終R18 気弱なサンタは、クリプレガチャをお届け中!

にじくす まさしよ

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序章

情けない私、勇気を持ちたい私

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「ひ、ひぃ……! あ、そ、そそ、そういえば用事があったんだった! ではティーナさん、またお会いしましょう」

 どうやってこの人から逃れよう、誰か助けてって思っていたら、その人がいきなり青ざめて走り去っていった。振り返ると、トーマス伯父様がいた。どうやら、さっきの青年ににらみを利かせてくれたみたい。

「二度と私の姪に近づくな! はぁ……全く。しばらく大人しかったと思えば、ダンたちがいないからあの手の輩が湧いて来たな。ティーナ、大丈夫か?」

「トーマス伯父様……!」

 まだ足ががくがくしている。けれど、頼もしい存在の登場に、私の凍り付いたかのようだった体が体温を思いだした。

「いや、エミリアとダンに北の国の支援を任せっぱなしな状況にしている今、こういう事は想定して警備を強化しないといけなかったこちらの落ち度だ。怖い思いをさせてすまない」

 私に王宮の護衛の騎士がつけられた事もあったけれど、その騎士が私にあらぬ視線を送るようになった。女性を護衛につけようとしても、私にいいよってくる相手はものすごく強い。なんせ、お父様とお兄様たちを倒さないといけないから、鍛え上げて来るからだ。
 だから、そんじょそこらの女性の護衛では務まらないし、下手をすれば人質にとられてしまう。いざとなったらチートが使えるから、ひとりで行動していたほうがまだ安全なのだと思っていた。

 そんな奢りが、今回のような下手をすれば取り返しのつかない事態になりかねない状況になってしまった事に気付く。なにが、いざとなったらチート魔法がある、だ。魔法なんて何一つ唱える事も出来やしなかった。
 もっとはっきり言い返して行動できるように、心を強くしなきゃいけないと唇を噛む。

「助けていただいてありがとうございます。お忙しいのに、すみません……」

 こういった事が日常茶飯事であるため、私がお城に来ると警備の仕事が増える。自分できっぱり撃退できたらいいんだけどそれが出来ない。申し訳なく思って俯いた。

「ティーナが謝る事ではない。それにしても、モテすぎるのも困ったものだな。そういえば、タニヤが言っていた青年と会えなかったが、律儀にそれを待つ必要なはいんだぞ? 他の男をティーナ自身が見つける事ができるのが一番いい。決まった相手が出来れば、ああいう輩もいなくなるだろう」

「私自身が見つける……」

 トーマス伯父様が家まで送り届けてくれたおかげで、その日は変な男の人たちに声を掛けられる事がなかった。



 自分の部屋に戻って、幼い頃に気に入っていた絵本を手に取る。そこには、お姫様が魔女の呪いにかかって城から追い出された後に、番である隣国の王子様に出会いハッピーエンドになるお話が描かれている。

「番、かぁ……。自分で、見つける……か……」

 自分から番を見つけに行くだなんて、そんな勇気、私には持てないと思う。だけど、このままじゃあ普通の恋愛どころか、独り立ちすら出来なさそう。

 私は、今のまま誰かに頼りっぱなしの人生をこのまま送るのだろうか? 

 そんなのは嫌だと思う。だから、若い頃のお父様がしたように、私も勇気を持って番を探しに行きたいと思うようになったのであった。

 エライーン国の救援も、ひと月が経つ頃には落ち着いてきた。お父様とお母様も毎日あちらに行かなくても良くなり、お兄様たちも、家に帰って来る日が増えた。


 今日は、家族全員がそろって、お母様が考案したカマクラという雪のドームを作ってその中でアツアツのお鍋や、固く形成したお米にお味噌をつけて直火で焼くゴヘイモチというお母様の手作りのごはんを頂いている。

「アチチッ! うわーん、べろとおくちのなかがいたいよー!」

「まあ、大変。大丈夫? ほら、おいで。慌てると火傷するわ」

 弟が、焼けたばかりの香ばしいゴヘイモチにかぶりついた。熱せられたお味噌で口の中を火傷したようだ。明日には口の中の粘膜がべろべろになるかも。お母様がすぐに弟を抱きかかえて魔法を唱えた

〈火傷よ治れー〉

 弟の口の火傷はあっという間に治癒する。本当にお母様の魔法は凄いと思う。お母様が唱える呪文は、なぜだか私にしかわからないみたいで、お父様たちには不思議な音楽のように聞こえると言っていた。

「ぐす、ぐすっ。あれ? もう、いたくなくなったよ! ははうえありがとう」

「ほら、次は気をつけてね? 治ったとしても、火傷をした時は痛いでしょう? 皆も、いつも言っているように、慌てず、ふーふーしてきちんと冷ましてから食べてね」

「うん」

 弟や妹たちは、お母様の言葉を聞いて、小さな手でゴヘイモチを持ってふーふー冷まし始めた。雪で作られているけれど、この空間はドーム状になっている事と、お父様とお母様の魔法のおかげで温かい。

 お父様は、お母様にふーふーあーんしてもらってご満悦だ。40近いのに、こんな風にふたりの仲良しの姿を見ると、時々こちらが照れてしまうけれどとても幸せな気分になれる。

 すでに成人して働いているお兄様たちも、久しぶりに家族全員に会えてとても嬉しそう。弟たちが雪合戦を始めると、お兄様たちが二手に分かれてチームを組んだ。雪合戦というのは、ほとんど命がけのような硬くて大きな雪の玉を作り、魔法で加速したそれを投げ合う、とても危険なスポーツだ。

 これも、お母様が教えてくれたんだけど、「なんかちがう。雪合戦って、小さなお子様がわいわい楽しめるお遊びのはずなのに、どうしてこうなったんだろ?」と、首を傾げつつ、皆が大けがしないように体に防御の結界をチート魔法で張っている。
 私と妹たちは、万が一の事があったら大変だと参加させてもらえない。男の子たちの激しいバトルを、ドームの中から眺めておしゃべりをしながら、小さなウシャギィーヌやピヨーコネンを雪で作って遊んでいた。

「ティーナ、私たちがいない間大変だったわね」

「えーと、その。いつもの事だから……」

「私もストーカーには悩まされたけれど、ティーナは私以上に絡まれているわねぇ。ねぇ、本気で結婚相手を見つけてみない? まだ15だから、男の人たちもある程度抑えてくれているけれど、年々酷い事をされていくかもしれないわ」

「うん……、私も考えてるよ」

「あのね、ティーナ。あなたには政略結婚とか考えなくていいように、お父様やお兄様たちがお仕事を頑張ってくれているわ。勿論、私もティーナが好きになった人と結ばれて欲しいと思っているの。ただ、こればっかりは縁というものだから、あまり深く考えすぎず、色んな人と出会ってお話してあちこちにお出かけしたらいいわ。いつか、ティーナを愛してくれる人が現れるし、ティーナも一生かけても大切にしたいって思える人に巡り合えるから」

「そんな人、いるかなー?」

「見つかるわよ。お母様なんて、結婚したいとか思ってなかった時に、お父様と知り合ったんだから」

「うん」

  その時、雪合戦に飽きた皆が戻ってきた。

 私は、この間から考えていた事を言うために顔をあげた。案の定、お父様たちは猛反対。

 だけど、お母様だけは、にっこり笑ってこう言ってくれた。

「番を諦めずに探して会えたら、きちんと想いを伝えなきゃね? そうしたら、きっと、お父様のような素敵な人が、貴女をとっても愛してくれるに違いないわ。いい?  気をつけるのよ?  たまには手紙くらいは寄越してね」

「うん。お母様ありがとう!」

 お母様の言葉で、お父様は態度を180度変えた。だけど、お兄様たちが行かせるものかと、私にぎゅっと抱き着こうとした。

〈先ずは、お母さまが働いていた北の果てに行きたいのっ!〉

 私は、お兄様たちに抱き着かれる直前、これからの事に、不安よりも期待に胸を躍らせてカマクラの中で大きな声で呪文を唱えたのであった。







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