【完結】【R18】お父様は心配性な元ストーカー~幼馴染に食べられちゃったわたくし

にじくす まさしよ

文字の大きさ
2 / 3

2

しおりを挟む
 愛する唯一の女の子の父親が、今日も今日とて俺の邪魔をしにやってくる。彼が本気になれば、俺は無傷ですまないどころか滅多打ちになるだろう。
 だけど、俺を打ち据えると、彼の大切な娘であるエマが悲しむ。だからこうして可愛らしい悪戯レベルの事しかされたことはない。

 腕を上げて、彼が投げてきたミルフィーユを受けると、まぶされていた粉砂糖が宙を舞う。べっとりとはりつく甘いそれが袖に生クリームとともにたくさんついた。甘ったるい匂いに眉をしかめる。

 そこに、ちょうどエマがやってきた。彼が真っ青になって立ちすくんでいる。

 エマが、失礼をした彼をしかりつけて俺のほうにやってきた。今のようにこういう事態を見聞きする前は、俺たちの不穏な雰囲気を察しても、絶対に彼に抱き着いていたというのに。

 ちらっと彼を見てみると、俺と視線が合う。とても悔しそうに俺を見ているので内心溜飲がさがるが、未来の義父殿だ。申し訳なさそうにぺこりと頭をさげると、馬鹿ではない彼もまた頭を下げて謝罪の意を示すとその場を去って行った。

 目の前で、俺の袖口を涙をいっぱいためて一生懸命綺麗にしようとしている彼女はとてもかわいい。
 笑っても、怒っても、寝ていても、あくびをしても、そして、こうやって目に涙を流していてもかわいくて愛らしくて、この世のどんな言葉でも彼女の素晴らしさを余すことなく表す事などできやしない。

 俺になつくように、小さな頃から好かれる王道『お兄様』ポジションを守りつつ、彼女に近づく害虫どもを滅多打ちにして近づけなかった。
 機会があれば膝の上にのせて来たし、ベッドですやすや眠る彼女をわざと少し起こして一緒に寝てあげるといい何度もその横に滑り込んだ。
 お風呂も入りたかったけれども、それは彼女の侍女が許してくれずに悔しい思いをしていたのである。

──ああ、かわいいなあ。

 甘ったるい匂いよりも甘い彼女の香りにくらくらする。

「マシュー、お父様がごめんなさい」
「エマ、いいんだ。キリアン様のお気持ちもわかるから。でも、そろそろ認めてもらわないとな」
「何を?」


 俺は、まだ涙で膜がはって潤んだ彼女の小さな唇に吸い寄せられるように近づいていった。



※※※※



 キス、されていると気づいたのは彼が2度、3度啄むように下唇を彼の唇で軽く食みながら繰り返された後。少し離れた彼の目元が赤い。目を閉じるのも忘れて、彼の真剣な眼差しをぼうっと見つめる。

「エマ……」

 目を閉じながら、うっとりした表情の彼がまた落ちて来る。わたくしは、思わず目を閉じてしまい、手に持っていた布巾を落とした。

「ん……、ん……」

 唇の境目にぬるっと熱くて大きな何かがなぞるように押し付けられた。息が出来なくなり、口を開けると、すかさずそれが入り込んでしまう。

 すがるように彼の服をきゅっと持つと、体を引き寄せられ、苦しいほど抱きしめられた。

「エマ、エマ……はぁ……」
「ましゅ、なんで……」

 視界がぼやけてしまう。お互いの吐息が絡み合うほどの距離のそこがもう一度くっついた。何がなにやらわからないまま、彼のなすがまま好きなように沢山唇を奪われていく。

「エマ……、かわいい。好き」

 マシューの口から信じられない言葉が紡がれた。

「うそ……」
「嘘? 何でそう思うの? ずっとエマだけしか見てこなかったし抱いていなかったのに」
「だって、兄だって……。わたくしの事は妹扱いしていて……」
「妹にこんな事しない。俺にはずっとエマだけだ」

 好きだよ、エマ。君は──?

 唇がゆっくりそう動いた。わたくしは涙を流しながら答える。

「わたくしもマシューが好き……。ずっと、好き。好きなの。妹扱いされていたから諦めようって思ってたの……。これは夢?」

「そうだったのか。兄というポジションが一番結婚に早いと耳にしたからそうしてただけだよ。悲しい思いをさせてごめんね。エマ、愛しているよ」

 もう一度、ぎゅっと抱きしめらて舌を絡めとられた。息が苦しくて、ぷはっと息継ぎをする。

「エマ、落ち着いて鼻でするんだよ。ほら」

 優しく唇を合わせられるとすりすり左右に動かされた。

 ふわふわした感覚が体中をかけめぐり、まるで宙を浮いているかのようだ。彼に抱きしめられながら、本当に宙に浮いている事に気付いたのは、横抱きにされて馬車に押し込められた時。

「マシュー……?」
「とろんとしちゃって。かわいすぎて、食べられそうだね」
「食べられちゃうの?」
「うん。誰かに食べられちゃう前に」

──お・れ・が

 そう口が動いているのを現実味のない思考で見つめる。

「食べていい?」

 何をだろうと思いながら、彼が食べたいならいっぱい食べたらいいと思ってコクリと頷いた。すると、膝の上に抱っこされているから彼の首にしがみ付いているので、ごくりと、彼の咽が鳴ったのがわかった。









しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

日常的に罠にかかるうさぎが、とうとう逃げられない罠に絡め取られるお話

下菊みこと
恋愛
ヤンデレっていうほど病んでないけど、機を見て主人公を捕獲する彼。 そんな彼に見事に捕まる主人公。 そんなお話です。 ムーンライトノベルズ様でも投稿しています。

ちょいぽちゃ令嬢は溺愛王子から逃げたい

なかな悠桃
恋愛
ふくよかな体型を気にするイルナは王子から与えられるスイーツに頭を悩ませていた。彼に黙ってダイエットを開始しようとするも・・・。 ※誤字脱字等ご了承ください

狼隊長さんは、私のやわはだのトリコになりました。

汐瀬うに
恋愛
目が覚めたら、そこは獣人たちの国だった。 元看護師の百合は、この世界では珍しい“ヒト”として、狐の婆さんが仕切る風呂屋で働くことになる。 与えられた仕事は、獣人のお客を湯に通し、その体を洗ってもてなすこと。 本来ならこの先にあるはずの行為まで求められてもおかしくないのに、百合の素肌で背中を撫でられた獣人たちは、皆ふわふわの毛皮を揺らして眠りに落ちてしまうのだった。 人間の肌は、獣人にとって子犬の毛並みのようなもの――そう気づいた時には、百合は「眠りを売る“やわはだ嬢”」として静かな人気者になっていた。 そんな百合の元へある日、一つの依頼が舞い込む。 「眠れない狼隊長を、あんたの手で眠らせてやってほしい」 戦場の静けさに怯え、目を閉じれば仲間の最期がよみがえる狼隊長ライガ。 誰よりも強くあろうとする男の震えに触れた百合は、自分もまた失った人を忘れられずにいることを思い出す。 やわらかな人肌と、眠れない心。 静けさを怖がるふたりが、湯気の向こうで少しずつ寄り添っていく、獣人×ヒトの異世界恋愛譚。 [こちらは以前あげていた「やわはだの、お風呂やさん」の改稿ver.になります]

数年振りに再会した幼馴染のお兄ちゃんが、お兄ちゃんじゃなくなった日

プリオネ
恋愛
田舎町から上京したこの春、5歳年上の近所の幼馴染「さわ兄」と再会した新社会人の伊織。同じく昔一緒に遊んだ友達の家に遊びに行くため東京から千葉へ2人で移動する事になるが、その道中で今まで意識した事の無かったさわ兄の言動に初めて違和感を覚える。そしてその夜、ハプニングが起きて………。 春にぴったりの、さらっと読める短編ラブストーリー。※Rシーンは無いに等しいです※スマホがまだない時代設定です。

ダメンズな彼から離れようとしたら、なんか執着されたお話

下菊みこと
恋愛
ソフトヤンデレに捕まるお話。 あるいはダメンズが努力の末スパダリになるお話。 小説家になろう様でも投稿しています。 御都合主義のハッピーエンドのSSです。

罰ゲームで告白されたはずなのに、再会した元カレがヤンデレ化していたのですが

星咲ユキノ
恋愛
三原菜々香(25)は、初恋相手に罰ゲームで告白されたトラウマのせいで、恋愛に消極的になっていた。ある日、職場の先輩に連れていかれた合コンで、その初恋相手の吉川遥希(25)と再会するが、何故かヤンデレ化していて…。 1話完結です。 遥希視点、追記しました。(2025.1.20) ムーンライトノベルズにも掲載しています。

憐れな妻は龍の夫から逃れられない

向水白音
恋愛
龍の夫ヤトと人間の妻アズサ。夫婦は新年の儀を行うべく、二人きりで山の中の館にいた。新婚夫婦が寝室で二人きり、何も起きないわけなく……。独占欲つよつよヤンデレ気味な夫が妻を愛でる作品です。そこに愛はあります。ムーンライトノベルズにも掲載しています。

騎士団長のアレは誰が手に入れるのか!?

うさぎくま
恋愛
黄金のようだと言われるほどに濁りがない金色の瞳。肩より少し短いくらいの、いい塩梅で切り揃えられた柔らかく靡く金色の髪。甘やかな声で、誰もが振り返る美男子であり、屈強な肉体美、魔力、剣技、男の象徴も立派、全てが完璧な騎士団長ギルバルドが、遅い初恋に落ち、男心を振り回される物語。 濃厚で甘やかな『性』やり取りを楽しんで頂けたら幸いです!

処理中です...