完結  R18 転生したら、訳ありイケメン騎士様がプロポーズしてきたので、回避したいと思います

にじくす まさしよ

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14 流石にちょっと……

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 珍しく、彼の手を取ったからか、彼は、とまどいつつもはにかんだ。それがなんとなく、いつもの素敵イケメンじゃなくて、かわいく思えた。いつもの通りの笑顔なんだけど、うきうきしているというか。

 私だってそれほど鈍感というわけではない。どちらかというと、前世では他人の顔色を見すぎてああなったのだから、彼が心から私を大事に思ってくれていることはよくわかっていたのだ。ただ、色々、ありすぎて、そういう彼の気持ちに気づかないふりをして、あーだこーだと難癖つけて、彼から離れて行ってくれたらって思っていた。
 ほぼ誤解だったわけだけど、それらが誤解だとわかってからは、彼の直球の愛情表現がとても嬉しかった。でも、今更、態度を変えるなんて虫が良すぎるしって、くだらない意地を張っていたのかもしれない。

 あとひとつ、ゲームの設定がどうしても気になる事があるけれど、短詩のいうように、まずは彼の気持ちと心から向き合おうと思う。

「ボウウ様……」

 とはいうものの、なんと切り出そうか。彼の名前を口にしてから、数秒、一分、五分と経過した。変に緊張のこもった雰囲気になり、今にもピィンと張りつめた糸が切れそう。

「ごめんなさいっ!」
「すいまないっ!」

 私は膠着状態をなんとかしようと、今まで誤解していたこと、思い込みで遠ざかっていたことを謝罪しようと頭を下げた。ところが、ほぼ同時に彼も私に謝ったのである。

「え?」
「え?」

 顔をあげて彼を見ると、眉がㇵの字のような形になり、目が潤んでいる。まるで、悪いことをして叱られている子犬のようで、そんな表情もイケメンならとてもかっこかわいい。

「え、と。ボウウ様?」

 彼が私に、なにを謝ることがあるのだろう。首を傾げると、バツが悪そうに彼が話し始めた。

「聖女様から全部聞いたんだろう? 本を全部読んだっていう嘘のことだけでなく」
「え? ええ……」

 短詩からは、私の彼への気持ちがわからないと悩んでいることを聞いた。だからこそ、今彼と一緒にいるのだから。いや、彼が気にしている本のことは、そもそも私の読んだ本を全部読んでなくてほっとしたんだってば。

「キヨクと出会ってから、キヨク一筋だって言いながら、その、騎士の連中とそういう店に行って浮気したことも」

「あー……」

 あ、そっち?

 この世界では、前世のようなAVや本がないので、そういう教材がない。だから、実地か見るかしないと、女性をリードする男性は何も知らないままになってしまうのだ。18にもなって清らかな男性というものはほとんどいないのだから、そんなもんだと思う。

 ただ、女の子、特に奥手で夢見る令嬢には、そういうことすら耐えがたいタイプもいる。彼にとって、私はそういうタイプで、浮気や不倫と同じようなことをしたんだと自分を責めていたみたい。

「あの、ボウウ様。その事も含めて、色々お互いに誤解があると思うんです。とりあえず、本のこととその件については、私と出会う前のことですし、私は気になりませんわ。ですので、お気遣いなく」
「気、気にならないのか?」

 あら? てっきりホッとすると思ったんだけど、ボウウ様の反応は、びっくりしたような、残念なようなものだった。もしかして、やきもちを焼くことすらない、無関心な存在だと、あらぬ思い込みをしたのかも。

「あ、全くというわけではありませんよ? ただ、殿方は経験を積むためにそういうところに行くことは、マナーのようなものだと聞いておりますから」
「そうか。とにかく、あの頃は、新人騎士の洗礼というか。断れなかったんだ。あれからは、そういう場所になんかいってない。信じてくれ」
「あ、それ以上は、絶対に具体的には言わないでくださいね。聞いてしまうと、流石にちょっと……(ドン引きするから)」
「そうだな。うん、過去のことは言ってはいけないと皆言っていた。確かに、流石にちょっと……(キヨクに本気で汚らわしいって泣かれて嫌われてしまう)」

 ボウウ様のそういう経験は、過去にその方面のプロに依頼しようとしてなんとなく察していた。プロでも尻込みする彼の設定に、ハニトラはすることもできなかったけど。

「そうじゃなくて、私、ボウウ様のことを誤解していたみたいで」
「誤解?」

 私は、前世やゲームのことは話せないから、過去に彼が一目ぼれした「私」は、おじいちゃんやおじさまたちに言われてしていた演技なのだと伝えた。

「そうなのか?」
「ええ。ですから、あの頃のあなたの理想の女の子には一生なれないんです。あれは、本当に夢のような泡沫のようなもので。ボウウ様も、私がああいうキャラじゃないことを、もうわかっておられますよね? どちらかというと、聖女様のほうがあなたの理想そのものだから、本当の私に幻滅される前に、穏便に離れようとしていました……。今の私を、あんなにも大切にしてくれていたのに、あなたの気持ちを信じ切れずに、勝手に思い込んで離れなきゃって思っていたんです。私のほうが、大ウソつきで、あなたの誠実さに胡坐をかいて、酷いことをしていたんです。ごめんなさい。もう、嫌になりましたよね?」

 自分で言ってて情けなさすぎる。涙が出そうなほど、鼻の奥が痛くて瞼が熱い。そして、彼から本当に「幻滅した」って言われて、このまま婚約破棄されるかもと思うと、胸が苦しい。でも、彼の真剣な気持ちを弄んだり、ゲームにかこつけて馬鹿にしていたようなもののだから、そうされて当然なのだ。

 こんな女、誰だって嫌だろう。

 彼の顔を見ていなきゃいけないのに、うつむいてしまった。必死に涙がでそうになるのをこらえていると、彼にぎゅっと抱きしめられたのだった。

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