転生したら母乳チートになりました

むふ

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7.お墓参り

お墓参り4/4

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「落ち着きましたか……」
「すみませんヒューバートさん。お恥ずかしいところをお見せして」
「そんな事ありませんよ。もう会えないと思っていた子に会えたなんて……俺も泣くしか……」


 先ほども何でかわからないが、もらい泣きしていたヒューバートさんが事情を何となく察してくれて、また泣き出した。
 もの凄い良い人だ。


 簡単にことのあらましを伝えるとびっくりするどころか、異界から来た女神かとか少しよく分からない事を言っていたのでとりあえず良い人だと言うことて終わらせておいた。


 

 木の目の前に皆んなで座って、箱をどうするかの話になった。


「心明、ここにいた方が皆んながいて寂しくないかな?ママねオル婆に助けてもらって生きていられているよ。赤い髪がアドラで、青い髪がアケロだよ。……乳兄妹?心明お姉さんだね」


 遺骨の入った箱に声をかけながら撫でる。
 アドラとアケロが地面スレスレに降ろされて、オル婆の魔法で少しだけ浮いている。
 
 そもそも箱を動かすには木を抜かないとならない為に、やはりここにいた方が良いだろうと話していると、アケロが徐に箱に手を伸ばした。


「あ!危ない!」

 オル婆が弾かれたと言っていたので、赤ちゃんか触れたらかなり痛いに違いない。
 私が手を伸ばしたが、間に合わず箱に手が触れた様に見えた。


 アケロが泣いてしまうと思っていたが、特に泣き出す様子もなく、普通に箱に触れられている。


 ――……あれ?
 

「オル婆?」
「何だろうね……。私は嘘は言ってないよ?」


 何事もなく触れられている箱に、オル婆が嘘を言っていた可能性が出てきたが、嘘をついてメリットは特にない。故にオル婆は本当のことを言っていた。


「…………ヒューバート。触ってごらん」
「え?俺?」
「そうだよ。この子だって触れているんだから問題ないだろう。……ほれ!早く手入れてみな!」
「えぇ……」 


 恐る恐るヒューバートさんが手を入れると、バチッィっという電気が走った様な音が響いて手を弾いた。
 小さく痛っと声が漏れたが、そこまで大きな怪我はなくすぐさまオル婆に文句を言っていた。


「アケロが触れられるということは、たぶんアドラも触れるだろうね。ヒューバートが触れなくて、綾香が触れる……」


 そう呟くとオル婆も箱に手を伸ばした。
 すると弾かれることはなくすんなり触れるではないか。


「なんでだよ!」
「………………んー、…………心明は頭がいい子だってことはわかったね」
「俺だけ、なんで……いや、確かに今日出会ったばかりだから受け入れられないのはわかる…………これから心明さんのお母さんに猛烈アタックしていくから見てて下さい!」


 心明に何だか宣言しているが、オル婆がすかさず何言っているんだいって突っ込んでいるのが面白くてツッコミまでがセットなのかなと思えるくらいだった。


 

「悩んだけど、やっぱり心明もここに一緒にいた方が良いかなと思う……」
「そうさね。ここにいたら良いんじゃないかい。ただ、こちらの世界の物じゃないから大地に還らずにずっとここにいる事になるかと思うけど」
「へぇ、不思議なもんだな。……この箱この世界ではこんなに綺麗な模様は見た事がないから本当にこっちの物ではないんだな」
「そうですね。毎日会いにきます」


 結局なんでヒューバートさんだけ触れなかったのはわからないが、心明の遺骨を木を引き抜いてまで家に持って行くことはしないという結論になった。


 毎日会いに来るからねと心明に伝えて、ヒューバートさんに持たせてしまっていた荷物を受け取って心明の前に出す。




 出した物は陶器の瓶に入った母乳だった。
 こちらの世界でお墓参りという風習はない。
 お供物なんてものは当たり前になく、心明を見つけなくてもこの花畑に母乳をお供物して帰るつもりだった。
 まともにご飯、ミルクを飲めなかった子達がここに眠っているから、どうかお腹いっぱいになって安らかに眠って下さいと手を合わせた。


 オル婆もヒューバートさんも何も言わずに手を合わせてくれた。









 家に帰ってくるとヒューバートさんが、荷物を広げてくれた。そしてオル婆が使うのだと思っていた下着が私の物だとわかると、鼻血を出してトイレに駆け込んで行った。


 オル婆が呆れて、悪いやつでは無いんだよと苦し紛れに私にフォローをいれてくれたが、良い人なのは先ほどの短い時間でもよくわかった。
 ヒューバートさんともきっと長い付き合いになるのだろうな。


 その後2日泊まっていったが、アドラとアケロに懐かれることはなく帰っていったヒューバートさんであった。 


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