わず笑い声が出てしまった。
「ちょうど、そろそろ買い替えようと思っていたんです。お礼として受け取らせていただきますね。ただ、他の女の子には、オーソドックスに花束やお菓子のほうがいいかと」
「う、受け取ってくれた! 他の女の子にあげるプレゼントなんかないから」
「ふふ、今後の話です」
根は悪くなさそうな、年下の男子生徒は、なんだか弟みたい。というよりも、大型の犬。いや、やはり熊さんかな。
その熊さんから、驚くようなことを言われてしまった。
「え? ピピとボボを?」
「精霊だよね? なぜ、でんせつのあなたのところに、二種族の精霊が? あと、その眼鏡。伊達でしょ? ライトの調節をするときに外してたよね? あ、念の為に言っておくけど、覗きをしていたわけじゃないから!」
「眼鏡のことまで……」
さて困った。
普通、精霊は自ら姿を現わさないかぎり、そこらへんの人間には見えない。だから、普通にピピとボボとは、あちこちでしょっちゅう遊んでいたのだ。
ネオン様たちも、いつの間にかナナ様と友達になっていたと言っていたし、王族は精霊が簡単に見れるのかもしれない。
「その目の色、もしかして、でんせつのお姉さんは、雷の国の人?」
ピピやボボを見られたことよりも、こっちのほうが困った。髪は、変装で黒髪のおさげのかつらをしているけど、瞳の色は隠せなかった。ごまかすために、びん底眼鏡をしていたのに。
私の瞳の色は、公女である証でもある。父も、歴代の公家にまつわる人々は同じ瞳の色だ。おそらくは一度も見ていない弟もそうだろう。
「でんせつでんせつって、レジェンドみたいに連呼しないでください。あと、お姉さんってのも」
「じゃあ、なんと呼べば?」
「普通に、カキョウでいいですよ。単なる雇われ電気工事士ですし」
「カキョウさん。名前を呼んでもいいんですか?」
「はい、それでいいですよ。あと、瞳の色は、秘密にしていただけると助かります」
「秘密。……僕とカキョウさんのふたりだけのひみつ……。うん、それはいいんだけど、内緒にするからかわりに僕のお願いも聞いて」
「私にできることなら、なんでもいいですよ」
「じゃあ……僕にも、電設のことを教えて。前から、ちょっと興味があって」
一生困らないほどのお金があるはずなのに、変な趣味だなーと思いつつ、そのくらいならお安い御用だと引き受けた。
それ以降、精霊や瞳のことを黙っていて貰う代わりに、1日1回、ムキ王子と一緒に伝説、もとい、電設の仕事をすることになったのである。
ムキ王子の少し照れくさそうな顔と、軍手を交互に見る。
私の両手にも、同じような軍手をしているが、穴なんてあいていないし、ゴム部分だってすり減ったり傷も入っていない。
ゴムは、絶縁の私にとって不要のようでいて、滑りにくいし、刃物から皮膚を守ったり、1.6~2.0ミリの銅線を折ったり何やかやする際に、軍手がないと痛くなるから重宝している。
「キャップだけを渡すのは、アレだから、お土産というか。プレゼント」
「ぷれぜんと……あ、昨日のお礼ですか? でも昨日もいいましたけれど、別に助けたわけじゃ」
しかも、なぜにチョイスがゴム付きの軍手?
仮にも女性には花とかお菓子、アクセサリーやバッグなんかが定番じゃ?
まさか、電設の女には、軍手が人気No1のプレゼントとかいうランキングでもあるのか?
「お礼もあるけど、プレゼント。何をあげたらいいのかわからなかったから、実用的な物がいいと思って。だから」
ムキ王子のことは、あれから学園長にちょっと聞いた。やはりというか、キャブタ王子には逆らえないというか、あえて逆らっていないみたい。
原因の女子生徒の世話役を、キャブタ王子に今から変更するには、王妃や王子の婚約者のこともあってできないので、ムキ王子がこのままやられたい放題のほうが、学園としても助かると言っていた。
いじめを容認するのかとちょっとモヤるけど、私は電設の女。教師ではないので、当事者や学園長がそのつもりならそれでどうでもいい。
とにかく、そんな状況だから、ムキ王子には周囲にはほとんど人がいない。女性へのプレゼントなんて、母親以外にあげたこともないのだろう。
色々考えすぎて、たどり着いたのが軍手とは。
ふふっと、思わず笑い声が出てしまった。
「ちょうど、そろそろ買い替えようと思っていたんです。お礼として受け取らせていただきますね。ただ、他の女の子には、オーソドックスに花束やお菓子のほうがいいかと」
「う、受け取ってくれた! 他の女の子にあげるプレゼントなんかないから」
「ふふ、今後の話です」
根は悪くなさそうな、年下の男子生徒は、なんだか弟みたい。というよりも、大型の犬。いや、やはり熊さんかな。
その熊さんから、驚くようなことを言われてしまった。
「え? ピピとボボを?」
「精霊だよね? なぜ、でんせつのあなたのところに、二種族の精霊が? あと、その眼鏡。伊達でしょ? ライトの調節をするときに外してたよね? あ、念の為に言っておくけど、覗きをしていたわけじゃないから!」
「眼鏡のことまで……」
さて困った。
普通、精霊は自ら姿を現わさないかぎり、そこらへんの人間には見えない。だから、普通にピピとボボとは、あちこちでしょっちゅう遊んでいたのだ。
ネオン様たちも、いつの間にかナナ様と友達になっていたと言っていたし、王族は精霊が簡単に見れるのかもしれない。
「その目の色、もしかして、でんせつのお姉さんは、雷の国の人?」
ピピやボボを見られたことよりも、こっちのほうが困った。髪は、変装で黒髪のおさげのかつらをしているけど、瞳の色は隠せなかった。ごまかすために、びん底眼鏡をしていたのに。
私の瞳の色は、公女である証でもある。父も、歴代の公家にまつわる人々は同じ瞳の色だ。おそらくは一度も見ていない弟もそうだろう。
「でんせつでんせつって、レジェンドみたいに連呼しないでください。あと、お姉さんってのも」
「じゃあ、なんと呼べば?」
「普通に、カキョウでいいですよ。単なる雇われ電気工事士ですし」
「カキョウさん。名前を呼んでもいいんですか?」
「はい、それでいいですよ。あと、瞳の色は、秘密にしていただけると助かります」
「秘密。……僕とカキョウさんのふたりだけのひみつ……。うん、それはいいんだけど、内緒にするからかわりに僕のお願いも聞いて」
「私にできることなら、なんでもいいですよ」
「じゃあ……僕にも、電設のことを教えて。前から、ちょっと興味があって」
一生困らないほどのお金があるはずなのに、変な趣味だなーと思いつつ、そのくらいならお安い御用だと引き受けた。
それ以降、精霊や瞳のことを黙っていて貰う代わりに、1日1回、ムキ王子と一緒に伝説、もとい、電設の仕事をすることになったのである。
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