アナスタシス・フルム

文字の大きさ
67 / 98
第5章 異常気象の正体

積み重なるもの

しおりを挟む
山がいくつか見える場所。その片隅で俺たちは休憩していた。冷えたことに変わりはないのだが、別の意味で冷えたものが流れてくる。最後の方なんて殺す気で撃っていたように思えたのは気のせいだろうか


「手加減ってものを知らないのかよ」


「何のことかしら?それより、早く探しましょう。氷も解けてきそうだし」


あまりの暑さにそのままでは耐え切れず、俺たちはディタの魔法で作った氷の壁のなかで休憩をしていたのだ。ただ、外気の暑さで氷も解け始めている。今何度も魔法を撃ってはダンジョン内で持たないから早く探そうということなんだろうが、今の俺には厳しかった


「ちょっとだけ待ってくれ」


「だらしないわね」


疲れ切った体にその冷めた目を向けられると堪えるものがある。ここは心まで冷え切るのは避けたかった


「そうだ、情報を整理しようぜ。あいつが言ってたのは“火山の神殿、水に囲まれたり。その入り口騙されるべからず。知恵を振り絞り、挑み給え”だってよな」


「そうね。多分今重要なのは“水に囲まれたり”てとこかしら」


「あいつの口ぶりだとそれが今の状態なのかわからないけどな。もし、今の状態を指しているなら一番楽なんだけどな。・・・一番なさそうだけど」


「あと考えられるのは、干からびて山の周りに凹みだけが残っているとか、凹みすらなくなっている可能性も捨てきれないわね」


「それだと見つけようがなくないか」


それを想像すると、場当たり的に探さなくてはいけなくなってしまう。そんなのいくら時間があってもたりない。あいつのヒントはヒントにすらなっていないのではないか


「うーん、方法はなくはないわ。ほら、地層っておぼ・・・えてないわよね。簡単に言うと物質の異なったものが積み重なってできるのが地層ね」


「それはなんとなく覚えてる気がする。でも、それがどう関係して来るんだよ?」


「はあ・・・その山の周りにあった水が干からびたとするでしょ。そこに新しい物質が積もって凹みがなくなる。そしたら、周りに元からできている地層と水があったところにできた地層は違うものでしょ」


「ああ、そういうことか。その違いで見つけるってことだな・・・でも、現実的じゃないよな」


「そうなのよ」


俺たちにはそんな専門知識もないし、はっきりとその違いが出ているかもわからない。ましてや水があったところとの境がわからないし、その原理でいくと水があったところ以外も新しく積もっている可能性もあるのだ。探すにしても相当時間がかかるだろう、最悪わからないという結果に終わる可能性がある


「それだけはないと信じたいな」


「あとは、マグマで囲まれている可能性かしら。これも御免被りたいわね」


「そう、だな」


そこに近づいたのを想像しただけで体が溶けてしまいそうだ。そんなことになっていれば人一人も寄せ付けないだろう


「そんなところかしら。あとは実際に見て見ないとなんとも言えないわね」


「“入り口騙されるべからず”ってのも気になるな」


「それも、見て見ないとわからないわね」


「そうだよな~」


まずい、このままではここが快適過ぎてここから出るのが嫌になってしまいそうだ。そろそろ出た方がいいか


「そろそろ探しますか」


「もういいの?」


「ん?ああ」


「そう、ならいいんだけど」


なんなんだ?さっきあんなに冷めた目で見てきていたのに。内心心配していたとか?いやいや、あの目は本物の目だった、間違いない。まあ、考えたところでディタの本心なんて俺にはわかりっこないのだけれど


「よし、行くぞ‼・・・やっぱもうちょっとここに」


「行くって決めたんでしょ、しっかりしなさいよ」


一瞬で暑さに参り引き返そうとしたが、ディタがすぐ後ろについており、引き返そうにも引き返せない。終いにはドンッと突き飛ばされてしまう


「あっつー」



「だから言わないの」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

氷弾の魔術師

カタナヅキ
ファンタジー
――上級魔法なんか必要ない、下級魔法一つだけで魔導士を目指す少年の物語―― 平民でありながら魔法が扱う才能がある事が判明した少年「コオリ」は魔法学園に入学する事が決まった。彼の国では魔法の適性がある人間は魔法学園に入学する決まりがあり、急遽コオリは魔法学園が存在する王都へ向かう事になった。しかし、王都に辿り着く前に彼は自分と同世代の魔術師と比べて圧倒的に魔力量が少ない事が発覚した。 しかし、魔力が少ないからこそ利点がある事を知ったコオリは決意した。他の者は一日でも早く上級魔法の習得に励む中、コオリは自分が扱える下級魔法だけを極め、一流の魔術師の証である「魔導士」の称号を得る事を誓う。そして他の魔術師は少年が強くなる事で気づかされていく。魔力が少ないというのは欠点とは限らず、むしろ優れた才能になり得る事を―― ※旧作「下級魔導士と呼ばれた少年」のリメイクとなりますが、設定と物語の内容が大きく変わります。

安全第一異世界生活

ファンタジー
異世界に転移させられた 麻生 要(幼児になった3人の孫を持つ婆ちゃん) 新たな世界で新たな家族を得て、出会った優しい人・癖の強い人・腹黒と色々な人に気にかけられて婆ちゃん節を炸裂させながら安全重視の異世界冒険生活目指します!!

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

処理中です...