終 R18 好きでも嫌いでもない夫に嫌と言えない私は、むげにも出来なくて困っています。

にじくす まさしよ

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いきなり押し倒されてしまいました ※

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 夫と婚約したのは、15歳の頃。学園で違うクラスだったから、それほど交流もできずに過ごした。
  自分から彼の元に訪れたりするのも憚られていたために、クラスメイトと会話する方が圧倒的に多い日々を過ごす。

 事情があっての婚姻だったり、派閥が違う家柄同士をくっつけてとか政略的な意味もなにもない。ただ単に、両親たちがそろそろ子どものお相手を探し始めた頃に意気投合して、事後報告で結婚相手が決まった事を報告された。

  相手も同じ状況だと思う。

 学園では、彼には時々恋人がいたようだ。たまに違う女の子を連れて楽しそうにしているのを見かけた。挨拶すらほとんどしないような近所の通りすがりの人という認識だったから、周囲が私を心配してくれていたけれど、ふーんって感じだった。

 相手の名前は、伯爵家の跡取りであるシチミさまという。パンダ獣人で、獣化状態と同じく、人化していても大きい。初めて会った時に、首が痛くなるほど見上げた。

 両親からは、シチミさまとの進展があまりなさそうだから、もっと仲を深めるように苦言を呈されたけれど、会っても、「ああ」とか、「うん」とかしか上の空で返事をするだけの相手とどう進展させろというのか。

 どう考えても私の事を嫌っている。なのに、両親たちは照れているだけだと彼をフォローする。

  けれど、照れているだけであんなにも不愛想で会話すら嫌がって笑顔すら見せないものだろうか。

 取り付く島もない婚約者とは、ほとんど無言でお茶を飲んで苦痛な時間をすごしたり、社交パーティーでダンスを踊るだけでも大したもんだと自分では満足していた。

 卒業して、予定通りに結婚式を挙げた。誓いのキスも、触れるか触れないかで止まった彼に、それほど嫌ならさっさと婚約破棄なり解消なりしてくれてたら良かったのに、とため息を吐いたのも懐かしい。


 結婚してから1年になる。夫婦なのにシェア館のように過ごしているうちに、最初は戸惑っていた使用人たちも慣れたようだ。

 彼は伯爵家の後継者だから、義両親はじめ、皆から次代を望まれる。
  だけど、同じ館に住んでいるのに、会うのは一か月に一回あるかないかだし、会っても通りすがりに、「あ、どうもー」って感じで会釈をする程度。

 寝室だって、館の対曲線のすみっこ同士なんじゃないのってくらい離れているし、一緒に寝た事すらない。

  それで妊娠できたら、私はメスだけで子供を産むことが出来るアジアン・ウォータードラゴンか、ブラーミニメクラヘビにならないといけない。

  生憎、単なるパンダ獣人なんだけど。

 子供を産むためには男の人が必要だ。この家に必要なのは、シチミさまの子孫なんだから、私と手を握るどころか視線を合わすのも嫌っている彼に、別の女性との子を作ってもらわないといけない。ということは、その人は日陰の身になる。母親から子供を後継者だからと取り上げるなんてかわいそうだし、これはさっさと離婚したほうがいいだろう。

 一年子供が出来なかったら法的に離婚が認められる。だから、先日の結婚記念日に必要な書類を取り寄せて、あとはシチミさまのサインを頂ければいいだけにしていた。

なのに──

 どうしてこうなったのかしら?


「僕から離れるなんて、絶対に許さないぞ」

 あらら? これは本当に、あの夫なのかしら?

 いつものように侍女たちとおしゃべりをして楽しんだ後、ひとりで大きなベッドにもぐりこんだ。しんしんと降る雪のせいで、暖房していても底冷えするから、冷たいシーツに包まって自分の体温で温まるまでの時間が、ひえーって感じ。

 暖房で温めても温めても手足は氷のように冷たくて、自分のお腹をちょんっと触る事すら無理。

 なのに、そんな私の手をまるで温めるように握りしめている。

  いつもは「私」って言っているのに「僕」だって言うし、こんな風に優しい事をするなんて別人に違いない。ひょっとして、私がしらない双子の弟さんかお兄さんか、それともそっくりさんなのだろうか。

 他人と私に子作りさせて後継者にしようと画策している──にしても、そんな事を敢えてする理由が見つからない。

「あ……、んんっ!」

 首筋をべろりと舐めあげられた。彼のふわっふわの柔らかな黒髪が、頬や耳に当たってくすぐったい。思わず首をすぼめて逃れようとした。

「逃げるな、ナツメグ嬢。いや、メグ。こ、これは夫婦のすべき事で、君は僕に任せていればいい」

「あ、やぁ……」

 厚手のふわもこのパジャマのボタンはスナップボタンだから、シチミさまがちょっと指をひっかけただけでプチプチっと取れた。ぽろんと出た胸には、寝る時だからブラなんかしていない。

「これがメグの……ああ、かわいい」

 さっきまで、私を睨みつけるように見ていたのに、今はおっぱいに釘付けだ。手を握っていたあったかいホッカイロ夫の手が離れていった。

 あれ? そう言えば名前を呼ばれたのも初めてだったかも? で、いきなり愛称とかってどうなってるのでしょうか?

  渾名呼びなんて許してないんだけどなあって思いつつ、かじられたおっぱいの先が痛くて悲鳴をあげたいのを堪えた。

  何がなんやらわけわかんないし、怖い。だけど夫からの行為は受け入れないといけないから我慢した。

  これ以上痛くしないで欲しいけど……。彼が、噂に聞くような、相手を痛くさせるのが趣味な人ならどこまで付き合うべきなのでしょう?

「旦那様、恥ずかしいです……。あの、なぜ胸を……」

  反発したら、怒って思いっきりがぶっとされたら千切れそうで恐ろしい。恥ずかしいから隠したいって感じで、手を胸元に移動させてみた。

  うーん、歯でかぷかぷするのはやめてくれたけど、手をブロックしておっぱいから離れてくれない。

  困りました……、どうしたらいいのでしょう。流石に噛み千切らないよね?  え?噛みちぎっちゃう?

  それは流石に勘弁していただきたい。


「だんなさま、だと?」

  あ、やっとおっぱいから口を離してくれた。ホッとしたあまり、嬉しくてニコニコ笑顔を作ったら、彼がびっくりしたのか目を見開いた。

  いやいや、びっくりして頭真っ白になってるのはこちらなのですが……。

 それほど大きくも小さくもないおっぱいをがしっと握りしめながら、顔を赤らめつつ眉をしかめてへの字口になっているシチミさま。

 あ、これよ、これ。いつものシチミさまのお顔は、まさに今、私の目の前、至近距離で見せるそのお顔がまさにそれ。

「あのぅ、旦那さま……。これはいったい……ひゃんっ!」

「メグ……!」

  すると、せっかく止まってくれていた彼が動き出した。

 一応興奮してくれているようで、さっきからぐいぐい押し付けてくる硬いモノは、教科書のイラストで見た男性のアレだろう。拒むつもりはないけれど、こちらが言うなりになっている間、ずぅっと翻弄され続けた。

「あ、ん……。はぁん」

「……………………メグ、メグ!」

  あれよあれよと言う間に裸にされて、あらぬところまで暴かれた。彼が無言だから、本当にどうしていいのかわからない。彼から与えられる、ムズムズとした感覚と戸惑いがますます私の頭を混乱させた。

「ああ、メグ。何も言わず逆らわずに男の言いなりになって。こんなにも従順なメグが他の男に誘われないか心配だ。もしもそんな不埒な男がいたら……してやる」

 あら? なんだか、いもしない男性に嫉妬しているかのような言葉や、不穏な言葉も言ったみたい。恥ずかしいさと恐ろしさのあまり、幻聴でも聞こえ出したのかしら?

  恥ずかし過ぎて、両手で顔を隠した。蹴っ飛ばすわけにもいかず、拒絶したらせっかくその気になった旦那の機嫌を損ねてしまうかも。

 拒絶すると、旦那様のプライドが傷つく。貴族の妻としてあるまじき行為なうえに、傷ついた旦那様の立場がなくなれば、旦那様の社会的な色々なものに影を落として一生がダメになるかもしれない。そう思ったら、「嫌です」と言って、この場から走り去るのも憚られた。

  とにかく、離婚するつもりだったのだけれど、本来の責務である子供が出来れば万々歳だし……。彼の態度が元に戻ってたとしても、これでいいのよね?

 そんな風に、別の事を色々迷走して考えていたら、再び彼の動きが止まった。あらぬところを、穴が開くほど──穴は開いているけれども──見つめられて、もうどうしていいやらなんやらわからなくなった。

「……毛がない……なんでだ? 僕とはこういうことはしてなかっただろう? 女性がここの毛を処理するのは、男と体を重ねるためだと聞いたぞ。もしや……。どこのどいつだ! あいつか? 侯爵家の放蕩者か? それとも、女好きの王子か? もしや、屋敷の使用人や庭師じゃないだろうな?」

「違います、そんな……! そ、それは……。それは、ですね。だんなさまのために、ここはいつも……」

「僕のために、だとぉ?」

 ぎらっとイチミさまの目が光った気がした。さっきまでもたいがい怖いような目つきと、若干乱暴な手つきだったのに、ぎゅうっとおっぱいを掴まれた。

  怒らせてしまったみたい。彼は王宮で王族を守る騎士だから、怒らせたら敵に容赦ないと聞いている。

 彼の完全な思い違いを訂正したものの、信じてくれないかもしれないから、恐ろしくなって謝ろうとした時、大きく足を広げられた。


「……っ! や、やぁ、うそ、うそ、そんな……あぁっ!」

 あろうことか、少し辛いくらいに、身体を折り畳むようにおしりを上げさせられ、彼はそのまま足の付け根に顔を埋めたのであった。








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