2 / 41
1 今日は家族とレストラン
しおりを挟む
「剪おにーちゃーん! はやく、はやく!」
「華蓮、ひっぱるなって。慌てなくても大丈夫だろ?」
「だって~!」
再婚同士の義父と母はすでにエレベーターの前で並んで待っている。私はウキウキした気分で、義兄の手をぐいぐいひっぱって両親の元に向かっていた。
※※※※
両親は大のバイク好き。ツーリングで知り合ったらしい。お互いにパートナーを亡くしていた二人は、意気投合して、私が10才の時に再婚した。
私が産まれる前には父が亡くなっていたから、ずっと寂しくて、カッコよくて優しい義父にすぐに懐いた。そして、頼もしくてとってもカッコいい5つ年上の義兄が出来たのである。
お互い、両親がバイク由来の名前を付けたせいで、からかわれたりしたことがある。私はまだ読めるしそこそこ受け入れてもらえたのだけど、義兄は一時期は改名を真剣に考えたそうだ。どうやら、亡くなったお母さんもバイクが好きで、この名前にしたらしい。形見のようなその名前が重苦しくて、いつもからかわれるのが嫌でたまらないと聞いたのは、一緒に住むようになって暫くしてからだ。
でも、私が出会って間もない頃に
『えへへ。バイクのお名前かっこいい! あのね、私はカレンっていうの。NX50っていう可愛いバイクなんだって。お兄ちゃんはカタナでしょう? お揃いね!』
って、無邪気に笑ってそう言ったから名前にこだわっているのが馬鹿馬鹿しく感じて、結局改名せずに過ごしている。
勿論私たちもバイクが好きだ。だから、免許が取れたらまずは自分の名前のバイクを買う予定。でも、危険も多いから10代の内はダメだって言われている。18才が成人になったっていうのにつまんない。早く20才になりたいなあ。
義兄はカタナじゃなくてCBR1000RRファイヤーブレードという真っ赤なバイクに乗って……はいない。いつか乗りたいと憧れていて、実際はSV650 ABS。
『カレンにはまだ早い。俺の後ろで我慢しとけ』
私がまだバイクの許可がおりなくて、ぶぅって頬を膨らませて文句いうと、もう少しでふたり乗りの免許が取れるから私とタンデムツーリングしてくれるって約束してくれた。
私が150センチしかないから、背の低い私でも乗りやすいバイクにしてくれたの。
『ホントに? 約束だよ? 絶対、ぜーったいだよ?』
『わかった、わかったから。ほら、プリンやるから機嫌直せ』
コンビニで買ってきてくれたプリンをふたりで食べながら、最初はどこに行こうかなんてはしゃいで話した。
とっても楽しみで、義兄のふたり乗りの免許取得が待ち遠しい。
※※※※
今日は、私が難関の高校に合格したから滅多にこない高級レストランにやって来た。テレビでも何度も取り上げられていて、落ち着いた大人たちがデートにも使うような5つ星レストランらしい。
義父の会社の上司が予約していたみたいなんだけど、急用で来れなくなり私の高校受験の合格祝いにって代わりに来させてもらえる事になったようだ。
キャンセル料全額だし目出度いから無料でいいって言ってくれた太っ腹な人。義父の会社のBBQで会った事のあるその上司は、恰幅が良くて明るい感じのおじさんだった。後日きちんとお礼を言いに行こうって思ってる。
楽しい一家団欒のひと時。一番賑やかなのは私たち──というより私だけのようだ。はしゃぎすぎた事に気付いて恥ずかしくなり口を閉じた。そんな私を見下ろして笑っている義兄と一緒に大人しく両親と合流する。
綺麗で、ライトもなんだか高級そうな広いエレベーターの中には、私たち4人と、お金持ちっぽい3人家族がいた。なんというかとても綺麗な親子で、私の合格した高校の制服を女の子が着ていた。なんだか嬉しくなってじろじろ見てしまう。
「……? なにか?」
声もとっても綺麗でうっとりしてぼうっとなる。私はまさか声を掛けられるなんて思わなかったから、小さな声ですみませんっていうのが精一杯だった。
すると、バツが悪くなって委縮した私の肩に義兄が手を置いた。
「妹が不躾に見てしまいすみません。その制服……あなたの通う高校の受験に合格したのでつい見てしまったようです」
「まぁ、本当に? それはおめでとうございます。じゃあ、春から私の後輩なのね?」
叱られたり眉を顰められ嫌がられるかと思ったけれど、そんな事はなかった。春から先輩になるその人は、にっこり微笑んで「よろしくね」って握手をしてくれて嬉しくて幸せな気持ちになる。
そして、沈黙するのもおかしく感じてしまって、義兄と先輩と一緒に他愛のない話をしていると、エレベーターが突然ガタンって音と振動を生じさせた。
体のバランスがおかしくなり、義兄に抱き着くと、しっかり受け止めてくれる。ホッとして、目を恐る恐る開けると、幸い電気は無事なようだった。
「皆、大丈夫か?」
義父が皆の安否を確認すると、誰も倒れたりせず無事だと頷き合う。先輩のお父さんが、全ての階のボタンを急いで光らせた後、緊急ボタンを押した。
今は大分上階に来ている。このまま何かがあれば助からないだろう。でも、最近のエレベーターはしっかりしているし、きっと大丈夫。そう思ってはいても怖くて足が震えて義兄にしがみ付いたのであった。
「華蓮、ひっぱるなって。慌てなくても大丈夫だろ?」
「だって~!」
再婚同士の義父と母はすでにエレベーターの前で並んで待っている。私はウキウキした気分で、義兄の手をぐいぐいひっぱって両親の元に向かっていた。
※※※※
両親は大のバイク好き。ツーリングで知り合ったらしい。お互いにパートナーを亡くしていた二人は、意気投合して、私が10才の時に再婚した。
私が産まれる前には父が亡くなっていたから、ずっと寂しくて、カッコよくて優しい義父にすぐに懐いた。そして、頼もしくてとってもカッコいい5つ年上の義兄が出来たのである。
お互い、両親がバイク由来の名前を付けたせいで、からかわれたりしたことがある。私はまだ読めるしそこそこ受け入れてもらえたのだけど、義兄は一時期は改名を真剣に考えたそうだ。どうやら、亡くなったお母さんもバイクが好きで、この名前にしたらしい。形見のようなその名前が重苦しくて、いつもからかわれるのが嫌でたまらないと聞いたのは、一緒に住むようになって暫くしてからだ。
でも、私が出会って間もない頃に
『えへへ。バイクのお名前かっこいい! あのね、私はカレンっていうの。NX50っていう可愛いバイクなんだって。お兄ちゃんはカタナでしょう? お揃いね!』
って、無邪気に笑ってそう言ったから名前にこだわっているのが馬鹿馬鹿しく感じて、結局改名せずに過ごしている。
勿論私たちもバイクが好きだ。だから、免許が取れたらまずは自分の名前のバイクを買う予定。でも、危険も多いから10代の内はダメだって言われている。18才が成人になったっていうのにつまんない。早く20才になりたいなあ。
義兄はカタナじゃなくてCBR1000RRファイヤーブレードという真っ赤なバイクに乗って……はいない。いつか乗りたいと憧れていて、実際はSV650 ABS。
『カレンにはまだ早い。俺の後ろで我慢しとけ』
私がまだバイクの許可がおりなくて、ぶぅって頬を膨らませて文句いうと、もう少しでふたり乗りの免許が取れるから私とタンデムツーリングしてくれるって約束してくれた。
私が150センチしかないから、背の低い私でも乗りやすいバイクにしてくれたの。
『ホントに? 約束だよ? 絶対、ぜーったいだよ?』
『わかった、わかったから。ほら、プリンやるから機嫌直せ』
コンビニで買ってきてくれたプリンをふたりで食べながら、最初はどこに行こうかなんてはしゃいで話した。
とっても楽しみで、義兄のふたり乗りの免許取得が待ち遠しい。
※※※※
今日は、私が難関の高校に合格したから滅多にこない高級レストランにやって来た。テレビでも何度も取り上げられていて、落ち着いた大人たちがデートにも使うような5つ星レストランらしい。
義父の会社の上司が予約していたみたいなんだけど、急用で来れなくなり私の高校受験の合格祝いにって代わりに来させてもらえる事になったようだ。
キャンセル料全額だし目出度いから無料でいいって言ってくれた太っ腹な人。義父の会社のBBQで会った事のあるその上司は、恰幅が良くて明るい感じのおじさんだった。後日きちんとお礼を言いに行こうって思ってる。
楽しい一家団欒のひと時。一番賑やかなのは私たち──というより私だけのようだ。はしゃぎすぎた事に気付いて恥ずかしくなり口を閉じた。そんな私を見下ろして笑っている義兄と一緒に大人しく両親と合流する。
綺麗で、ライトもなんだか高級そうな広いエレベーターの中には、私たち4人と、お金持ちっぽい3人家族がいた。なんというかとても綺麗な親子で、私の合格した高校の制服を女の子が着ていた。なんだか嬉しくなってじろじろ見てしまう。
「……? なにか?」
声もとっても綺麗でうっとりしてぼうっとなる。私はまさか声を掛けられるなんて思わなかったから、小さな声ですみませんっていうのが精一杯だった。
すると、バツが悪くなって委縮した私の肩に義兄が手を置いた。
「妹が不躾に見てしまいすみません。その制服……あなたの通う高校の受験に合格したのでつい見てしまったようです」
「まぁ、本当に? それはおめでとうございます。じゃあ、春から私の後輩なのね?」
叱られたり眉を顰められ嫌がられるかと思ったけれど、そんな事はなかった。春から先輩になるその人は、にっこり微笑んで「よろしくね」って握手をしてくれて嬉しくて幸せな気持ちになる。
そして、沈黙するのもおかしく感じてしまって、義兄と先輩と一緒に他愛のない話をしていると、エレベーターが突然ガタンって音と振動を生じさせた。
体のバランスがおかしくなり、義兄に抱き着くと、しっかり受け止めてくれる。ホッとして、目を恐る恐る開けると、幸い電気は無事なようだった。
「皆、大丈夫か?」
義父が皆の安否を確認すると、誰も倒れたりせず無事だと頷き合う。先輩のお父さんが、全ての階のボタンを急いで光らせた後、緊急ボタンを押した。
今は大分上階に来ている。このまま何かがあれば助からないだろう。でも、最近のエレベーターはしっかりしているし、きっと大丈夫。そう思ってはいても怖くて足が震えて義兄にしがみ付いたのであった。
4
あなたにおすすめの小説
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
夫が運命の番と出会いました
重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。
だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。
しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
【完結】愛する人はあの人の代わりに私を抱く
紬あおい
恋愛
年上の優しい婚約者は、叶わなかった過去の恋人の代わりに私を抱く。気付かない振りが我慢の限界を超えた時、私は………そして、愛する婚約者や家族達は………悔いのない人生を送れましたか?
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
番ではなくなった私たち
拝詩ルルー
恋愛
アンは薬屋の一人娘だ。ハスキー犬の獣人のラルフとは幼馴染で、彼がアンのことを番だと言って猛烈なアプローチをした結果、二人は晴れて恋人同士になった。
ラルフは恵まれた体躯と素晴らしい剣の腕前から、勇者パーティーにスカウトされ、魔王討伐の旅について行くことに。
──それから二年後。魔王は倒されたが、番の絆を失ってしまったラルフが街に戻って来た。
アンとラルフの恋の行方は……?
※全5話の短編です。
幸せな番が微笑みながら願うこと
矢野りと
恋愛
偉大な竜王に待望の番が見つかったのは10年前のこと。
まだ幼かった番は王宮で真綿に包まれるように大切にされ、成人になる16歳の時に竜王と婚姻を結ぶことが決まっていた。幸せな未来は確定されていたはずだった…。
だが獣人の要素が薄い番の扱いを周りは間違えてしまう。…それは大切に想うがあまりのすれ違いだった。
竜王の番の心は少しづつ追いつめられ蝕まれていく。
※設定はゆるいです。
幼なじみと再会したあなたは、私を忘れてしまった。
クロユキ
恋愛
街の学校に通うルナは同じ同級生のルシアンと交際をしていた。同じクラスでもあり席も隣だったのもあってルシアンから交際を申し込まれた。
そんなある日クラスに転校生が入って来た。
幼い頃一緒に遊んだルシアンを知っている女子だった…その日からルナとルシアンの距離が離れ始めた。
誤字脱字がありますが、読んでもらえたら嬉しいです。
更新不定期です。
よろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる