ヒレイスト物語

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第一章 出会い

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時が止まっているような感覚。五感が研ぎ澄まされていく。
 カビと鉄の臭い。ジメジメとした空気。
 ポチャン、どこかで水滴が落ちる音。周りを囲う鉄格子。


 顔に何か伝っている感覚がし、水でも落ちてきたのかと思い、徐に舐めた。
 塩味と少し鉄の味がする。どうやら水ではなかったらしい。
 目が慣れてきて周りが徐々に視界が開けてくる。


 そこには見えていない方がいい光景が広がっていた。
 いっそ目隠しをされていた方がよかった。
 この後どんな目に遭うか容易に想像がつく。気が休まらない。


 寝てしまおう、そうすれば幾分かましになるはずだ。
 横になって目を閉じる。その時がくるまで。




 ここにいれられてどれぐらい経っただろうか。
 コツ、コツとゆっくり近づいてくる音が聞こえてくる。
 ああ、ここまでかと諦めに近い感覚。だが、その予想は裏切られた。


「お久しぶりです。」


 そこには見知った顔があった。
 少し容姿が変わっていたので、
 暗闇も相まって勘違いをしてしまっている
 のではと思ったが声を聞いて確信に変わる。


「久しぶりだな。誰かと思ったぞ。よかった。早くここから出してくれ。」


「その前に、そちらの状況を教えていただけますか。」


「ああ、わかった。」


 早くここから出たい、その一心でなんの疑いもなく話してしまう。
 それが間違いだったとすぐに思い知らされる。


「そうでしたか。教えていただきありがどうございます。
 聞きたいことも聞けたので、あなたは用済みです。」


 そういうと、こちらに手を向けて呪文を唱える。
 急いで距離をとろうとしたが間に合わなかった。


「イゾラント・コスト」


 何も起こらない。失敗したのか。
 それが余計に不安を掻き立てる。


「何をした?」


「ちょっとした遊びです。何も起こりませんよ。
 あなたが裏切らなければ・・・ね。それともう一つ。」


 気休めではあるが、距離をとる。


「や、やめろ。あの時のことで怒っているのか。なら、謝るから。な。
 そんなこと忘れて一緒にここを出よう。それで二人で・・・。」


 こちらの言葉は一切相手に届いていない。


「そんなに距離をとらないでくださいよ。
 傷つきますね。まあ、無駄なんですけど。」


    ”セーファ”



 光に包まれ、意識が遠のいていく。


「あなたの記憶を少し弄らせてもらいました。それと、安心してください。
 あなたがしようとしていたことは、こちらで成し遂げますので。」





「ふざけるな!×××××っ!・・・」




 最後の力を振り絞って叫ぶ。
 その声は空しく木霊する。やはり届いていない。





 コツ、コツ、コツ、コツ・・・
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