完結 R18 絶縁の恥さらし公女は、厄介者の王子様にまとわりつかれる。

にじくす まさしよ

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18 過電流なんて遮断器がなくても平気なんだから!

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「カキョウ様、お迎えにあがりました!」

 ……

 今、私の目の前には、自分の部屋おはか逃げ出した時の騎士に似た青少年が膝まづいて頭をさげている。そして、それを見下ろしている私を、彼から隠すようにムキ君が立ちふさがっていた。

 どうしてこうなった?

 私達は、海辺の美しい街を散歩していた。ぎらぎら輝く太陽が、容赦なく街や私達を照らしているけど、海の風のおかげか過ごしやすい。

 少しお腹が空いたから、地元の人が趣味でやっている小料理屋に入り、とれたての海産物たっぷりの料理に舌鼓を打っていた。

「うーん、BBQスタイルで、サザエそのままの壺焼きなのに、とれたてってこんなに美味しいのね!」
「カキョウさん、カキも焼けたみたい。ほら、アチチ!」
「ムキ君、気を付けて。やけどしちゃったの? 見せて」

 網の上にあったカキが指に当たったみたい。彼の手を取りよくみると、赤くなっていた。これは、水ぶくれになるかも。

「大変。すぐに手当をしなきゃ」
「あ、大丈夫。自分で冷やせる……いや、カキョウさん、すごく痛いから、手当してくれる?」

 そういえば、ムキ君は炎の国の王子だけど、特異体質で氷魔法が使えるはず。私の手当よりも氷魔法でちゃちゃっと冷やせばいいんじゃないかなー?
 そう思いつつも、彼のやけどした指を冷やして治療した。電気でもやけどすることもあるから、手当くらいはわかる。

「カキョウさんが、僕の指を……ふうふうしてくれた……! 僕、この指を洗わないぞ」
「ん? そうね、治るまでは頻繁に洗えないかも? でも、日に1回は手洗いして手当をしなおそうね」
「毎日、カキョウさんが僕の手を……よろしくおねがいします!」
「そんな一生懸命頼まなくても、普通にしてあげるから」

 そんなふうに、BBQのハプニングがありつつも、美味しい楽しいひとときを過ごしていた。

 すると、唐突に私達の前にムキ君と同じ年頃の青少年が現れたのだ。

 そして、徐ろに膝をついて、冒頭のセリフを言ったもんだから、頭に?が飛び交ってしまう。

「誰ですかー?」
「雷の国で、公女様につかえていた騎士を覚えておいででしょうか? 私はその息子です。父の命令で、ずっとお探ししておりました」
「人違いですよ?」
「いえ、ごまかさないでください。あなたの所在は、はやくからわかっていたんです。ただ、光の国や学園、そしてこの国の王宮に潜入することが難しかっただけですので。実は学園で留学生としているのは、私の身代わりなんです。私は、一足早くこの国に入国し、公女様が学園から王宮に向かわれる時から、ずっと見守っておりました」
「へ? じゃあ、最初から?」

 なんと。光の国にいる頃からわかっていたとな。それでも、彼が私の前に来れなかったということは、伯父様や学園長、そしてこの国の王族のセキュリティが万全だということ。すごい。
 ただ、今回避暑地に逃亡しなかったら、彼は手も足をもだせなかったのだ。全くの無駄足だったというわけかと肩を落とした。

「はい。これまでは、全く隙がなくて、今までご挨拶が叶いませんでしたが、ムキ王子とふたりになったのでようやく……さ、私と一緒に雷の国に帰りましょう。さ、公女様、手を。皆様、ずっと公女様を探しておられていたんですよ」

 探していた? ほんとにぃ?

 あの人達が、本気で私を探すなんて、ちょっと何言っているのかわからない。

 やっぱり、行きたまま他国にいられるくらいなら、トドメを刺すつもりなのかとムカムカする。

「うーん。喜んで、お断りしまーす」

 私の返事の前半を聞き、ムキ君は顔を青ざめさせ、青少年はぱっと顔を上げて満面の笑顔になる。だが、最後の言葉で、彼らの表情が入れ替わった。

 青少年は、ぽかんと口を開け、数秒後には顔を真赤にして怒り出した。

 騎士なのに、プライドが高くて偉そうなのは、父親譲りなのかも。あの時の騎士は、仮にも公女であるわたしに、めちゃくちゃ上から目線だったし。

「実力行使もやむを得ないと言われております。失礼!」

 まさか、断られるとは思っていなかったのだろうか。断るに決まってるでしょ、と、私は呆れた。

 青少年が繰り出したのは、幾重にも輪になった雷の拘束具。それが、首と腕、そして足を捕らえた。

「うわ……普通の人が、これをまともにくらったら、感電して意識が飛んじゃうんじゃない?」

「な……この魔法は、巨大な像でも、瞬時に昏倒するほどの威力なんだぞ!」

 青少年は、立ったまま平然としている私を見て、心底驚愕したようだ。何度も同じ拘束魔法を放ってくる。

「絶縁体質をなめないでよね? 聞いてるでしょ? 私は絶縁の恥さらし公女だって。あのね、私にとって、過電流なんて遮断器がなくても平気なんだから!」

 私は、体をめぐる何重もの輪っかを、腕を開いて解除した。他の人には有効でも、私には物理的に紐でくくったほうが効果的だったと思う。

 私は、帯電している青少年の胸ぐらを掴んだ。

「こんな民家が立ち並んでいる場所で、なんて電流を発生させてるのよ! 不安全行動禁止! ご安全に!」

「ご安全に!」
「ぴーぴっ!」
「ぼーぼっ!」

 私がそう叫ぶと、ムキ君と、いつの間にか現れたピピ様とボボ様が、青少年に向かって、氷、雷、炎の魔法を放った。3つの属性を同時に受けた彼は、ひとたまりもなく地面に倒れ込んだ。

「雷の国の民でも、雷って効くのねぇ」
「ぴぃ」
「ぼっ」
「おそらく、氷と炎の魔法と同時だったので、融合したのが良かったのかも」
「そうかもね。熱と電気って切っても切り離せないから」

 私達は、意識を失った青少年を連れて、王宮にもどることにした。

「うう、ふたりっきりの時が、たった半日で終るなんて……」
「せっかく、色々買ってくれたんだけど、残念ね。そうだ、今度、卒業旅行でジュシちゃんたちも一緒にこよう」
「う゛う゛……」
「あ、起きそう。もうちょっと眠ってて」
「ふたりっきりが良かったのに……今夜は、カキョウさんとの甘い夜を過ごす予定だったのに……そうしたら、帰る時には僕の妻になってくれていたのに! くそ、お前のせいでっ! お前のせいでっ! おーまーえーの、せいでえええええ!」

 ムキ君がブツクサなんかいいながら、なんだか、えらく熱のこもったというか、恨みのこもった物理的一撃を青少年に食らわせた。それから、青少年は、王宮の牢に入って暫くの間、目を覚まさなかったのである。

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