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41 失恋のヨウルプッキは、今日もため息をつきながらファンレターを整理する。因みに、トナカイさんはトナカイちゃんとデートを楽しんでいます
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魔力が暴走するのを防ぐための緊急措置のためとはいえ、心の中に住み着いた愛する人との夢のような交わりを思い出す。
はぁ
仕事中に手を止めて、窓の外をみてぼんやりしてしまう。上司が途端に目を吊り上げて何かを言って来るが耳に入ってこない。
あれから数ヶ月。今年のクリスマスのためのガチャの準備が徐々に忙しくなり、バイヤーの同僚の髪が薄くなったなあなんてしみじみ見つめていた。
はぁ……
そっと乾いた唇に、がさがさで手入れをしていないごつい指先を当てる。
まるで、秋のベンチに座る憂いを帯びた乙女のようだ。
「でっかい筋肉だるまが気持ち悪ッ」
「なあ、ヨウルプッキのやつ、何があったんだ?」
「さあなあ。去年のクリスマスガチャのラストワン賞を放棄状態で音信不通になったから、上司から大目玉くらって減俸処分されたんだったか?」
「あいつもとうとう……過労で、メンタルヤバイかも?」
「俺たちだって……。明日は我が身だぞ?」
「他にいい仕事ないかなあ……」
と、周囲からはドン引きされたり心配されたりしていた。
※※※※
「評価☆5 去年いただいたグッズで彼女と仲直りできました。実は、次のクリスマスの日に結婚する事が決まりました。ありがとうございます」
「評価☆5 さんたさんへ。いつもおしごとがんばってくれて、ありがとう。こんどは、わたしのところに、おもちゃをもってきてね」
「評価☆5 ガチャから出て来たネコミミスーツを着用した妻と、数年ぶりに燃えるように愛し合いもうすぐ子供が生まれます。恥じらう妻のなんとかわいらしいことかと、年甲斐もなく毎日妻を目で追ってしまいます。長年子供が出来ませんでしたのでぎくしゃくしていた夫婦仲が良くなり、跡継ぎも出来てホッとしております。少ないですが、同封の小切手をどうか皆様でお使いください」
「評価☆3 さんたさん。ぼくをヒーローにしてくださいね。ぜったいですよ! まいとしヒーローにしてくれないので☆3ですっ!」
年齢によって内容に違和感を感じるが、サンタたちは全て読み、それぞれに返事をしたためていく。それだけで日が暮れてしまい、要望の内容によっては、研究施設にそれを送って新商品の開発を依頼するのだ。
世間一般的に知られているサンタさんの持ってくるガチャの中身は、一定の条件下ではあるが、なんでも望みが叶えられるという代物だ。
当選したカップルたちは、皆一様に、具体的内容については口を閉ざしていた。
「あの時、二人にとって必要で、望んでいた物が与えられた」
とだけ語り、恋人との絆が深まり幸せになっている様子だけが世界中に広まったのである。
余談ではあるが、寄付金や小切手などが末端のサンタさんの手元に何らかの形で還元される事はない。
※※※※
「おい! ヨウルプッキ、お前一体何をやらかしたんだ!」
「お呼びでしょうか?」
「本部にクレームが入ったんだ! 昨年のクリスマスのラストワン賞、お前トラブルなく終わったってあの時言ってたよな? 減俸処分だけはしたが、本当は何をやらかしてたんだっ!」
「ライストワン賞……」
そう聞き、途端に蘇る愛しい人の微笑みと、二度と触れる事の出来ない、見る事すら叶わない姿を思い出して目が潤む。
「う……グスッ」
突然、感情失禁を起こし鼻をすすりだす大男の姿に周囲はドン引きだ。
上司も、最近のヨウルプッキの様子が尋常ではない事に気づいていた。涙を流しそうになった彼の様子を目の当たりにしてひるむ。ここで頭ごなしに言えば、労働基準組織委員会が動く自体になりかねないと、お腹がぎゅるぎゅる緩んで来て内心冷や汗が出た。
しかしながら、どうしてもなんとかしないといけないクレームだ。
無視できないほどの支援金を頂いているアールトネン伯爵家からのもので、早急に担当であったヨウルプッキが呼ばれたのだ。
──そうだ、こいつを直接先様に向かわせよう。その後何があっても、先方の言動が原因であると言えば……。なに、平民にもお優しいと聞く。大丈夫だろう。大丈夫だよな? 処刑されたりせんよな? きっと大丈夫だ、うん。万が一の事があっても恨まないでくれよな?
自分に甘く他人に厳しいという、部下に嫌われる典型の上司の考えは一瞬で決まった。
「と、とにかく、だな。ガチャの権利がまだあるにも拘らず、放置されている事にお怒りのようだ。誠心誠意謝罪して残りのガチャをさっさと回してもらってこい。なんなら、満足されるまで、お詫びとしてガチャの回数を増やしてもかまわん。いいな?」
「ガチャ? 回す?」
ずびっと、鼻を一息した後、ガチャという言葉に反応したヨウルプッキはどう言う事かと首を傾げた。
「そうだ。こ、これは由々しき問題でもあるんだ。俺も行って頭を下げてやりたいがここを離れるわけにはいかん。誠心誠意お詫びして来い。いいな?」
申し訳なさそうに見える上司の顔をぼんやりと見て、もう一度彼女に会えるかもしれないと思ったヨウルプッキは、満面の笑みを浮かべた。
二つ返事で何度も勢いよく頷き、上司に対して感謝の意まで示すヨウルプッキはとうとう壊れたのかと心配される。
「ヨウルプッキ先輩、大丈夫かな?」
「高位貴族にお詫びしに行くなんて……気の毒に……」
「とどめになるかもな。怒られたのに笑ってたぞ……」
スキップをせんばかりに嬉しそうに立ち去っていった彼の姿を見て、残された職員たちはいざとなれば助けに行こうと決意していたのであった。
はぁ
仕事中に手を止めて、窓の外をみてぼんやりしてしまう。上司が途端に目を吊り上げて何かを言って来るが耳に入ってこない。
あれから数ヶ月。今年のクリスマスのためのガチャの準備が徐々に忙しくなり、バイヤーの同僚の髪が薄くなったなあなんてしみじみ見つめていた。
はぁ……
そっと乾いた唇に、がさがさで手入れをしていないごつい指先を当てる。
まるで、秋のベンチに座る憂いを帯びた乙女のようだ。
「でっかい筋肉だるまが気持ち悪ッ」
「なあ、ヨウルプッキのやつ、何があったんだ?」
「さあなあ。去年のクリスマスガチャのラストワン賞を放棄状態で音信不通になったから、上司から大目玉くらって減俸処分されたんだったか?」
「あいつもとうとう……過労で、メンタルヤバイかも?」
「俺たちだって……。明日は我が身だぞ?」
「他にいい仕事ないかなあ……」
と、周囲からはドン引きされたり心配されたりしていた。
※※※※
「評価☆5 去年いただいたグッズで彼女と仲直りできました。実は、次のクリスマスの日に結婚する事が決まりました。ありがとうございます」
「評価☆5 さんたさんへ。いつもおしごとがんばってくれて、ありがとう。こんどは、わたしのところに、おもちゃをもってきてね」
「評価☆5 ガチャから出て来たネコミミスーツを着用した妻と、数年ぶりに燃えるように愛し合いもうすぐ子供が生まれます。恥じらう妻のなんとかわいらしいことかと、年甲斐もなく毎日妻を目で追ってしまいます。長年子供が出来ませんでしたのでぎくしゃくしていた夫婦仲が良くなり、跡継ぎも出来てホッとしております。少ないですが、同封の小切手をどうか皆様でお使いください」
「評価☆3 さんたさん。ぼくをヒーローにしてくださいね。ぜったいですよ! まいとしヒーローにしてくれないので☆3ですっ!」
年齢によって内容に違和感を感じるが、サンタたちは全て読み、それぞれに返事をしたためていく。それだけで日が暮れてしまい、要望の内容によっては、研究施設にそれを送って新商品の開発を依頼するのだ。
世間一般的に知られているサンタさんの持ってくるガチャの中身は、一定の条件下ではあるが、なんでも望みが叶えられるという代物だ。
当選したカップルたちは、皆一様に、具体的内容については口を閉ざしていた。
「あの時、二人にとって必要で、望んでいた物が与えられた」
とだけ語り、恋人との絆が深まり幸せになっている様子だけが世界中に広まったのである。
余談ではあるが、寄付金や小切手などが末端のサンタさんの手元に何らかの形で還元される事はない。
※※※※
「おい! ヨウルプッキ、お前一体何をやらかしたんだ!」
「お呼びでしょうか?」
「本部にクレームが入ったんだ! 昨年のクリスマスのラストワン賞、お前トラブルなく終わったってあの時言ってたよな? 減俸処分だけはしたが、本当は何をやらかしてたんだっ!」
「ライストワン賞……」
そう聞き、途端に蘇る愛しい人の微笑みと、二度と触れる事の出来ない、見る事すら叶わない姿を思い出して目が潤む。
「う……グスッ」
突然、感情失禁を起こし鼻をすすりだす大男の姿に周囲はドン引きだ。
上司も、最近のヨウルプッキの様子が尋常ではない事に気づいていた。涙を流しそうになった彼の様子を目の当たりにしてひるむ。ここで頭ごなしに言えば、労働基準組織委員会が動く自体になりかねないと、お腹がぎゅるぎゅる緩んで来て内心冷や汗が出た。
しかしながら、どうしてもなんとかしないといけないクレームだ。
無視できないほどの支援金を頂いているアールトネン伯爵家からのもので、早急に担当であったヨウルプッキが呼ばれたのだ。
──そうだ、こいつを直接先様に向かわせよう。その後何があっても、先方の言動が原因であると言えば……。なに、平民にもお優しいと聞く。大丈夫だろう。大丈夫だよな? 処刑されたりせんよな? きっと大丈夫だ、うん。万が一の事があっても恨まないでくれよな?
自分に甘く他人に厳しいという、部下に嫌われる典型の上司の考えは一瞬で決まった。
「と、とにかく、だな。ガチャの権利がまだあるにも拘らず、放置されている事にお怒りのようだ。誠心誠意謝罪して残りのガチャをさっさと回してもらってこい。なんなら、満足されるまで、お詫びとしてガチャの回数を増やしてもかまわん。いいな?」
「ガチャ? 回す?」
ずびっと、鼻を一息した後、ガチャという言葉に反応したヨウルプッキはどう言う事かと首を傾げた。
「そうだ。こ、これは由々しき問題でもあるんだ。俺も行って頭を下げてやりたいがここを離れるわけにはいかん。誠心誠意お詫びして来い。いいな?」
申し訳なさそうに見える上司の顔をぼんやりと見て、もう一度彼女に会えるかもしれないと思ったヨウルプッキは、満面の笑みを浮かべた。
二つ返事で何度も勢いよく頷き、上司に対して感謝の意まで示すヨウルプッキはとうとう壊れたのかと心配される。
「ヨウルプッキ先輩、大丈夫かな?」
「高位貴族にお詫びしに行くなんて……気の毒に……」
「とどめになるかもな。怒られたのに笑ってたぞ……」
スキップをせんばかりに嬉しそうに立ち去っていった彼の姿を見て、残された職員たちはいざとなれば助けに行こうと決意していたのであった。
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