ヒレイスト物語

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第二章 別れ

物語

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小鳥のさえずりが聞こえてきて僕は起きた。
 珍しくディグニはまだ寝ていた。
 そうこうしていると、部屋の扉をノックされる。
 扉越しにペルの声が聞こえる。


「ディグニ様、ビス様。」


 僕は扉を開けて挨拶をする。


「おはよう。ペル。どうかしたの?」


「おはようございます。ビス様。
 そろそろ朝食の時間ですので、呼びに来ました。」


 ペルはここでも使用人の仕事をしているらしい。


「うん。わかった。ディグニを起こしてすぐ行くよ。」


「ディグニ様はまだお休みでしたか。相当お疲れだったのでしょう。
 ディグニ様はまだ寝かせておきましょう、ね。」


 たしかに、ディグニはモーヴェ王国を出てから
 ずっと気を張っていたように感じた。


「そうだね。じゃあ、少し準備してからすぐいくよ。」


「承知しました。食堂でお待ちしております。」





 食堂にいくと、ディグニ以外全員集まっていた。
 ペルは昨日の言った通り、立っている。


「おはよう、ビス君。」


「おはよう。ツァール。」


 そのやり取りを不思議に思ったのか、不機嫌そうにシェーンが話しかけてきた。


「あら、なんだか仲良さそうね。なにかあったの?」


 ツァールの方に目を向けると、人差し指を口に当てていた。


「ううん。何にもないよ。」


「ふーん。怪しいの。」


 不満そうにそう言い放った。 


「はははっ。男同士の秘密ってやつか。」


 なんでそういうところは勘がいいんだよ。




 ディグニは僕たちが朝食を食べ終わる頃にやってきた。


「ビス。なんで起こしてくれなかったんだよ。」


「だって、疲れてるみたいだから。」


 ペルが近づいてくる。


「私が言ったんです。もう少し寝ていてもらおうと。」


「あ、いや、怒っているわけじゃないぞ。
 ただ、部屋にビスがいなかったから驚いただけで。」


 なんとなくそれはわかっていた。





 僕たちは、ディグニを残して食堂を出た。
 シェーンに声をかけられた。


「ビス、一緒に図書室行かない?
 こっちにはモーヴェにない本がいっぱいあるってツァール兄様に聞いたの。
 べつに行きたくないならいいんだけど。」


 そんな表情をされたら断れないじゃないか。
 僕はちょっと城の中を回ってみようかなんて考えていたが、
 図書室に行くのも悪くないと思い返事をする。


「うん。いいよ。行こう。」


 シェーンと一緒に図書室に向かう。


「そういえば、昨日買ってきた本はどうしたの?」


「ん?ああ、昨日のあれね。全部読んだわよ。まだ読み足りないのよね。」


 あれだけの本を⁉驚きしかなかった。


「そ、そうなんだ。なんか目当ての本があるの?」


「ううん。そういうわけじゃないんだけど。何読もうかしらね。」




 図書室に着くと驚きの光景が広がっていた。
 モーヴェ王国の図書室よりも本が多く並んでいたのである。


「思っていたよりもすごいわね。どれを読むか迷っちゃうわ。
 うーん決めるのに時間を割くのはもったいないし、
 あっちの方から見ていきましょう。」


 そういってシェーンは本棚の方に向かっていった。



 本棚に着くと、シェーンは徐に本をとる。


「魔法に関する本が多いわね。それも、どれも高度なの。」


 シェーンが手に取った本を覗き込むと難しい文字が並んでいた。


「”イゾラント・コスト”。・・・裏切った者を罰する魔法ですって。
 発動したら裏切った者は消滅するみたい。」


 なんとも怖い魔法だ。


「ああ、私が魔法使えたらビスにかけてたのになぁ。」


 ものすごく怖いことを言う。


「や、やめてよ。」


「冗談よ。それにあなたは・・・」


 シェーンはこっちをじっと見てくる。


「僕が何?」


「な、何でもないわよ。ほら、あなたも何か本をとって読んだら。」


 そう言われて僕は、本棚を見渡した。
 どれでもいいやと思って僕は本棚に手を伸ばす。
 とったのは”アナスタシス・フルム”という本だった。



 その本は一人の少年が大切な人をなくし悲しみに暮れていた。
 ある日、少年はある噂を耳にする。この世に復活の魔法が存在すると。


 少年は大切な人を蘇らせたくて復活の魔法を探す旅に出る。
 この世界では、魔法は本に記録されている。
 そしてその本を読めば誰でも使えるようになれる。


 ただ、そんな簡単な話ではなかった。
 その本はダンジョンに隠されていて、難しい魔法ほど、
 ダンジョンは強いモンスターが出てくるようになる。


 少年は何度も挫かれるが、その度に起き上がる。
 仲間もでき、ともに様々なダンジョンを攻略していく。
 そして遂に復活の魔法が書かれた本の情報を手に入れ、そのダンジョンに向かう。


 しかしそこは地獄であった。屍が無数に転がっている。
 ダンジョンの難易度も格段に違う。逃げ帰ることもできない。
 もし、背中を向けようものなら、一瞬でやられる緊迫した状況に陥っていた。


 それでも少年と仲間たちはその本を手に入れる。
 そして少年は大切な人に魔法をかける。


  “アナスタシス・フルム”





 次のページを開こうとしたら、遠くバァン、バァンと爆発音がなる。
 驚いて僕とシェーンは外に出た。町のあちこちで火事が起きていた。
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