【完結】【R18】妹に婚約者を寝取られ断罪されたわたくし。~連行する騎士様、監禁先で蹂躙してくださいませ【本編完結。番外編7つ】

にじくす まさしよ

文字の大きさ
10 / 33

目が覚めるとそこには筋肉があったようです

しおりを挟む
 なんだろう、ゆらゆらと温かい水面をただよっているかのように心地いい。うっとりとその気持ちよさに体を預けていると、とん、と背中に何かが当たった。

──なに……?

 徐々に意識が浮上しているが、体が主だるくて腕一本動かせない。どうやら、柔らかなベッドに横たわっているようだ。

──ああ、そういえば苦しくて気を失って……。そうしたらナイトハルト様の声が遠くに聞こえて。ああ、これは夢ね。あんな風に声を荒げて焦るように名前を呼んでくださるなんて有り得ないもの。

 侍女だろうか、おそらく、体を締め付けられて苦しい体を解放するべくドレスがゆっくりとはだけられた。目も重くて開けられない。侍女には小さな頃から風呂も全て任せている。折角楽な服装に着替えさせてくれるというなら、拒否する事もあるまい。

──あら? 新人の侍女なのかしら? うーん、元王子の婚約者で侯爵令嬢とはいえ罪人相手には上級侍女や下働きは遣わせないのね。ああ、そうじゃない、先ずは、しっかりと縫い付けられた糸を切って。ほら、無理やりひっぱるからレースや縫製が破れたじゃないの。まあいいわ。やっと息が吸えて来た。あら?

 くるりと体を反転させられる。要するに腹ばいの状態だ。

──ああ、コルセットの背中の紐をほどくのね。こんな180度回転させるなんて……。もうちょっとましな侍女くらいよこしなさいよ……。

 紐をほどき、クロスさせている部分を緩めればそれでいいのに、一つ一つ穴から紐を外されている。

──一体、何分かける気よ。もう、がーっと広げて行ったらすっぽりと抜けるでしょう? まったく。目が覚めたらこの子をきちんと教育してあげないと、この子はこのままだと、今後の勤務が大変でしょうね。

「ん……、はぁ……」

 とはいえ、すっかり体幹の締め付けがなくなり、やっと一息つけた。まあ、不器用だったけれど、お礼を言わないといけないだろう。

「あ、あり……、がと」

 先ほどまで締め付けられ、疲労困憊で咽がカラカラだ。やっとの思いでお礼を言うと、コルセットの紐に悪戦苦闘してわたくしの腰に馬乗りになってしまっていた人物がびくりと体をゆらしたようだ。


──貴族の腰に乗るだなんて。さては、侍女ではないわね、平民の気が利かない下女なのかも。それにしても、随分体の大きな下女ねえ……。まあ、重量のあるドレス付きのわたくしを抱えるのだから、逞しい女の人が担当になったのでしょう。

 やっと、体の上からどいたのだろう。重かった腰が軽くなった。息が出来るようになり、わたくしもようやく体を動かせるようだ。ゆっくりと上に向こうと体を反転させた。

「……! あ、あ! 私は、その、そんなつもりではっ! し、失礼っ!」
「え……?」

 視線を、下女だと思っていた人物のほうに投げかけると、顔を真っ赤にして目を大きな手で覆い、慌てふためくナイトハルト様が背を向けてそこにいた。

 わたくしは、まろびでるなだらかな二つの曲線とその先端を隠す事も出来ずに、呆然と彼を見続けたのであった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

【完結】転生したら悪役継母でした

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。 その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。 しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。 絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。 記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。 夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。 ◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆ *旧題:転生したら悪妻でした

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

出来損ないの私がお姉様の婚約者だった王子の呪いを解いてみた結果→

AK
恋愛
「ねえミディア。王子様と結婚してみたくはないかしら?」 ある日、意地の悪い笑顔を浮かべながらお姉様は言った。 お姉様は地味な私と違って公爵家の優秀な長女として、次期国王の最有力候補であった第一王子様と婚約を結んでいた。 しかしその王子様はある日突然不治の病に倒れ、それ以降彼に触れた人は石化して死んでしまう呪いに身を侵されてしまう。 そんは王子様を押し付けるように婚約させられた私だけど、私は光の魔力を有して生まれた聖女だったので、彼のことを救うことができるかもしれないと思った。 お姉様は厄介者と化した王子を押し付けたいだけかもしれないけれど、残念ながらお姉様の思い通りの展開にはさせない。

処理中です...