アナスタシス・フルム

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第2章 老人との出会い

隠していたこと

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部屋に戻ってきて1時間ぐらい経っただろうか。扉がノックされる。


「ロガ、私よ。開けてくれる?」


「ああ、今開ける。」


扉を開けるといつもとは違う姿のディタがいた。お風呂でも入ってきたのだろうか、薄っすらとディタの体から湯気が立っている。俺は固まってしまった。


「な、何よ。早く入れてくれる?」


「あ、ああ、済まない。」


俺は扉から離れ、ディタを招き入れる。


「あなたの割には綺麗にしてるのね。」


「悪かったな。」


ディタは部屋を見回しながら適当なところを見つけ座り込む。


「そんなところに突っ立ってないで座りなさいよ。」


「そ、そうだな。」


自分の部屋なのに俺の方がソワソワしている。俺はベッドに腰掛けた。そして沈黙が流れる。この時間が一番緊張する。そして思い切って口を開く。


「「ごめんなさい。」」


言葉が被ってしまった。驚きで慌てて視線をディタに向けると、俺と同じようになっていた。


「な、何であなたが謝るのよ。」


「だって、俺あの時・・・」


口を噤んでしまった。だが、ディタはその言葉で察したみたいだ。


「別に気にしてないわよ。・・・それにその通りだなと思ったしね。」


何だかディタは俺に視線を向けているのに、俺を見ていないような感じがした。


「私の方が謝らなきゃいけないのよ。だって私あなたを利用しているようなものだから。」


ディタはさっきまでじっとこっちに向けていた視線を外した。俺は何も言葉が出てこなかった。頭が空っぽになってというよりは頭がいっぱいになって何も出てこなかったのだ。


「フォルクさんに何であのダンジョンに挑むのか聞かれた時”ロガの付き添いです。”って言ったでしょ。あれ、半分本当で半分嘘だから。・・・私本当はあのダンジョン挑戦してみたかったの。

だから、ロガと一緒に旅をすることになって仲間になることよりもあのダンジョンに私も挑戦できると思って嬉しかったの。あの時、私の本当の気持ちを隠すためにあなたを隠れ蓑にした。だって、叶えたいこともないから。ひどいでしょ、私。」


最後の言葉を発する時消え入りそうな笑顔をこちらに向けてきた。


「俺は、そうは思わない。付き添いってのもあながち間違ってないしな。・・・それにディタがあのダンジョンを気にしていたことは前から知っていたよ。まあ、叶えたい云々は知らなかったけど。」


ディタはこちらに突進してくるのではないかと思うほど体を乗り出してくる。


「う、嘘!?何でわかったの?」


「そりゃ、あれだけ俺に突っかかって来てたからな。それもダンジョンのことになると特に。」


ディタは頭を抱えていた。


「あなたに知られていた何て。誰も知られてないと思ってたのに。」


言わない方がよかっただろうか。まあ、今更か。それよりも俺も言わなくちゃいけないだろう。一回深呼吸したあとに話始める。


「ディタ、聞いてくれ。俺が叶えたいことは・・・」


「ちょ、ちょっと待って。言わなくていいわよ。」


頭を抱えていた手を慌てて俺に向けてくる。そして俺の口を塞いできたのだ。鼻も一緒に。


「で、でもディタも話したんだし、俺も話さなきゃ。」


そう言っては見たが、口を塞がれているのだ。ちゃんと伝わっているだろうか。だがそんな心配はしなくてよかったみたいだ。


「別に良いわよ。それに私は挑戦したいって言っただけだし。これでイーブンよ。・・・叶えたいことは話したくなったらでいいわ。何かこの流れで聞くのは癪だし。フォルクさんはああ言ってたけど、どんなに叶えたいことだって、人に隠したいことはあるはずだもの。だから私は待つわ。」


ディタの言いたいことはわかった。ただ、ディタの俺の口を押える力が強くなっていき声がでてこない。それに息もできなく苦しくなってくる。俺は頷きとディタの手を叩くことで必死に訴える。


「ん?ああ、ごめんなさい。」


やっと気づいてくれたらしく、手を離してくれた。


「はあ、はあ。死ぬかと思った。」


ディタは、俺の方をじっと見ている。俺の答えを聞き逃さないように。そして俺があのことを話そうとしたらまた口を塞がれそうな気がした。


「・・・わかった。話したい時が来たら話すよ。」


ディタの全身から力が抜けたような感じがした。


「じゃあ、これで話は終わりね。」


ディタは立ち上がって部屋の出口へと向かおうとする。だが、何か忘れていたことがあったのかこちらに視線を戻し、淡々と放った。


「ああ、あと明日またフォルクさんのところ行きましょう。」と。


そして、部屋を出ていこうとする。


「ちょ、ちょっと待て。またフォルクさんのところに言っても無駄だろ。」


「そんなことないわ。フォルクさんは“そんな状態では、教える気にはならんな”って言ったの。それは叶えたいことを教える、教えないは関係ないと思うわ。」


ディタは自信ありげに言う。でも、俺は不安が拭えなかった。


「そうか?」


「もう、これは決定事項だから。私は叶えたいことは特にないけど、ダンジョンに挑戦したいって気持ちを堂々と伝えるわ。あんたも覚悟決めなさい。じゃ、また明日ね。」


俺の答えは聞く気がないのかスタスタと部屋を出ていく。


「はあ、覚悟を決めろか。」


想像していたこととは違ったが、俺は憂鬱になった。明日が来て欲しくないと思ってしまう。ただ、そういう時に限って時間があっという間に過ぎていく。そしてその時が来てしまうのだ。


窓の方から何やら変な雰囲気が漂っているのでそちらを見るとそこには笑顔のレクスの姿があった。だが、窓に顔を押し付けすぎて気持ち悪い笑顔になっている。俺はカーテンを閉めて見なかったことにする。何やら外が騒がしいが気にしない。


「入れてよー。ロガー。」
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