アナスタシス・フルム

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第6章 勇気ある愚者

マグマのなか

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“火山の神殿。その名の如く火山にあり。暑さに常人近づかず、強靭な者も熱さに逃げ出さん。奥には炎を纏いし魔物待ち受け、挑戦者を焼き払はん。勇気なき者挑むなかれ。それでも挑みし愚者、熱さに飛び込み給え。勇気を示せ、さすれば道は開かれる”

”火山の神殿、水に囲まれたり。その入り口騙されるべからず。知恵を振り絞り、挑み給え”

俺たちはマグマのなかに飛び込んだ。“勇気なき者挑むなかれ”、“熱さに飛び込み給え”。傍から見たらその勇気は無鉄砲と捉える人もいるだろう。馬鹿のすることだとあざ笑う人も。ただ、その無鉄砲は、馬鹿はある瞬間に勇気に言い換えられる。言葉を言い換えるだけでいい意味にも悪い意味にもなる。そんなの人の裁量によって見る視点によって変わる、薄っぺらで馬鹿げたもの。それでも、重みがあるという矛盾を孕むモノが”言葉”というものだと。“言葉”とは、言われた者を指し示すモノではなく言った者を指し示すモノだということ。それに気づいたのは、この冒険でのことだ。昔の俺は無意識に”言葉”に翻弄されていたのかもしれない。自分ではそう思っていなくても。薄っぺらなモノを重みがあるモノだと勘違いしていたのだ。そんなものに翻弄されていたと思うとなんだか腹が立つ。だから俺はこう思うことにした。言われた言葉は言われた者にのしかかるモノではなく言った者にのしかかるモノだと。そして意見が変わった時にこう思うことにする、“薄っぺらだな”と。まあ、口にはしないが。“言葉”の重さと薄っぺらさを理解し、自分の“言葉”に責任を持つこと、それが俺の出した答えだ。やっと俺は入り口にきたということだろう。無い知恵を振り絞り
その入り口に辿り着いた。それは一人では無理だったのかもしれない。ディタの方を向くと目が合ってしまった 

「何よ」

「何でもない。何か不思議な感覚だなと思って」

「そうね。マグマのなかを進むなんてそうそうないもの」

そう、俺たちはマグマのなかを進んでいるのだ。人のぬくもりのような暖かさに包まれている。本来であればそんなことはあり得ないし、あってはならない。これがフロワストーンの本来の力なのだろう。これなしで飛び込んだらと考えると、意識が飛びそうだ。その暖かさに和んでいると光が強くなってくる。その光によって緊張感が再び戻ってきた。やっとここまで来たのだ。拳どころか体全身に力が入る

「ちょっとロガ、震えているわよ、大丈夫⁉」

「ん?ああ、大丈夫。武者震いだよ」
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