終R18 気弱なサンタは、クリプレガチャをお届け中!

にじくす まさしよ

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序章

望まぬ求婚

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  ところが、急な悪天候のせいで、先方の領地に大きな雹が降り注ぐ災害が起きた。当分は領地から離れられないので、ライノおじさまとライナさんの今回の訪問がなくなったのである。

  どうやら、人々は少し怪我をしたくらいですんだのだけれど、家屋や土地、家畜、森林が大ダメージを受けたようだ。

  早くなんとか助けないと、この極寒を耐えられない者も出てくるだろうし、春以降にもどれ程の被害の影響が出るかわからない。

  私は、災害は大変な出来事だと心配になる思いと、ライナさんに会えなくなった事で、ホッとしたような、残念なような、ほんの少しのもの寂しい気持ちを覚えた。

 お兄様たちは王宮で支援のための会議のために不在だ。応接室で考え事をしていたお母様が立ち上がる。


「ダン、ティーナ。私、ちょっと現地に行ってくるわ」

「エミリア、そう言うと思ったよ。ただ、勝手に行くと、かえって迷惑がかかるだろうからちょっと待って。俺たちだけでも持てる物資を運ぶために先行できるように、すでに王宮には申請しているんだ。もうすぐ許可が下りると思う。支援する騎士たちの派遣の準備と移動を待つより、俺たちが単身行くほうが早いからね。物資の第一便はもう集められた頃だ」

 いつの間にかきちんと救助の手配も済ませていたなんて。私は、ハラハラして気持ちばかりが焦っていただけで何も出来ていなかったというのに。やっぱりお父様は、すごい人なんだと改めて尊敬した。

 手配してるなら、先に教えてよってお母様がむくれた時、お父様はぷくっと膨れた頬にキスをしてこう言った。

「言葉も大事だとは思うんだけど、エミリアが好きなのは、行動で示す男なんだろ?」

「もう~、ダンったら! 流石、この国一番の素敵なハムチュターンだわ、愛してる! ありがとう!」

「はは、こんな事くらいわけないよ。そろそろ許可される頃だから行く準備をしよう。ひとりでも多くの人を救いたいのは俺だって同じだ。じゃあ、ティーナ、留守を頼んだよ」

 お母様に抱き着かれて、真面目な顔をしていたお父様が、一気にでれーんって表情を崩した。幸い、お母様にはそんなお父様の顔は見えていない。


「はい、お父様。お母様も、お気をつけて。家の事はお任せください!」



  お母様は、チートっていう反則技のようななんでも叶う魔法を使えるから、我が家と国の支援物資が集められた巨大倉庫と現地を行ったり来たりして忙しい毎日を送った。お母様に引っ付きハムチュターンのお父様も一緒に行って、あちらできちんと仕事をしているみたい。

 現地の惨状は、私が思った以上に酷いみたいだった。極寒の中、家屋が損壊して凍える人々のために、仮設の建物をあちこちに建てて物資を分配しているという。幸い、極寒だからこそ雪が水になるし、数週間分の食料は各自治体にあるから、寒ささえ凌げれば大丈夫なようだ。

  あと数日もすれば、我が国からだけでなく、各国の正式な派遣である騎士団が到着して、本格的な復興に協力できるようになるという。

 そんなこんなで、いつもは私の周囲に目を光らせているお父様がいない事や、忙しくなったお兄様たちが私の側から離れた事で、普段はお父様たちを怖がって近づいてこない男の人たちが毎日のようにやってきた。

 突然現れて私に囁いて来るのは、以前私にストーカーしてきたり、強引に家に連れて行こうとした人だったり、性格的に合わずにお断りした人たちだった。普通の人は、お父様たちに知られた後の事を恐れて一向に近づいてこないから、まともな人がひとりもいない。

 私は、お母様のチートっていう魔法を受け継いでいる。隠していないから、これはわりと有名な話なんだけれど、私の外見が華奢な体つきで、気が弱くて強く言い返せないから、男の人たちに押せばいけると思わせてしまうからなかなか諦めてくれなかった。

「ティーナさん、ああ、会いたかった……。今日もなんて美しいんだろう。以前は君のお兄さんに邪魔されたけど。わかってる。君だって私の事を愛してくれているんだろう? ほら、先日だって視線が合ったじゃないか。ああ、その視線に込められた熱い愛と悲しい気持ちはきちんと届いている。こうして会えたのも、私たちは結ばれるという運命なのさ。さあ、何も心配いらない。私と結婚しよう!」

「あの……。わ、私、以前お断りをしたはずですが……」

 驚愕と恐怖と悪寒のせいで、のどがひくついて上手く言葉がでない。足が動かなくて、ようやく言えた言葉は小さいものでしかなかった。


「わかってる、皆まで言わなくともわかっているとも。それは、君の家族の手前、仕方なく涙をこらえながら言っただけなんだろう? もう大丈夫。これからは夫である私が守って……」

 今、待ち伏せされて目の前にいるのは、以前付きまとってきた伯爵家の令息だ。自己陶酔をたっぷりしていて、こちらの話をちっとも聞いてくれない。私じゃなくても、この人が相手なら、はっきりものを言う友達もしつこくされると思う。

 私は、恐ろしくて崩れ落ちそうになる足に力を入れて、アッチに行ってっていうチート魔法を唱えようとした。けれど、歯がカチカチ鳴るだけでちっとも言葉になってくれない。

 やっぱり、女性でいいから護衛を頼めばよかった、と後悔で心がいっぱいになる。家の事は任せてと言ったのに、こんな人ひとりあしらえないだなんて、情けなくて涙がでそう。自己嫌悪が私の心と体を、さらにがんじがらめにした。

 すると、目の前の男が怪しい雰囲気を醸し出しつつにこにこと満面の笑顔で、立ちすくんでいる私に向かって手を伸ばして来たのであった。

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