絶対防御で対峙します!~スパダリ童貞の魔王と宰相からのアプローチは防御できないのですが!~

むふ

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2.起きたら実験室でした。

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 意識が浮上した瞬間、私の期待は一秒で裏切られた。
 異世界トリップの定番といえば、天蓋付きのベッドにふかふかの羽毛布団、そして「お目覚めですか、聖女様」と微笑む美形キャラ……。そんな甘い幻想は、背中に伝わる無機質な感触に叩き壊された。

「……え、硬いし、……なんか冷たいし」

 目を開けると、そこは豪華な寝室どころか、完全に「手術室」だった。
 周りは薄暗く、そして私にだけ煌々と光が当てられて眩しいったらない。
 しかも、私が寝かされているのはアルミかステンレスか、とにかく鈍く光る金属製の台の上のようで、体が痛いから体制を変えたい。
 身をよじろうとしたが、手足はご丁寧に皮のベルトで固定されていて部屋に台が軋む音が響いた。


「え……ちょっと! なにこれ! 誘拐!? 拘束!? さっきまでトカゲと戦ってたよね!? ……すみませーん!おーい!誰かー!!」

 絶叫する私の声が届いたのか、寝かせられて見えないが頭の上の方で扉が開いて誰かが入ってきた。


「お!起きたか!」
 

 白衣のようなものを着た男2人が、複数の注射器を手に持ち横に立った。

「はい!こんにちはー!」
「えっと……こ、こんにちは」


 1人はとても元気に挨拶をしてくれたが、このベッドに括り付けられている状況と相反するテンションであった。
 もう1人は何やら淡々とバインダーやらメスの様な手術道具やらをベッド横に用意していた。



「はい!それでは本日担当します、アロペット・ロロロラフと言います!そしてもう1人はアシュベトさんです!よろしくお願いします!」

 めちゃくちゃ自己紹介してくれているが、何が何やらで頭が沸きそうであったが目の前の医者?は元気に話を続けていった。


「はい!本日行うのはまず鈍器や鋭利な刃物を使った物理攻撃への体制確認です!体のいたる部位と、力加減だったり、粘膜、口の中とかね!やってみます!よし!」


 鋭利な刃物?……言われたことを理解しようとすればするほど血の気が引いていく。


「よし!じゃない!刃物って何!?物理攻撃への耐性って何?!!叩かれたら痛いに決まってるでしょー!刺されたら血でるよ!人間だよ私!何に見えてるの!鏡見せてー!!!」

「おい、実験体。動くな。陛下が連れ帰った『未知の検体』の反応を見る。とりあえず叩く刺すあたりから始めて……」 
「待て待て待て! なんでさらっと恐ろしいこと言ってるの!? とりあえず一回試着してみようかーみたいに言わないでよ!私の体、一応28年連れ添った大事な体なんですけど! 」

 私が台の上で陸に打ち上げられた魚のごとく激しくのたうち回ると、ベルトがミシミシと音を立て、2人がたじろいだ。


 「わぁ!元気だねー」
 「まだ何もしていないだろうが!」

 「何かされてからでは遅いじゃないの! 助けて! 誰か! 警察! もしくはもっと上の話わかる人!!」

 アシュベトさんはなんだかドン引きしていて、アロペットさんは何やら悩んでいる。


 そして妙案が浮かんだのか、手のひらに拳をポンと置いて提案された。

「そっか!何されるか、どうなるかの説明してなかったね!それじゃ最初から丁寧にいこっか!」
「あ、え……?」
「はい!まずお名前をお願いします!年齢は28歳ね!種族は人間だよね!あと性別は女性で間違いないね!家族や既往歴もお願いします!」
「えっと、説明を受けてないからではなく……。えっと、東 咲あすま さき、さきが名前です。年齢と種族?はご認識の通りで、家族構成は……こちらでは恐らくいないので独り身です。既往歴は小さい頃に左腕を骨折したことがあるくらいで、他に大病をしたことはありませんが、肌トラブルは比較的頻繁に起こりましてニキビができやすいです」
「肌トラブルは聞いてない」


 なんだか気の抜けた回答になってしまった。
 アシュベトさんは私が言ったことをメモしている。


「ほうほう、ご家族はいないと……。ちなみになんで奴隷落ちしたの?」
「気がついたら森にいて……」


 こちらの世界にきた馴れ初めを話し終えると黙ってしまったアロペットさん。
 一通り話しているとどんどん俯いてしまった。そして話終えると、いきなり顔を上げたと思ったらぶえーと泣き出してしまった。


「そっかぁ、そっかぁ、大変だったねぇ……買い手つかないからって戦地に放り込まれて……ここで実験されることになって……頑張って生きてたんだねぇ……」
「そうなんです。とりあえず、これ取ってもらって……」
「よし!そうと決まればさっさとやっちゃおう!」

 そう言ってサイドテーブルに置いてあった金槌を持って思いっきり振り上げていた。


「なんで!いやーーーー!!あ゙ぁ゙あ゙!今の流れ、解放する感じだったじゃん!!!」


 アシュベトさんがうんうん頷いているのが見えるが、味方をしてくれる訳でもなかった。


 陸に打ち上げられた魚が最後の足掻きで、更にのたうちまわった。
 狙いが定まらないと言ってなかなか振り上げられた金槌が振り下ろされることはないのを見た私は、諦めて金槌を置かれるまで暴れ回った。

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