上 下
3 / 7

仕事

しおりを挟む
「ちょっと、ちょっと、起きて。」

「ううううん。」

 目を開けるとさっき私のことを心配して話しかけてくれた子がいた。

「やっと、起きた。ほらいくわよ。」

 手を引っ張られる。どこにいくんだろう。

 私たちは、町を巡回していた。
 どうやら彼女に傭兵だと勘違いされているみたいで
 町の様子を見て回る仕事をしている。まあ、することもないし、いいか。

「はあ、つまんないなぁ。早く午後にならないかしら。」

 朝も食べてないから、お腹も空いてきたし。
 さっき買ってきたものを取り出して。

「うん、つまんない。そうだ。これ食べる?」

「くれるの?ありがとう。」

 そんなことをしていると、偉そうな傭兵が近づいてくる。

「おい、お前。何食べている!?これは没収だ。」

 私の食料がとられてしまう。

「朝食べて来なかったんです。どうか勘弁を~~。」

 頭を下げる。だが、返してくれなかった。

「ダメだ。」そう一言いうだけいってさっきの場所に戻っていった。

「んー。少しぐらいいいじゃない。この頑固親父が。」

 突然、その男は振り返ってくる。

「なんか言ったか。」

「いえ、何も言っていません。」

 敬礼しながら、答える。

「そうか。」

 はあ、危なかったぁ。隣にいた子がクスクス笑っている。
 その子は上手に隠して没収を免れていた。

「あんた、気づいていたでしょ。なんで教えてくれないのよ。」

「おもしろそうだったから。」

「なんだってー。」

 その子と話しているとまた、注意される。

「おい、そこ私語は慎め。」

「うぬぬぬ。」

「そんなに怒らないで。ほらこれあげるから、機嫌治して、ね。」

 いや、それ私があげたやつだし、と思いながらも
 また注意されるのは癪なので声はあげなかった。もらうけれども。

「貰うんかい。」

 小声でその子は呟いて、笑いをこらえていた。
しおりを挟む

処理中です...