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3 目の前にいたイケメンは金髪で青い瞳の外人でした
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ドシン!
私はいきなり硬い床に尻もちをついた。抱き合っていた先輩も一緒に。
「大丈夫か?」
「あ、ありがとうございます……え?」
すぐに、聞いた事のない男の人の声がして、私の上に乗っかるような形で転んでいる先輩を助け起こした。
私は痛むおしりを撫でながら、誰も手を差し伸べてくれないので一人立ちあがる。太ももの半ばまでスカートが捲り上がっていたので慌てて裾を直した。そして、目の前の先輩の後姿ごしに見える景色に目を見開いた。
「え……?」
先輩も立ち尽くしたまま無言だったし、私もわけがわからないまま突っ立っていた。
「私たちの花嫁。あなたの名前を教えてくれませんか?」
呆然としていると、先輩を助け起こしただろう声の物凄いイケメンが、蕩けるような微笑みで頬を赤らめながら先輩に優しく訊ねていた。上手な日本語を話している。ホテルの人かエレベーターの修理の人かと思いたかったけれど、なんだかその人の恰好が王子さまのようなコスプレだったからそんな事はないだろう。
濃紺のスーツで赤い幅の広いリレーのアンカーがつけるみたいなタスキを斜めにかけていた。かぼちゃパンツじゃなくて、普通のスーツをゴージャスにした感じ。ボタンも金色だったし、タスキをかけていないほうの胸にはキラキラのバッチがつけてある。テレビで見たイギリスの王子様みたい。
「え……? 花嫁? あの、あなたは……ここはいったい……」
先輩の体が震えている。周囲を見ても誰一人として見知った人が他にいないし、エレベーターの中だったというのに、石造りのなんだか暗い部屋だったので怖くて先輩に近づいて手を握った。
「先輩……」
私が先輩に声をかけて手を握った事で、先輩が私の方を向いてくれた。先輩に後ろを向かれた形になった金髪で青い瞳の外国の男性が、眉をしかめて私を少し睨んで来ていたから怖くなる。彫りの深い彼の目は鋭くて、きりっとした眉に、高く鼻筋が通り、薄い唇をきゅっと結んでいるからものすごい迫力を感じた。
外国の人なんて周囲にいないせいもあって、身がすくみすがるように不安な気持ちで先輩の手をぎゅっと握った。お互いの手が冷たくて、でもふたりともお互いしか頼れそうにないから先輩が私に近づいてぎゅっと抱きしめてくれて少しだけホッとする。
「カレンちゃん、だったわよね? 大丈夫?」
「あ、はい。先輩は……」
「私はビィノ……美唯乃よ。私もどこも怪我とかしていないわ。カレンちゃんにこうして触れてお話が出来ると言う事は、夢じゃないのよね?」
「……そうみたいです。お母さんたちはどこに行っちゃったんでしょうか……グスッ、う、うえっ……うー……」
私が泣きだした事で、先輩の目も涙で潤みだす。私たちは、見も知らぬ場所にいきなり来た不安を少しでも取り除くかのようにぎゅっと抱きしめ涙を流した。
私たちが──というよりも、先輩が──泣き出した事でさっきの男性が悲しそうに表情をゆがめた。先輩が落ち着き出したころ、恐る恐るといった具合に再び声を掛けられる。
「すまない、少しいいだろうか? そちらの少女も。どうか、私の話を聞いてはくれないか?」
相手がとても気を遣ってくれているのが分かる。ただ、私の事も含めて言いつつも、先輩が抱きしめている私のほうは全く見ずに先輩だけを視界に入れているから、私じゃなくて、先輩だけを気遣っているのだろう。
「せんぱい……」
「……カレンちゃん。私もわけがわからないけれども、とりあえず話を聞こうと思うの。いいかな?」
私は不安で怖くてたまらない気持ちのまま先輩を見上げた。先輩も不安そうだったけれども、きっと私のために頑張って相手をしようとしてくれているのだろう。
私だって他になにも思い浮かばない。甘えきりで申し訳ないと思いつつ、先輩の言葉に頷いた。
「あの、私たちにも質問があります。どうか、この状況を説明できるのなら、きちんと私たちふたりに話してはもらえませんか?」
「ああ、勿論だとも。もともとそのつもりだ。その少女は予定外なのだが……とりあえず、ここは暗いし座る椅子もない。部屋を移動しよう」
「はい、お願いします」
やはりというか、私は全くお呼びではなかったみたいだ。
「カレンちゃん……、私もどうしていいかわからないけど……。取り敢えずいう通りにしましょう。変に逆らう方が怖いかもしれないし……」
「は、はい、先輩」
先輩の手を、話しかけて来た男性が私から取り上げるように、優しく取る。先輩は彼のその動作に戸惑いつつ、私を心配そうに見ながら彼に誘われるがまま移動を始めた。
イケメンに手を取られて歩いている先輩の背中を見つめながらついて行っている私の後ろにも何人か大きな男の人たちがいた。何か失敗──転けたりでも──したら、すぐにでも後ろの人たちに酷い事をされそうで震える足を一生懸命動かす。
そんな私の背中をじーっと見つめる視線があったなんて、少しも気づかなかった。
※※※※
「エレベーターが動き出しましたな。いやはや、とんだ災難でしたね」
「まったく。折角レストランに来たというのに。なにはともあれ無事にすんで良かった」
「まあ、何か祝い事でも?」
「ええ。聞いてください。実は……あれ? なんだったかな?」
「もう、あなたったら。今日は……あら? えーと、なんだったかしら……? そうそう、あなたの上司の方から急用でキャンセルになるからって、ここでのディナーを、有難くいただいたんじゃない。ふふふ」
「あー、そうだった、そうだった。最近仕事ばかりで家庭をほったらかしにしていたからなー」
「それはそれは。楽しいひと時をお過ごしください」
「まあ、羨ましいお話ですこと。ほほほ、悪い出来事は忘れて楽しんでくださいませね?」
「ありがとうございます。お二人も、どうぞ良い夜を」
「ありがとうございます」
なんとなく違和感を感じるものの、エレベーターが止まった事以外なんら変わりのない状況に対して、二組の家族が小首をかしげつつも会話を続けた。
エレベーターが、レストランの階にたどり着き扉が開く。そして、中にいた人々はホッとした表情で降り、別れたのであった。
私はいきなり硬い床に尻もちをついた。抱き合っていた先輩も一緒に。
「大丈夫か?」
「あ、ありがとうございます……え?」
すぐに、聞いた事のない男の人の声がして、私の上に乗っかるような形で転んでいる先輩を助け起こした。
私は痛むおしりを撫でながら、誰も手を差し伸べてくれないので一人立ちあがる。太ももの半ばまでスカートが捲り上がっていたので慌てて裾を直した。そして、目の前の先輩の後姿ごしに見える景色に目を見開いた。
「え……?」
先輩も立ち尽くしたまま無言だったし、私もわけがわからないまま突っ立っていた。
「私たちの花嫁。あなたの名前を教えてくれませんか?」
呆然としていると、先輩を助け起こしただろう声の物凄いイケメンが、蕩けるような微笑みで頬を赤らめながら先輩に優しく訊ねていた。上手な日本語を話している。ホテルの人かエレベーターの修理の人かと思いたかったけれど、なんだかその人の恰好が王子さまのようなコスプレだったからそんな事はないだろう。
濃紺のスーツで赤い幅の広いリレーのアンカーがつけるみたいなタスキを斜めにかけていた。かぼちゃパンツじゃなくて、普通のスーツをゴージャスにした感じ。ボタンも金色だったし、タスキをかけていないほうの胸にはキラキラのバッチがつけてある。テレビで見たイギリスの王子様みたい。
「え……? 花嫁? あの、あなたは……ここはいったい……」
先輩の体が震えている。周囲を見ても誰一人として見知った人が他にいないし、エレベーターの中だったというのに、石造りのなんだか暗い部屋だったので怖くて先輩に近づいて手を握った。
「先輩……」
私が先輩に声をかけて手を握った事で、先輩が私の方を向いてくれた。先輩に後ろを向かれた形になった金髪で青い瞳の外国の男性が、眉をしかめて私を少し睨んで来ていたから怖くなる。彫りの深い彼の目は鋭くて、きりっとした眉に、高く鼻筋が通り、薄い唇をきゅっと結んでいるからものすごい迫力を感じた。
外国の人なんて周囲にいないせいもあって、身がすくみすがるように不安な気持ちで先輩の手をぎゅっと握った。お互いの手が冷たくて、でもふたりともお互いしか頼れそうにないから先輩が私に近づいてぎゅっと抱きしめてくれて少しだけホッとする。
「カレンちゃん、だったわよね? 大丈夫?」
「あ、はい。先輩は……」
「私はビィノ……美唯乃よ。私もどこも怪我とかしていないわ。カレンちゃんにこうして触れてお話が出来ると言う事は、夢じゃないのよね?」
「……そうみたいです。お母さんたちはどこに行っちゃったんでしょうか……グスッ、う、うえっ……うー……」
私が泣きだした事で、先輩の目も涙で潤みだす。私たちは、見も知らぬ場所にいきなり来た不安を少しでも取り除くかのようにぎゅっと抱きしめ涙を流した。
私たちが──というよりも、先輩が──泣き出した事でさっきの男性が悲しそうに表情をゆがめた。先輩が落ち着き出したころ、恐る恐るといった具合に再び声を掛けられる。
「すまない、少しいいだろうか? そちらの少女も。どうか、私の話を聞いてはくれないか?」
相手がとても気を遣ってくれているのが分かる。ただ、私の事も含めて言いつつも、先輩が抱きしめている私のほうは全く見ずに先輩だけを視界に入れているから、私じゃなくて、先輩だけを気遣っているのだろう。
「せんぱい……」
「……カレンちゃん。私もわけがわからないけれども、とりあえず話を聞こうと思うの。いいかな?」
私は不安で怖くてたまらない気持ちのまま先輩を見上げた。先輩も不安そうだったけれども、きっと私のために頑張って相手をしようとしてくれているのだろう。
私だって他になにも思い浮かばない。甘えきりで申し訳ないと思いつつ、先輩の言葉に頷いた。
「あの、私たちにも質問があります。どうか、この状況を説明できるのなら、きちんと私たちふたりに話してはもらえませんか?」
「ああ、勿論だとも。もともとそのつもりだ。その少女は予定外なのだが……とりあえず、ここは暗いし座る椅子もない。部屋を移動しよう」
「はい、お願いします」
やはりというか、私は全くお呼びではなかったみたいだ。
「カレンちゃん……、私もどうしていいかわからないけど……。取り敢えずいう通りにしましょう。変に逆らう方が怖いかもしれないし……」
「は、はい、先輩」
先輩の手を、話しかけて来た男性が私から取り上げるように、優しく取る。先輩は彼のその動作に戸惑いつつ、私を心配そうに見ながら彼に誘われるがまま移動を始めた。
イケメンに手を取られて歩いている先輩の背中を見つめながらついて行っている私の後ろにも何人か大きな男の人たちがいた。何か失敗──転けたりでも──したら、すぐにでも後ろの人たちに酷い事をされそうで震える足を一生懸命動かす。
そんな私の背中をじーっと見つめる視線があったなんて、少しも気づかなかった。
※※※※
「エレベーターが動き出しましたな。いやはや、とんだ災難でしたね」
「まったく。折角レストランに来たというのに。なにはともあれ無事にすんで良かった」
「まあ、何か祝い事でも?」
「ええ。聞いてください。実は……あれ? なんだったかな?」
「もう、あなたったら。今日は……あら? えーと、なんだったかしら……? そうそう、あなたの上司の方から急用でキャンセルになるからって、ここでのディナーを、有難くいただいたんじゃない。ふふふ」
「あー、そうだった、そうだった。最近仕事ばかりで家庭をほったらかしにしていたからなー」
「それはそれは。楽しいひと時をお過ごしください」
「まあ、羨ましいお話ですこと。ほほほ、悪い出来事は忘れて楽しんでくださいませね?」
「ありがとうございます。お二人も、どうぞ良い夜を」
「ありがとうございます」
なんとなく違和感を感じるものの、エレベーターが止まった事以外なんら変わりのない状況に対して、二組の家族が小首をかしげつつも会話を続けた。
エレベーターが、レストランの階にたどり着き扉が開く。そして、中にいた人々はホッとした表情で降り、別れたのであった。
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