【完結R18】おまけ召還された不用品の私には、嫌われ者の夫たちがいます

にじくす まさしよ

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2 エレベーターの閉じ込めは安全を守るためで、正常に作動している証拠

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「では、ここで待機しておきましょう。ここには未成年の少女たちもいる。なるべく早く救出して欲しい」

 緊急ボタンで、エレベーター会社と話をした先輩のお父さんによると、閉じ込められているのは、安全装置がきちんと働いている証拠だから落ち着いて救援を待つようにとの事だった。
 ロープが切れて落下しないようにきちんと設計しており、定期メンテナンスを先月したところで異状はなかったらしい。
 空気もきちんと循環されていて、慌てず騒がず、下手に動かずにこの安全な空間で待つようにと指示された。

華蓮カレン、聞いただろう? 大丈夫だよ」
「うん……」

 少しだけほっとして、義兄と顔を見合わせ軽く微笑んだ。両親も手を握り合って不安そうにしている。先輩は、なぜかご両親の側にはいかず、一人佇んでいた。なにやら顔色が悪そうだ。

「あの、先輩……大丈夫ですか?」

 私は、必死にしがみ付いていた義兄の胸から離れ、今にも倒れそうな先輩の側に寄った。手をそっと握ると、氷のように冷たい。

「あ、ええ……。だ、だいじょ……ぶ」

 先輩が目を閉じると、体がゆっくり左右に揺れる。このまま倒れそうだ。

「先輩? しっかり! おにいちゃん、先輩が!」
華蓮カレン? どうした?」

 その時、先輩の足元から閃光が発せられた。あまりの眩しさに目を閉じる。

 私と先輩はびっくりして抱き合った。そして、そのまま光に飲まれていく。眩しいはずなのに暗いような奇妙な感覚が私を襲い、体がすーっと落下していくような気持ち悪さに見舞われた。

「え? なに? やだ! なにこれ! やだやだやだやだっ!」
「きゃあ! なんなの? いやあ!」

 まるで先輩とふたりしかいないような気がする。遠くで義兄の焦ったような怒鳴り声が私の耳に届いた。

華蓮カレン! 華蓮カレン!! くそっ! どうなってんだ!」
「やだ、やだああああ! おにいちゃん、カタナおにいちゃん! おかあさん! おとうさん! たすけてっ!」

 そして私と先輩は、まるで世界から切り取られたかのように、体が変な空間を移動していくような気がしたのであった。



※※※※


「なんだ、これは? そんな、馬鹿な! おい、華蓮カレン! 今すぐこっちに来いっ!」

 俺は目の前の光景が信じられなかった。ほんの数秒前まで俺の胸の中で震えていた華蓮カレンが、初対面の高校生と共に閃光に包まれるのを見ている事しかできない。
 手を伸ばしても、足がびくともしないため、華蓮カレンの体をこちらに引き寄せる事が叶わない。

 両親たちも何事かとキョロキョロ頭を動かし焦っている。

 嫌な予感がした。そう、まるでこのまま華蓮カレンと会えなくなるような……。

 俺が15才の時に、父が再婚して出来た、たったひとりの義妹。
 母の記憶はとうになく、ずっと父とふたりきりだった。帰ってきてもそれほど会話もない味気ない毎日。
  やがて父が昇進した事で、平日はほとんど顔を合わせることなく夕食をひとりで済ませた。物心着いた時には家事を一通りこなして、学校のもろもろの事も父が必要最低限に携わる程度。中学の頃には達観していて、まるで一人暮らしのようなアパートで過ごしていた。
 休日に、いつも父と行っていたツーリングも行かなくなり、ますます父と会話が無くなった頃に彼女は俺の前に現れた。
  最初は、別にどうでもいいとか思っていたし、俺を煩わさなければいいくらいの認識の単なる小学生。
 けれど、それまでと一変して、家庭という胸がくすぐったいような、振り払いたいような気味の悪さが毎日繰り返されるようになる。表面上は仲良くしなければいけないと思い、新しく出来た義妹には殊更優しく接した。
 すると、どんなつまらない事でも満面の笑顔で嬉しそうにする義妹のその表情が見たくて、俺はことある毎に彼女に構った。
 さみしがりやで、ずっと涙をこらえて母子家庭で我慢してきた小さな女の子だとわかり、ますます放っておけなくなる。
  義妹のためならなんでもしてやりたいと思うようになるのに時間はかからなかった。華蓮カレンを守れる大人になるために、勉強も部活も手を抜かずにきた。

 そんな、俺の大切な義妹が、俺の前から消えて行くなんて信じられない。有り得ないし信じたくない。胸の中から消えない気色悪い何かを追い払うかのように俺は叫んだ。
 
華蓮カレン! ダメだ、行くな!」

 どこに行くというのか。ここはエレベーターの中だ。もうすぐ救助が来て一緒にレストランに行けるはずなのに。だというのに、俺は必死に華蓮カレンに向かって叫び続ける。

 なぜ体が動かないんだ! なんて無力なんだろう。だが、行かせてたまるか……!

「くそ! 動け! 動け! 動けよっ!」

 俺は必死に、視線を華蓮カレンただ一人に向けたまま、役立たずの足に怒鳴る。

ぴくり

 少しだけ、ほんの少しだけ足が反応してくれた。よし、そのまま華蓮カレンを抱きしめて──

 俺の指先が華蓮カレンの肩にかかる。そして、彼女を抱きようせようとした時、エレベーターの中が、一際輝きを放ったのであった。



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