アナスタシス・フルム

文字の大きさ
43 / 98
第3章 祭壇の謎

絶対零度

しおりを挟む
腕の速度は遅かったもののこいつの雄たけびで怯んでいたのか避けられず直撃し、凄まじいスピードでこちらに飛ばされてくる。受け止めるべきかと悩んでいたが、跳んでくるレクスが大きくなっているように感じ瞬時に避けた。

その直後ドゴッ‼という音が辺りに響く。おかしい。確かに前に跳んできた時音はした。でも、こんなに鈍く重みのある音ではなかった。それにレクスが小言を言ってこない。


「おい、レクス。大丈夫か‼」


そう言っても返事はなく、手を伸ばしレクスであるはずのものを触る。


「つめたっ‼」


「思い出した‼あいつはパゴノ・ジャリド。あいつの攻撃を受けると凍っちゃうのよ‼」


「そうか。俺も今それがわかったところだよ。」


名前はわからなかった。でも、攻撃の方は目の前のレクスを見たら明らかだった。凍っているのだ、全身。というかまるごと氷で覆われていた。


「ファイア」


「・・・ええええええ。ってあれ?ボク飛ばされたんじゃ?」


今はレクスに構っている暇はない。不思議がっているレクスを尻目に俺はジャリドに向かう。


「ちょ、ちょっと、ロガ。策はあるの?ないなら戻ってきなさい‼」


返事はしないが、策はある。ジャリドはおそらく氷の体だ。俺の攻撃が有効なはずだ。それにあいつの一撃一撃は重そうだが、避けられないスピードじゃない。だから俺は、突進しているのだ。


「フレイムソード」


魔法を出し、ジャリドの懐に潜り込み、切りつける。


「おりゃあああ‼」


ジュワーと氷が解け蒸発する音がする。ただ、切りつけたところを見ると、傷はついているもののすぐに再生されていた。内側からの冷たさの方が俺の魔法の熱より上回っているということだ。


「噓だろ⁉あの熱で溶けないのかよ。・・・じゃあこれならどうだ‼」


俺は、フレイムソードで一回のみならず何度切りつける。だが、俺の安易な行動は無謀だったことがわかった。


「くっそ、何回やっても溶けねぇ、何なんだこいつは。」


さっきの連続攻撃で息が途切れ途切れだ。態勢を整えるべく懐からでてディタの方に戻ろうとする。


「ロガ‼早くこっち来て‼」


いきなりディタが大声で叫んできた。何かあったのかと思い、走りながら上半身を捻りジャリドの方に視線をやる。そこには大口を開け、思いっきり空気を吸い込んでいるジャリドの姿があった。俺は無我夢中でディタのほうに走った。ああ、言っていたのだ、何か策があるはず、そうあって欲しい。だが、俺の走り虚しく、ジャリドの声が聞こえた。


「ゴギャアアアア‼」


その叫びはさっきの雄叫び以外の要素が含まれている気がした。俺の体は、それを感じブルブルと震えてくる。そして、一番最初に捕まったのは、左足だった。接着剤か何かでくっつけられたように動かない。振り返るとそこには透明な何かに覆われた足があった。それは徐々に俺の体を覆い始めてくる。


「くっそー‼動け、俺の足~‼」



「メイロストロム‼」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】 事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。 神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。 作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。 「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。 ※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。

物語は始まりませんでした

王水
ファンタジー
カタカナ名を覚えるのが苦手な女性が異世界転生したら……

さようなら、たったひとつの

あんど もあ
ファンタジー
メアリは、10年間婚約したディーゴから婚約解消される。 大人しく身を引いたメアリだが、ディーゴは翌日から寝込んでしまい…。

処理中です...