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17 ※R15~スタートです。まずは全年齢のデートから。
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婚前旅行です。気前のいい、王弟であるズッキーニ公爵(誰?とか言わないでくださいね。泣)からのお祝いのプレゼントです。
そして、いちゃこらの文字数が増大しました。6000超えたので流石に分けます。すみません。
※※※※
秋になり、早朝と夜半が涼しくなり日中が真夏のように汗ばむようになった頃、マロウ様が長期休暇を取ってくれた。そのために、かなりのハードスケジュールをこなしていたらしい。その間の周囲の方々の苦労も大変なもので、一斉にとはいかないけれど、交代で休暇を楽しんでもらっている。
妊婦である侍女は産休に入っていて、優しいご主人様と一緒にのんびり過ごすそうだ。私たちが帰る頃には、ひょっとしたらもうひとり家族が増えているかもしれない。
国外に出るのは初めてだ。私付きの侍女さんやメイドさんたちの中で、旅慣れた子と、希望者を連れてきている。
乗り込む船は、とても大きい。ゼニアオイ侯爵の持ち船で、これまで幾多の海を無事に航海してきた。名をマルチアナという。
航海にうってつけの、澄んだ秋空は、まるでマルチアナとともに旅立ち私たちを祝福しているかのよう。
「ビオラ、揺れるからしっかり掴まって」
「はい」
マロウ様が、逞しい腕で軽々と私を抱き上げてくれる。ここは、世界一安全な私だけの場所だ。私よりも高い彼の体温を感じながら、しっかり首に腕を巻き付ける。
船長やクルーとも数日一緒に旅をする仲間である。ここでは、船長が王様のようなもので、全幅の信頼を置かれているベテランだ。彼は、突然の大時化に見舞われた荒れ狂う冬の波を、誰一人船から落とすことなく乗り切った船乗りの英雄的存在らしい。
なんと、10メートルもの大波を彼のかじ取りでマルチアナを乗りこなしたという。
そんな彼らは、マロウ様が船旅をする度に一緒に航海しているからか、家族のように気さくで仲がいい。
マロウ様の腕の中の私を、真夏の太陽のような覗き込み、少々荒っぽいけれど、海の男とはこういうものだと、豪快に笑いながら、クルーが無礼をしても許してやって欲しいと頼まれた。
「あの、もともとわたくしも平民同然でしたし、領地の鉱山で働く方たちとも交流がありましたから、大丈夫だと思います。船の事を知らず、船旅などした事のないわたくしのほうこそ、皆様の邪魔をしてしまったら申し訳ありません」
そう言うと、船長さんたちはびっくりしていた。なぜ驚かれるのか首をかしげていると、マロウ様から、貴族令嬢というのは、船乗りに声すらかけない者が多いと聞いて、私のほうがびっくりした。
私たちの命を預けるのに、挨拶すらしない人がいるなんて信じられなかった。
全員が無事に乗り込み、いよいよ出発の時。
陸と船を繋ぐ板が外され、碇があげられる。接岸していた船の側面が徐々に離れて行き、船首が何もない海一面に向けられると、真っ直ぐに走り出した。
ゆっくりにも見えたけれど、瞬く間に私たちの国が遠ざかっていく。
海面を船がかき分け、しぶきをあげ、あぶくをたくさん作りながら進む下を見ていると、マロウ様が船酔いをするからと、空を飛ぶカモメたちを指さして色々教えてくれた。
「ビオラ、あそこにいる大きな鳥はカツォドリという。見ててご覧、とんでもない速さで移動し、海面に突っ込んで魚を採るから」
マロウ様のいうカツォドリは、目一杯羽を広げると、マロウ様の背丈くらいありそうだ。なんでも体長は約90センチ、羽を広げると軽く1.5メートルはあり、その凄まじいスピードで海面下20メートルまで潜るという。
初めて見る様々な鳥や魚たちの動きは、私の心を躍らせた。
それは侍女さんたちも同様で、実は一緒に恋人と来ている子もいて、とても楽しい時間を過ごした。
ところが、夕方になり、流石に見飽きたのと、昼食後から少々気持ちの悪さが続いていて、ベッドに横になってしまった。
「ビオラ、大丈夫か? 水だけでも飲むんだ。ほら、酔い止めも」
「う……欲しくありません……」
マロウ様や皆に物凄く心配された。渡されたコップを見るのも嫌で、一滴も飲もうとしない私に、マロウ様がそっと口移しで薬と水を含ませてくれた。
「夕食は無理せずともいいが、水分だけは飲むんだよ」
「はい……ごめんなさい、マロウ様……」
「俺も船旅の最初の頃は、もっとひどい船酔いをしていた。ビオラ、今眠ると夜に眠れない。もう少ししたら薬も効くだろうから、耐えてくれ」
「はい……マロウ様がこうして一緒にいてくださるから大丈夫です」
ペパーミントのドリンクはとても冷えていて飲みやすい。他の皆は大丈夫か心配になったけれど、船酔いでダウンしたのは私だけのようだった。
元気な時は、船酔いしづらいように、マロウ様や皆が楽しませてくれて、夜はマロウ様にすがりついて眠る事3日。ついに、世界一有名なテーマパークに着いたのである。
「え? 貸し切り……?」
船から降りると、マロウ様がこの島ごと貸し切って貰ったから、皆も思い思いに楽しむと良いと言った時、そう言えば、この旅行はズッキニーニ閣下からの婚約祝いでもあった事を思い出した。
まさか、私たちが帰る2日間もの間、施設もなにもかもスタッフ事借り切ったなんて、とんでもない金額だろう。それだけでも足が震えるのに、世界中から非難されそうだ。
「もともと、この時期に1週間ほどメンテナンスのために休園日を設けているんだ。結構その期間を利用して、普段来れない人たちが俺たちのように利用するから心配しなくていい」
そうはいっても、やっぱりある程度の人がいないと、がらーんとしていて寂しいしちょっとつまんないと思う。それに、やっぱり楽しみにしている人たちだって多いから、こういう利用の仕方はこれっきりにして欲しいと伝えた。
「そういうものか……俺はこういった場所に来た事がないから気づかなかった。じゃあ、ビオラは従業員も参加していいというんだな?」
「ええ。お仕事の邪魔にならなかったら、いつも人々を楽しませてくださる皆様にも、折角ですので一緒に楽しんでいただきたいです」
結果、私たち一行だけじゃなくて、ここで働く人たちも一緒に遊んでくれる事になり、ハードワークをこなしていた彼らの間で、特別ボーナスをくれたような形になった私は一躍人気者になったそうだ。
必要最低限の人数配置で、ローテーションを組み、少ないとはいえ、1000人弱の人々が賑わうテーマパーク。
すれ違う人たちに、パフォーマンスをサービスしてくれたり、とてもよくしてもらったのもあって、素晴らしい一日になったのである。
レールの上を縦横無尽に走る乗り物や、恐々入るモンスターハウスに、子供用の可愛いぬいぐるみのような動物に似せたくるくる回るアトラクション。
休憩しつつ、テーマパークに来たら絶対乗りたい乗り物どころか、全てを制覇しつつ、事前調査で必ず食べたかった名物の料理やスイーツは、日常とかけ離れた夢の世界にいるからか、格別だった。
マロウ様といれば、それはどこだって特別で素晴らしい場所に早変わりするのだけれども。
フェリスホイールという、巨大な丸い鉄柱に、4人乗りの箱がぶら下がってゆっくり地上から空に向かい、そして地上に帰るまでを一周する乗り物は、マロウ様も初めてだったみたいで、頂上付近でなんと彼が真っ青になって倒れそうになった。
狭い空間で、とんでもない高さだから、そういう状況で意識が朦朧とする人がいるとは聞いていた。
といっても、急に地上に降りられるはずもなく、膝の上でマロウ様の頭を抱え込み、彼の体を擦り続けたのである。
降りてから、情けない姿を見せたくないだろうと思って、木陰のベンチでふたりきりにしてもらい、膝枕で暫く過ごすとマロウ様が元気を取り戻してくれた。二度とあれには乗らないでおこうと思う。
※ a Ferris wheel :フェリス・ウィール(ホイール) 観覧車
そして、いちゃこらの文字数が増大しました。6000超えたので流石に分けます。すみません。
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秋になり、早朝と夜半が涼しくなり日中が真夏のように汗ばむようになった頃、マロウ様が長期休暇を取ってくれた。そのために、かなりのハードスケジュールをこなしていたらしい。その間の周囲の方々の苦労も大変なもので、一斉にとはいかないけれど、交代で休暇を楽しんでもらっている。
妊婦である侍女は産休に入っていて、優しいご主人様と一緒にのんびり過ごすそうだ。私たちが帰る頃には、ひょっとしたらもうひとり家族が増えているかもしれない。
国外に出るのは初めてだ。私付きの侍女さんやメイドさんたちの中で、旅慣れた子と、希望者を連れてきている。
乗り込む船は、とても大きい。ゼニアオイ侯爵の持ち船で、これまで幾多の海を無事に航海してきた。名をマルチアナという。
航海にうってつけの、澄んだ秋空は、まるでマルチアナとともに旅立ち私たちを祝福しているかのよう。
「ビオラ、揺れるからしっかり掴まって」
「はい」
マロウ様が、逞しい腕で軽々と私を抱き上げてくれる。ここは、世界一安全な私だけの場所だ。私よりも高い彼の体温を感じながら、しっかり首に腕を巻き付ける。
船長やクルーとも数日一緒に旅をする仲間である。ここでは、船長が王様のようなもので、全幅の信頼を置かれているベテランだ。彼は、突然の大時化に見舞われた荒れ狂う冬の波を、誰一人船から落とすことなく乗り切った船乗りの英雄的存在らしい。
なんと、10メートルもの大波を彼のかじ取りでマルチアナを乗りこなしたという。
そんな彼らは、マロウ様が船旅をする度に一緒に航海しているからか、家族のように気さくで仲がいい。
マロウ様の腕の中の私を、真夏の太陽のような覗き込み、少々荒っぽいけれど、海の男とはこういうものだと、豪快に笑いながら、クルーが無礼をしても許してやって欲しいと頼まれた。
「あの、もともとわたくしも平民同然でしたし、領地の鉱山で働く方たちとも交流がありましたから、大丈夫だと思います。船の事を知らず、船旅などした事のないわたくしのほうこそ、皆様の邪魔をしてしまったら申し訳ありません」
そう言うと、船長さんたちはびっくりしていた。なぜ驚かれるのか首をかしげていると、マロウ様から、貴族令嬢というのは、船乗りに声すらかけない者が多いと聞いて、私のほうがびっくりした。
私たちの命を預けるのに、挨拶すらしない人がいるなんて信じられなかった。
全員が無事に乗り込み、いよいよ出発の時。
陸と船を繋ぐ板が外され、碇があげられる。接岸していた船の側面が徐々に離れて行き、船首が何もない海一面に向けられると、真っ直ぐに走り出した。
ゆっくりにも見えたけれど、瞬く間に私たちの国が遠ざかっていく。
海面を船がかき分け、しぶきをあげ、あぶくをたくさん作りながら進む下を見ていると、マロウ様が船酔いをするからと、空を飛ぶカモメたちを指さして色々教えてくれた。
「ビオラ、あそこにいる大きな鳥はカツォドリという。見ててご覧、とんでもない速さで移動し、海面に突っ込んで魚を採るから」
マロウ様のいうカツォドリは、目一杯羽を広げると、マロウ様の背丈くらいありそうだ。なんでも体長は約90センチ、羽を広げると軽く1.5メートルはあり、その凄まじいスピードで海面下20メートルまで潜るという。
初めて見る様々な鳥や魚たちの動きは、私の心を躍らせた。
それは侍女さんたちも同様で、実は一緒に恋人と来ている子もいて、とても楽しい時間を過ごした。
ところが、夕方になり、流石に見飽きたのと、昼食後から少々気持ちの悪さが続いていて、ベッドに横になってしまった。
「ビオラ、大丈夫か? 水だけでも飲むんだ。ほら、酔い止めも」
「う……欲しくありません……」
マロウ様や皆に物凄く心配された。渡されたコップを見るのも嫌で、一滴も飲もうとしない私に、マロウ様がそっと口移しで薬と水を含ませてくれた。
「夕食は無理せずともいいが、水分だけは飲むんだよ」
「はい……ごめんなさい、マロウ様……」
「俺も船旅の最初の頃は、もっとひどい船酔いをしていた。ビオラ、今眠ると夜に眠れない。もう少ししたら薬も効くだろうから、耐えてくれ」
「はい……マロウ様がこうして一緒にいてくださるから大丈夫です」
ペパーミントのドリンクはとても冷えていて飲みやすい。他の皆は大丈夫か心配になったけれど、船酔いでダウンしたのは私だけのようだった。
元気な時は、船酔いしづらいように、マロウ様や皆が楽しませてくれて、夜はマロウ様にすがりついて眠る事3日。ついに、世界一有名なテーマパークに着いたのである。
「え? 貸し切り……?」
船から降りると、マロウ様がこの島ごと貸し切って貰ったから、皆も思い思いに楽しむと良いと言った時、そう言えば、この旅行はズッキニーニ閣下からの婚約祝いでもあった事を思い出した。
まさか、私たちが帰る2日間もの間、施設もなにもかもスタッフ事借り切ったなんて、とんでもない金額だろう。それだけでも足が震えるのに、世界中から非難されそうだ。
「もともと、この時期に1週間ほどメンテナンスのために休園日を設けているんだ。結構その期間を利用して、普段来れない人たちが俺たちのように利用するから心配しなくていい」
そうはいっても、やっぱりある程度の人がいないと、がらーんとしていて寂しいしちょっとつまんないと思う。それに、やっぱり楽しみにしている人たちだって多いから、こういう利用の仕方はこれっきりにして欲しいと伝えた。
「そういうものか……俺はこういった場所に来た事がないから気づかなかった。じゃあ、ビオラは従業員も参加していいというんだな?」
「ええ。お仕事の邪魔にならなかったら、いつも人々を楽しませてくださる皆様にも、折角ですので一緒に楽しんでいただきたいです」
結果、私たち一行だけじゃなくて、ここで働く人たちも一緒に遊んでくれる事になり、ハードワークをこなしていた彼らの間で、特別ボーナスをくれたような形になった私は一躍人気者になったそうだ。
必要最低限の人数配置で、ローテーションを組み、少ないとはいえ、1000人弱の人々が賑わうテーマパーク。
すれ違う人たちに、パフォーマンスをサービスしてくれたり、とてもよくしてもらったのもあって、素晴らしい一日になったのである。
レールの上を縦横無尽に走る乗り物や、恐々入るモンスターハウスに、子供用の可愛いぬいぐるみのような動物に似せたくるくる回るアトラクション。
休憩しつつ、テーマパークに来たら絶対乗りたい乗り物どころか、全てを制覇しつつ、事前調査で必ず食べたかった名物の料理やスイーツは、日常とかけ離れた夢の世界にいるからか、格別だった。
マロウ様といれば、それはどこだって特別で素晴らしい場所に早変わりするのだけれども。
フェリスホイールという、巨大な丸い鉄柱に、4人乗りの箱がぶら下がってゆっくり地上から空に向かい、そして地上に帰るまでを一周する乗り物は、マロウ様も初めてだったみたいで、頂上付近でなんと彼が真っ青になって倒れそうになった。
狭い空間で、とんでもない高さだから、そういう状況で意識が朦朧とする人がいるとは聞いていた。
といっても、急に地上に降りられるはずもなく、膝の上でマロウ様の頭を抱え込み、彼の体を擦り続けたのである。
降りてから、情けない姿を見せたくないだろうと思って、木陰のベンチでふたりきりにしてもらい、膝枕で暫く過ごすとマロウ様が元気を取り戻してくれた。二度とあれには乗らないでおこうと思う。
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