完結 R18 絶縁の恥さらし公女は、厄介者の王子様にまとわりつかれる。

にじくす まさしよ

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19 僕達のひとときを邪魔したんですから、極刑でも生ぬるいです!

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 捕らえた青少年は、炎の国の牢屋にいると知り、あっさり白状した。

 今は、非公式の場所で、炎の国の王族や、私の存在を知るごく一部の貴族や官僚たちが睨んでいる中、大理石の床に膝をついて座らされている。

 実は、雷の国の私の両親は、私を探していないことを。

 では、なぜ私を探しているのかというと、原因は彼の父にあった。

 私を目の前で逃がしてしまった彼の父は、失態の責任を追求されて降格になったようだ。もともと、騎士としてさぼりまくっていて、大人しく部屋でじっとしている私の専属騎士として、あそこにいるふりをしてさぼっているだけで良かったから、誰もやりたがらない職場にいたっぽい。
 一応、公女の護衛騎士だから、名誉職として破格の給料をもらっていた。その上、私が毎日暴れて人々を困らせ傷つける悪魔のような公女だと言いふらしていたみたい。で、そんな公女を大人しくさせることができるのは自分だけだと、大嘘をついて、感謝されていたらしい。

 なんだそれ。私は弟の存在を知ったときと、逃げ出したとき以外は、大人しく自分が許可された小さな場所から出なかったし、私に関わる人なんて、雀の涙ほどだったのに。

 彼の報告を鵜呑みにして、両親たちも私を亡き者にして、一生涯あそこで生かせておけばいいと思っていたそうな。

 年に1回、会った時に私のひととなりとかはわかっていたと思うんだけど。

 で、彼の息子であるこの青少年が、私を雷の国に連れ戻すことで、家の復興ができ、褒賞金を貰えるという計画だったんだってー。

「なんと、それでは……」

 一緒に聞いていたキャブタ王子も、ムキ君も、言葉がでないようだった。

「お前が、大人しくあのまま雷の国にいたら、我家は安泰だったのに。お前が逃げたせいで、俺の婚約もなくなり、家もずたぼろだ。申し訳ないと思うのなら、今すぐ俺を牢屋から出して雷の国に戻れ!」
「おーこーとーわーりー。私は、あなたやあなたのお父様、そして両親たちの都合の良いお人形じゃないの。聞いていれば勝手なことばっかり。それに、あなたの身柄は私の一存では決められないわ。だって、ここにいる、炎の国の王子様に害を与えようとしたんだもの。極刑されるんじゃない?」
「なっ! 俺が魔法を使ったのは、お前だけで!」
「いいや。父上、そいつは確かに、僕の方に向かって魔法を使いました。それをカキョウさんが助けてくれたんです。それに、僕達のひとときを邪魔したんですから、極刑でも生ぬるいです!」

 そう、私の前にはムキ君がいた。

 僕達のひととき云々は、たしかに楽しくて美味しい新鮮な海鮮のBBQを邪魔されたんだから、食べ盛りのムキ君がこれほど怒るのは無理はない。

「そうよそうよ。せっかく、ムキ君と楽しんでいたのに。邪魔するなんてひどいわ」

「カキョウさん……カキョウさんも、僕と同じ思いを? うっそだろ、もうちょっとかかると思っていたのに。でも、やっと僕の思いを受け止めてくれたんだ。そうとわかれば、すぐにでも結婚を。いや、婚約しないとな。ああ、でも、僕はまだ学生だから、卒業式まで待ってもらって……」

 また、何かをムキ君が呟いたけど、青少年の大声でかき消された。

 とにかく、この、飢えた熊のような大きな巨体が、見えなかったとは言わせねぇ。私を特定して魔法を施行する自信があったのかもしれないけど、あの状態での魔法行使は、王族暗殺に等しい。下手をすれば、ムキ君が感電してショック状態に陥ったかもしれないのだから、極刑が妥当なのかも。

 炎の国の陛下は、あごひげを少し触ると、周囲にも意見を求めた。集まった人たちの話し合いの結果、青少年は王族への不敬罪及び暗殺未遂によって、極刑を言い渡されたのだ。ただ、雷の国の人間なので、少々ややこしい。
 後日、彼はムキ君のお祖父様である宰相とともに、雷の国に移送されて、あの国の一番重い刑となったとのこと。彼だけでなく、家族や親族一同、電気抵抗の強いニクロムの鉱山で労役を課せられた。雷の魔法がほとんど使えない鉱山での労役は、彼らにとって最も屈辱的で大変な一生を贈ることになるだろう。

 雷の国の両親は、私が生きていることを伝えられると、私に見せていたように優しい笑顔になったという。
 そう、彼らにとって、私という亡霊はどうでもいい存在なのだ。

 それを見たムキ君のお祖父様は、行方知れずの子供の安否がわかったのにあれはない。あのふたりは脳みそに変な電流を流されておかしくなっているとぷりぷり怒っていた。それを聞いたムキ君のお母さまは涙を流して私を抱きしめてくれたし、ムキ君なんかは、いますぐ雷の国に行って、氷魔法で氷漬けにしてやると息巻いたほど。

 私は、とっくにあの国に未練のかけらもないと思っていたけれど、ムキ君のお母さまの胸の中が温かくて、わんわん泣いてしまった。

 あとで、恥ずかしくなったけど。でも、やっとふっきれたような気がした。

 弟は、その時に初めて私の存在を知ったみたいで、後日、謝罪と、いつか会いたいという心のこもった手紙が届けられた。両親には恵まれなかったけど、いつか、弟とほんの少しでも話ができればいいなと思う。

 で、だ。

 騒動が終わってから、学園での平和な日常が戻った。時々、ムキ君と一緒に、病弱のお母さまにご挨拶に伺うという日課が加わったけれど。

 そして、彼らの卒業の日。

 壇上で、卒業生代表して立派につとめを果たしたキャブタ王子が、ジュシちゃんが実は平民じゃない、れっきとした貴族の令嬢で、自分の婚約者だということを明かした。
 ピンクの髪は実はかつらで、それを取った姿は、なんと黒髪。今の私のかつらと同じようにおさげにしていて、ムキ君の家系のひとりだったのである。

 そういえば、ムキ君のお母さまが、ちょびっとおさげ髪の女の子が親戚にいるから、その子になりすませばいいやらなんやら言っていた。それが、ジュシちゃんだったのかとびっくりした。

 なるほど、だから私の正体を知っていたし、途中から彼女の正体を知ったキャブタ王子と、堂々といちゃいちゃしていたのか。納得納得。

 なにわともあれ、ジュシちゃんが日影の身にならなくてよかったよかった。

 ムキ君とキャブタ王子も、完全に誤解が解けて、案外、いじめ以前よりも仲良し兄弟になった。うん、これぞ青春だ。

 あの、ボコボコにされていた熊さんが、立派になって卒業をする。これからはもう会えないのかと、自称弟子たちの新たな旅立ちを、さみしいような、誇らしいような気持ちで見送った。





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