絶対防御で対峙します!~スパダリ童貞の魔王と宰相からのアプローチは防御できないのですが!~

むふ

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1.起きたら森で、奴隷で、戦場で

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 結論から言えば、私はあの日、確かに死ぬはずだった。というか、恐らく元の世界では死んでいる。


 深夜のコンビニ。
 新発売の地中海の塩を使った和風ツナマヨおにぎりを握りしめ、赤信号を無視したトラックのライトに焼かれた瞬間、私の人生は二十八年の幕を閉じる——はずだったのだ。

 ところが、どういうわけか。
 目を開けると、そこは深い深い森の中だった。
 見たこともない色や形の動植物にすぐさまアニメや漫画で見るトリップをしたのだと、感じた。最初は夢なのかもなんて淡い期待を抱いていたが、日に日に感じる空腹感がそんなことは無いと現実を突きつけてきた。


 夜食で買った地中海の塩を使った和風ツナマヨの味もわからないくらいがっついて食べてしまった。そんなおにぎりももう消化されてしまっている。

 ――私の平凡な舌には、地中海の塩の味なんてわからんかったなぁ。普通のツナマヨおにぎりと一緒だったし、100円も高かったのに……。


 そんな恨み節を心で愚痴りながら何処かもわからない森を彷徨っていた。
 

 そしてまさかの第一村人?第一異世界人?と遭遇。


「あの!助けてください!」

 そして私はまさかの人攫いに助けを求めて、奴隷となり商品として売り出された。





 数ヶ月――。

 ――………………買い手がつかない!!!

 奴隷だからといってもの凄い酷い環境ではなかった。
 3日に1度水浴びできたし、1日2回だが食事もある。生活水準は元の世界とは雲泥の差であるが、暴力を振るわれることもなく、買い手も貴族で大体は使用人であるとのことで仕事先の斡旋兼待機先みたいなものだと言われた。


 ――じゃあ、就職先が見つかるまで良いじゃ無いか!
一緒にいる奴隷の女性からこの国のことやお金の勘定の仕方や歴史なども教えてもらい、将来の仕事先の役に立てる様努力した。



 

 そして努力の成果が実る。
 とは、限らなかった。


 硬い地面の床に薄く敷かれたマット。簡易的なベッドは2段。一応鉄格子に囲われているが、客が勝手に入れないようにする意味合いが強く営業時間外は自由に出入りできた。脱走防止の魔法がつけられているからかも知れない。

 そんな簡素な部屋に髭をもじゃもじゃ生やした、頭がツルピカの奴隷商人が入ってきた。恰幅も良く、足音が大きいからすぐわかる。

「おまえさん、人気無さすぎるなぁ。人間はたまに入ってくるくらいだからプレミアで売れると思ってたんだけどなぁ。確かに身体は貧相だけどなぁ、あ!俺はブスだと思わないぞ!別嬪でもねぇけど!」


 がははと盛大に笑ってどっかいってしまった。
 何しに来たのやら。

 確かに他の奴隷になった女性をみるといやにナイスバディが多すぎる。自身もEカップはあったはずだが、栄養が足りていないこともあり少し痩せてしまった。それを度外視してもとてもEカップです!と声を高らかに言える訳でもなかった。


「お姉さん、何カップですか?」
「んー?何カップって何のことかしら?」

 そっと自分の胸に手を置くと、お姉さんもさっしたようで、すんなり教えてくれた。
「……おっぱいの大きさ?んーメロの実くらいかしら?」

 メロの実がわからないが、元の世界ではメロンくらいあるんじゃないのか。ここの国は魔族と呼ばれる、人間とはまた違った種族が主であるが、発育面で違いすぎた。
体も少しだけ大きい。
 私が152センチと小柄なのもあるが、女性の平均身長が170センチくらい。モデルのようだった。

 美しく、スタイルも良い女性方を尻目にそれでもいつかは売れるだろうと思っていた。



 それからまた幾日か経ち。
 そしてそして念願の売買成立。

 
 意気揚々と向かった先は、温かい家庭でも、貴族のお屋敷でもなく、鉄錆と血の匂いが立ち込める泥濘(ぬかるみ)の中だった。

「ひるむな! あの『奴隷』を盾にしろ! 敵の近くまでできるだけ進むのだ!」

 怒号と共に、私は見知らぬ魔族の男に蹴り飛ばされた。
 視界の先では、巨大なトカゲのような怪物が口から禍々しい雷光を吐き出そうとしている。

 ――……待って!なんで!美味しいご飯どころじゃない!トラックにはねられたのに今度は大きなトカゲに引飛ばされるの?!あの光はなに!?!
 直後、轟音と共にトカゲから発せられた雷撃が私を直撃した。
 周囲の魔族たちが立派な盾を構えたり、なんか変な呪文を唱えたりしている中、トカゲの目の前いる丸腰の私を守るものはない。
 雷撃に弾かれて地面は抉られ、砂埃が一面に立ち込めた。

 ――無慈悲!!!
 あの奴隷商め!何がセールしても売れなかったから、戦果をあげて値段上げてこいだ!奴隷の価値もピンキリじゃないか!くそ!あのジジイ!死んだら呪ってやる!

 死ぬ間際にそう念じて頭を抱えてしゃがみ身を固くした。
 
「……っ!」

 視界が真っ白になるほどの強い光が落ち着くとゆっくり視界が戻ってきた。砂埃も落ち着いてきた頃、ザワザワと騒がしく声が聞こえた。
 しゃがんだ私に誰も手を差し伸べることもなく雷撃が直撃した私は思わず痛いと体を摩りながら立ち上がった。

「あれ?」

 痛いと思っていたのに痛くない。
 ただ、大型扇風機を「強」で至近距離から浴びたような、風圧があるだけだった。
 

「え、あいつ生きてるぞ……。魔法が変な方向に飛散しなかったか?」

 丸こげになって死ぬと思われていた私が、普通に生きており周囲が騒ぎ立てる。
 私はと言えば、普通に驚いていた。

 「は! ……え?い?生きてる……?!」

 大きなトカゲはまだ目の前にいる。
 知性があるのかはわからないが、目の前にいる私もまじまじとみているようだった。
 ゆっくりと近づいてくる顔に恐れ慄いて脱兎の如く駆け出した。


「え!あ!……待って!待ってって!……無理!無理!!!誰かっ、誰か助けて!助けてってば!!!」
 
 悲鳴を上げながら逃げ惑う私を、戦場の遠くから見つめる冷徹な瞳があった。
 黒鉄の馬車の上。
 歴代最強の魔力を持ちながら、誰にも触れられぬ孤独に立つ男——魔王。
 そしてその傍らで、何やら紙にペンを走らせているメガネの男——魔王の右腕、宰相。
 

 「陛下……見ましたか。あの女、あのジャイアントバジリスクの雷撃を跳ね飛ばしましたね」 
 「……ああ。無効化か?反発か?あれほど騒がしく逃げ回る『ギフト持ち』は、初めて見た」
「興味深いですね。かなり珍しいギフト持ちですね。研究材料にぜひ欲しいところですが、持ち帰っても?」
「あぁ、ちょろちょろと、あれで必死なのか全力疾走なのか、鈍愚だな。くく、よい。連れて帰るぞ」


 こうして、二十八歳、朝一般人の私の平穏な独身生活は、魔界のツートップによる「所有権争い」という名の地獄へとシフトチェンジしていくのである。


 そんなことこの時知らない私は、いきなり空から降ってきた魔王の放った一撃にびっくりして失神した。

 
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