63 / 171
第三章 変化
予想外
しおりを挟む
「ごめん。お待たせ。」
俺はリベが階段を降りてくる。やっと来てくれた。危うく声をあげてしまうところだった。それに体の力が抜けてしまう所だったのを必死にこらえる。この迫力に負けてしまえばその空気に飲み込まれてしまうと思ったのだ。それに今は柔らかい表情だが、リベもハウのようになるかもしれないので、気を引き締める。リベが席についたのを見計らって話を始めた。
「ええ、時間を割いていただきありがとうございます。」
「何よ、そんなに改まっちゃって。こっちまで緊張するじゃない。」
思った以上に緊張していたようだ。いつもどんな風に話していたか一瞬忘れてしまった。
「んっんっ。二人にお願いがあります。モルテをしばらくの間預けていただけませんか?」
その後、ディグニのところは隠して、概要を話す。危険性は十分に伝わるように話したつもりだ。そのところはちゃんと話さなくてはいけないと思う。
全部話終わって、リベの方を見ると表情は変わっていなかった。
「いいんじゃない。私は反対しないわよ。ただ、モルテが嫌だって言ったら別だけどね。」
俺の予想は大きく外れた。リベはあっさり了承してくれる。拍子抜けしてしまい逆に質問してしまう。
「本当にいいんですね?危険な旅になることはさっきお話した通りですよ?」
「ビスが連れて行きたいっていったのに、何でそう動揺しているのよ。もしかして私が反対するとでも思った?」
何も言えなかった。その通りだったから。
それをリベは察したらしい。
「はあ、やっぱりね。私ってそんな頑固者に見える?」
今度は笑うしかなかった。悉くあてられる。
「あはははっ。」
「はあ、まあいいわ。それにモルテが危ない目にあったらビスが守ってくれるんでしょ。」
それは自信を持って答えられる。謎の自信があった。
「ええ、それはもう。それにモルテは俺が守らなくたって自分でどうにか出来ますよ。」
リベの表情が少し柔らかくなった気がする。
「嬉しいこと言うわね。今のビスになら任せられるわ。」
リベは隣を一瞥して続ける。
「それに、今のモルテには少しここを離れさせた方がいいと思うの。だから私は賛成よ。まあ、大賛成とまでは言えないけどね。」
よかった。一つの壁はあっさり乗り越えることができた。ただ、次の壁は頂上が見えない。予想外だった。逆だと思っていたからな。さっきから直視できないのだ。襲る襲るハウに視線をやるとワナワナと身体を震わせコップを割らんばかりに手に力が入っている。そして顔は力が入りあちこちに皺ができていた。酒で赤くなったのと相まって鬼のような形相をしている。
魔王はハウの方だった。
俺はリベが階段を降りてくる。やっと来てくれた。危うく声をあげてしまうところだった。それに体の力が抜けてしまう所だったのを必死にこらえる。この迫力に負けてしまえばその空気に飲み込まれてしまうと思ったのだ。それに今は柔らかい表情だが、リベもハウのようになるかもしれないので、気を引き締める。リベが席についたのを見計らって話を始めた。
「ええ、時間を割いていただきありがとうございます。」
「何よ、そんなに改まっちゃって。こっちまで緊張するじゃない。」
思った以上に緊張していたようだ。いつもどんな風に話していたか一瞬忘れてしまった。
「んっんっ。二人にお願いがあります。モルテをしばらくの間預けていただけませんか?」
その後、ディグニのところは隠して、概要を話す。危険性は十分に伝わるように話したつもりだ。そのところはちゃんと話さなくてはいけないと思う。
全部話終わって、リベの方を見ると表情は変わっていなかった。
「いいんじゃない。私は反対しないわよ。ただ、モルテが嫌だって言ったら別だけどね。」
俺の予想は大きく外れた。リベはあっさり了承してくれる。拍子抜けしてしまい逆に質問してしまう。
「本当にいいんですね?危険な旅になることはさっきお話した通りですよ?」
「ビスが連れて行きたいっていったのに、何でそう動揺しているのよ。もしかして私が反対するとでも思った?」
何も言えなかった。その通りだったから。
それをリベは察したらしい。
「はあ、やっぱりね。私ってそんな頑固者に見える?」
今度は笑うしかなかった。悉くあてられる。
「あはははっ。」
「はあ、まあいいわ。それにモルテが危ない目にあったらビスが守ってくれるんでしょ。」
それは自信を持って答えられる。謎の自信があった。
「ええ、それはもう。それにモルテは俺が守らなくたって自分でどうにか出来ますよ。」
リベの表情が少し柔らかくなった気がする。
「嬉しいこと言うわね。今のビスになら任せられるわ。」
リベは隣を一瞥して続ける。
「それに、今のモルテには少しここを離れさせた方がいいと思うの。だから私は賛成よ。まあ、大賛成とまでは言えないけどね。」
よかった。一つの壁はあっさり乗り越えることができた。ただ、次の壁は頂上が見えない。予想外だった。逆だと思っていたからな。さっきから直視できないのだ。襲る襲るハウに視線をやるとワナワナと身体を震わせコップを割らんばかりに手に力が入っている。そして顔は力が入りあちこちに皺ができていた。酒で赤くなったのと相まって鬼のような形相をしている。
魔王はハウの方だった。
0
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです
青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる
それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう
そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく
公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる
この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった
足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で……
エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた
修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た
ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている
エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない
ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく……
4/20ようやく誤字チェックが完了しました
もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる
みおな
恋愛
聖女。
女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。
本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。
愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。
記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる