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31 女伯爵としての最初の仕事①
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ざまあ開始です。恋も、もっと始めていきます。
「皆、わたくしのために昏倒させるだけに留めてくれて感謝します」
シンディは今回の父たちによるアールトネン伯爵家の乗っ取り及び虐待などの犯罪被害者である彼らに、誰も死なさないように願い続けた。
彼女の味方となった者たちの心情は複雑ではあったが、あのような人間たちの血で、彼らの手が汚れる事だけは避けたかったのだ。
そもそも、次期伯爵としての力量不足であった自分の罪であると彼女は考えており、上に立つものとして、手を汚すのは自分だけでいいと決意していた。
ターニャと知り合ってから、彼女に施された、次期伯爵になるために必要な教育の中で、人には言えない裏の話なども聞いていた。
『シンディ、あんたは優しすぎる。あんたのその慈悲が、時に侮辱にも感じる者もいるだろう。だけど、あんたはそれでいいんだと思う。私とは違うからね。あんたはあんたのやり方でやっていきな』
ターニャは必要であれば冷酷すぎる判断をする事もあったがそれを恥じてはいない。
彼女には彼女の、シンディにはシンディのやり方があり、ターニャはシンディの理念を支持したのである。
『まっすぐ前を向くんだ。そして、見事、この家を取り戻した時にその結果がどうなっても受け止めるんだよ』
シンディはターニャを尊敬しつつも彼女のやり方を模倣しようとは思わなかった。
亡き母に憧れていたけれども、母のやり方をするのも違うと感じていた。
『はい、ターニャ様。わたくしは皆に他者を傷つけさせたくありません。それはとても難しい事なのでしょう。後悔する事もあるかもしれませんが、わたくしは……』
そう言いながらも不安で揺れる。そんな彼女の手をターニャは取った。
『なあに、あんたは一人じゃない。そうだろう?』
『ターニャ様……。はい……はいっ! わたくしには頼もしい皆がいます!』
ターニャは、幼いながらも困難に立ち向かう少女を見て微笑んだのであった。
※※※※
「皆は、今倒れているだろう敵の捕縛と監視等をお願いします。わたくしは……」
シンディは、一同を見渡したあと、父たちのいる扉を見上げた。
「責務を果たして来ます!」
※※※※
ヨウルプッキは、目の前で自分よりも10も年下の小さな少女が、必死に胸を張って周囲の人たちと何かに立ち向かおうとする、その背中をじっと見ていた。
酔った彼女、眠る彼女、微笑み翻弄する彼女、そして、涙をこらえながら必死で立ち上がる彼女の姿に、もう幾度目かわからないほどの恋に落ちていく。
もう目一杯好きになったはずなのに、もっともっと好きになっていく。身分違いだという事は頭では理解している。彼女の方には厚意以外の何もない事も、十分に分かっており、これ以上好きにならないようにしようとしていた。
だけど、そんな自分の小さな決意は、彼女が魅せる一秒毎が、簡単に壊すのだ。
今の彼女からは、強い決意しか感じられない。恐らく、この中には身内がいるのだろう。仲間たちを敢えてここから遠ざけるのは、中の人物が、小賢しいだけの無能ではないからに違いない。
彼女の命を受けて彼女の信頼する者たちが散り散りになった後、二人きりになる。
「ヨウルプッキ様……」
扉にかける指先が、注視しなければならないほど震えている。それは、武者震いか、それとも……。
「僕がここにいます。どうか、振り返らず前を見続けていてください。僕は必ず、貴女の側にいますから」
「……」
正面のドアを見つめたまま、振り返りもせず、小さく彼女の頭が縦に振られる。
「行きます……!」
シンディが扉に手のひらを開けた瞬間、新たなアールトネン女伯爵を歓迎するかのように、重いはずの扉が静かに開いていったのであった。
「皆、わたくしのために昏倒させるだけに留めてくれて感謝します」
シンディは今回の父たちによるアールトネン伯爵家の乗っ取り及び虐待などの犯罪被害者である彼らに、誰も死なさないように願い続けた。
彼女の味方となった者たちの心情は複雑ではあったが、あのような人間たちの血で、彼らの手が汚れる事だけは避けたかったのだ。
そもそも、次期伯爵としての力量不足であった自分の罪であると彼女は考えており、上に立つものとして、手を汚すのは自分だけでいいと決意していた。
ターニャと知り合ってから、彼女に施された、次期伯爵になるために必要な教育の中で、人には言えない裏の話なども聞いていた。
『シンディ、あんたは優しすぎる。あんたのその慈悲が、時に侮辱にも感じる者もいるだろう。だけど、あんたはそれでいいんだと思う。私とは違うからね。あんたはあんたのやり方でやっていきな』
ターニャは必要であれば冷酷すぎる判断をする事もあったがそれを恥じてはいない。
彼女には彼女の、シンディにはシンディのやり方があり、ターニャはシンディの理念を支持したのである。
『まっすぐ前を向くんだ。そして、見事、この家を取り戻した時にその結果がどうなっても受け止めるんだよ』
シンディはターニャを尊敬しつつも彼女のやり方を模倣しようとは思わなかった。
亡き母に憧れていたけれども、母のやり方をするのも違うと感じていた。
『はい、ターニャ様。わたくしは皆に他者を傷つけさせたくありません。それはとても難しい事なのでしょう。後悔する事もあるかもしれませんが、わたくしは……』
そう言いながらも不安で揺れる。そんな彼女の手をターニャは取った。
『なあに、あんたは一人じゃない。そうだろう?』
『ターニャ様……。はい……はいっ! わたくしには頼もしい皆がいます!』
ターニャは、幼いながらも困難に立ち向かう少女を見て微笑んだのであった。
※※※※
「皆は、今倒れているだろう敵の捕縛と監視等をお願いします。わたくしは……」
シンディは、一同を見渡したあと、父たちのいる扉を見上げた。
「責務を果たして来ます!」
※※※※
ヨウルプッキは、目の前で自分よりも10も年下の小さな少女が、必死に胸を張って周囲の人たちと何かに立ち向かおうとする、その背中をじっと見ていた。
酔った彼女、眠る彼女、微笑み翻弄する彼女、そして、涙をこらえながら必死で立ち上がる彼女の姿に、もう幾度目かわからないほどの恋に落ちていく。
もう目一杯好きになったはずなのに、もっともっと好きになっていく。身分違いだという事は頭では理解している。彼女の方には厚意以外の何もない事も、十分に分かっており、これ以上好きにならないようにしようとしていた。
だけど、そんな自分の小さな決意は、彼女が魅せる一秒毎が、簡単に壊すのだ。
今の彼女からは、強い決意しか感じられない。恐らく、この中には身内がいるのだろう。仲間たちを敢えてここから遠ざけるのは、中の人物が、小賢しいだけの無能ではないからに違いない。
彼女の命を受けて彼女の信頼する者たちが散り散りになった後、二人きりになる。
「ヨウルプッキ様……」
扉にかける指先が、注視しなければならないほど震えている。それは、武者震いか、それとも……。
「僕がここにいます。どうか、振り返らず前を見続けていてください。僕は必ず、貴女の側にいますから」
「……」
正面のドアを見つめたまま、振り返りもせず、小さく彼女の頭が縦に振られる。
「行きます……!」
シンディが扉に手のひらを開けた瞬間、新たなアールトネン女伯爵を歓迎するかのように、重いはずの扉が静かに開いていったのであった。
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