完結  R18 転生したら、訳ありイケメン騎士様がプロポーズしてきたので、回避したいと思います

にじくす まさしよ

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5 たけのこタイプもあるが、私は断然きのこ。異論は認める。

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 ボウウ様は、14歳のころから騎士団の下っ端として実績を積み上げてきた。その頃は第三王子の側近などではなく、実家のウォータプルフ伯爵の5男という、中途半端以下の存在としてこき使われていた。そんな、下働きと言う名の、パワハラに耐えて訓練と称した先輩騎士たちのうっぷん晴らしのしごきで疲労困憊な毎日だったという。

 その頃、とある魔法学者のおじいさんから、若い実験体が欲しいという依頼が騎士団に舞い込んだことで、やっと木剣を2時間振り続けられるようになった下っ端騎士たちが集められる。

 どんな実験なのかわからず、このまま逃亡しようと囁く仲間もいた。だが、見習いであっても騎士として訓練に参加している以上、逃亡は禁忌事項なのだ。即時に捕らえられ、厳しい処罰が与えられる。

 それほど危険性はないと聞き、本当かとざわついていると、魔法学者とともに私が現れた。らしい。
 おっさんだけでなく、かわいい(かどうかは別として)女の子が現れて、皆に笑顔を向けてくれた。らしい。
 女の子なんていない騎士団の中で、その子はあっという間に皆のアイドルとしてあがめられた。らしい。
 自分の推しアイドルが、上目遣い(かどうかは別として)に、首をかしげ(たかどうかは不明)、これをやってくれたら嬉しいな♡と、ひとりひとりの手を取った。らしい。
 
 14歳のころは、あっちこっちの知人のおじさまたちから引っ張りだこで、色んな魔法のお試しのお手伝いをしていた。私自身も、提案された魔法や、自分が構想を練ったものの実験とその結果に興味があったから参加していた。

 おじさまたちに、こうすれば非検体たちが真面目にやってくれるからと押し切られて、恥ずかしくて嫌だったけど、フリフリのかわいいワンピースにツインテールで、やたらと鼻息の荒い男の子たちと☆(ゝω・)vキャピと握手会をした記憶はある。ねっちょり手を握ってくる気持ち悪いなあと思う子もいたけれど、研究のためだとがんばった。

 あと、握手会をすれば、おじさまたちから、並んでも手に入らない限定スイーツを、どれでも好きなだけ貰えると聞いたから。

 一日10個しか作られない、厳選に厳選を重ねた王室御用達スイーツ店のイチゴのショートケーキだ。それだけなら、別に食べなくてもいい。うちでも美味しいイチゴショートなんていくらでも食べられるから。でも、どうしても食べたいおまけがついていたのだ。
 クラッカー生地のくきに、きのこの形をしたチョコレートが刺さっている、前世でよく食べた、きのことたけのこの激しい戦争が繰り返されたアレ。たけのこタイプもあるが、私は断然きのこ。異論は認める。
 とにかく、イチゴのショートケーキよりも、この世界で、その店のそのスイーツでしか味わえないソレのために、私は汗まみれの男の子たちの手を、超ぶりっこになって握りまくった。

 おかげで、あの頃の実験は、非検体のさぼりなんてなくて、ほぼ同一条件下で行えたのも、おじさまがたにとってはホクホクだったと思う。

 ちなみに、その2年後、きのこのアレのスナック菓子が量販されたのは言うまでもない。ヴィンテージはあくまでもイチゴのショートケーキなのだから、おまけのお菓子なんて要望があれば簡単に流通したというわけだ。

 私は、一体なにをやったんだと、魂というか大事ななにかが少し削れた、そんな気がする黒歴史でもある。


 本題からかなりそれた。その実験内容は、前世のEMS腹筋ベルトを参考に、魔法による雷属性の電気刺激において、過度な腹筋をせずとも見事なシックスパックを作ることが可能かどうかを、あちこちで試していた。そのための非検体に、騎士見習いもいたような気がするけど、1000人くらいやったし覚えていない。

 そういえば、ひとりだけえらく効果がずば抜けて良かった少年騎士がいた。名前は憶えていないが、腹筋のかけらくらいしかなかったのに、実験期間3か月でシックスパックが出来たのだ。

「あー、あの時の、おじさまが思った以上の結果が得られたってえらく喜んだ非検たぃ、じゃなかった協力者の少年。あなただったの?」
「ああ」

 これは大発見だと、おじいちゃんやおじさまたちが張り切ってしまって、出力を上げすぎたために、電気びりびりマシーンになっちゃって、筋肉痛がひどくなり、痛みと筋肉の異常な収縮によって歩けなくという重大な副反応が報告されたために、この実験は頓挫したんだった。

 今は、肩こりをほぐすくらいの低電流のものしか流通していないが、この商品化が男性のみならず女性にも大ヒットして私には年間とほうもないマージンが入ってきている。

 そんな非検体のひとりが、目の前の騎士の鏡のような、見事な体格の持ちぬしだったとは。言うなれば、彼の腹筋は、私の子供も同然。

 なんともまあ、世間って狭いのねぇ。

 なんて、どこかの親戚のおばちゃんのような感慨深いまなざしを彼に向ける。

「その実験のおかげで、皆しごきにも耐えられる強靭な肉体を得られたんだ。その時に、腹筋だけではダメだと、インナーマッスルや、手足の普段使わない筋肉を鍛えて体幹バランスを整えるために、基礎トレーニングや食事のことまで教えてくれた。俺と同い年の訓練とは程遠い女の子が、俺達騎士のために、無関係に見える内容であっても、それが効率が良いことは2週間もすればわかった。俺たちは、その女の子の指示に従っただけなんだ」

「当時の私は、とにかく効率重視で、食事制限やトレーニングは厳しいメニューにしてたと思うけど……よく頑張ったね」

 うっかり、敬語を忘れてしまった。だが、私の誉め言葉に、彼はぱあっと本当にうれしそうに笑った。

 う、イケメンの満面の笑顔とかまぶしすぎる。

「ああ。実験が終わるころには成果が見られたから、その期間が終わってからも続けた。キヨクが来なくなったから、ふてくされて泣き言を言ってさぼろうとするやつもいたが、その頃の俺達よりも体力も体格も劣る先輩たちを見返したかったから頑張ったんだ。そのおかげで、実験に参加した俺達は騎士団の中でも早く出世できたし、俺は第三王子の護衛という名誉ある任務に就くことができた。これも全て、キヨクのおかげだ。皆、感謝している。勿論、俺も」

「そんな。感謝だなんて(私はきのこのアレのため、マージンのためにやっただけだし)。でも、皆様のお役に立てて良かったですわ」
「俺の騎士としての土台を作ってくれた私に感謝したのもあるが、その、握手をした時に、俺をじっと見て『頑張ってくださいね』って言ってくれただろう?」
「ええ。折角、おじさまがたの研究にご協力くださっているんですもの」

 ごめんだけど覚えてない。適当に、テンプレのそんなようなことは言い続けたと思う。

「あの笑顔の君が忘れられなくて……思えば、俺の初恋だったんだと思う。あ、今の成長したキヨクも綺麗でとても魅力的だけど、当時の清らかそのもののキヨクは、天使みたいで、とてもかわいかった」

 うぇ? 初恋の相手はヒロインちゃんのはず。そんな。イヨウくんと同じく、ゲームが始まる前に、知らなかったこととはいえ、ここにも私がやらかしてしまった相手がいたのかと、口をぽかんと開けてしまった。
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