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第一章
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「イーちゃん、ごめんね、こんな奴でさ。」
「いいえ、大丈夫ですよお義姉さま。」
「はー、本当にどうして、こいつとこんな可愛いイーちゃんが兄妹なんてありえないよー。」
説明しますと、目の前にいるこの幼げな少女はお兄さまの妻である、テレーゼお義姉さま。
歳はお兄さまよりも二つ上の姉さん女房になるのですが、見た目で言えば実年齢よりも上に見られるお兄さまと実年齢よりもかなり下に見られるお義姉さまなので、三十代のおじさんと幼な妻みたいな感じがします。
はっきり言えば犯罪ですね。
お兄さまとお義姉さまはこの家にはご一緒には住んでおらず、小さな社宅で住まわれております。
お二人とも魔道具を作られる職人であって、公的な職人なので、騎士であるクラウディアお姉さまとよく会っているそうです。
「ねー、イーちゃん聞いてる?」
少し拗ねたテレーゼお義姉さまに私は苦笑する。
「聞いておりますよ。」
「ならいいんだけどさ、それにしても、ここはいつ来ても豪華だよね、壊しそうで怖いや。」
「そうでしょうか?」
「そうだよ、これ一個売ったら魔道具幾つ作れるだろう。」
「持って帰るか?」
首を傾げそんな事を言う兄に、テレーゼお義姉さまは噛み付くように言います。
「あんたは実家だからそんな事言うかもしれないんだけど、それ普通犯罪だよ、止めてよね、マジで…。」
「何でだ?」
「本当に何でこんな奴と結婚したんだろう……。」
「そりゃ、一緒になった方が研究はかどるからって言ったからだろう。」
「……もうやだ…、人生研究に捨てたあたしが言うのも変だけど、どうしてこんな変な奴とっ捕まえて結婚したんだろう。」
「だから、研究の。」
「分かってるわよっ!」
噛みつくように叫ぶテレーゼお義姉さまに私は苦笑を漏らす。
「うわーん、イーちゃんに笑われた、あんたの所為よ。」
「そうなのか?」
「そうなのっ!」
びしりと指を突き付けられた兄はしゅんとなる。
「すまない。」
「えっと…。」
「あー、いいのいいの。」
誰に謝っているのか分からない兄に私はどうしたものかと戸惑っていると、カラカラと笑ったお義姉さまは手を振る。
「こいつはいつもの事だしね。」
「……。」
「本当に何でこんな奴なんだろう。」
「……。」
このプリプリと怒る感じ、前の親友の子と同じだな、と現実逃避を始めそうになる脳内に叱咤しながら笑みを浮かべる。
「えっと、テレーゼお義姉さまとお兄さまは本日はどうしたんですか?」
「あー、うん、イーちゃん、第三王子に求婚されたって聞いたからさ。」
「本気なのか?」
「はい。」
私ははっきりと頷いた。
ここで少しでも躊躇すれば、彼らはきっと止めにかかるだろう。
たとえ、国王の命令に背いたとしても、法を破る事になったとしても、彼らは家族を大切にする。
だから、たとえ身分差があったとしても、身内として守る。
それは私も同じだ。
アルファードに害をなすもの。
家族に手を出すもの。
そういう人がいれば私は容赦しない。
「本気なんだな。」
「勿論です、そうでなければ、私はどんな手段をとっても、逃げますから。」
「そうか。」
「つまりは、イーちゃんの一目ぼれ?」
「……。」
テレーゼお義姉さまの言葉に私は苦笑する。
傍から見れば私たちは一目ぼれ同士なのかもしれない、でも私たちは互いに互いを知っている。
「違うの?」
「魂が引き合っているから、一目ぼれとは違うような気がして…。」
「……。」
私の言葉にテレーゼお義姉さまは目を輝かせる。
「素敵じゃない。」
「そうか?」
あまり関心がないのかお兄さまがそんな事を呟けば、テレーゼお義姉さまは呆れたような顔をする。
「女の子はそういう話が大好きなの。」
「女の子……ね。」
テレーゼお義姉さまをじっと見ているお兄さまに私は呆れ、テレーゼお義姉さまはわなわなと震え出す。
「何が言いたい訳?」
ここでお兄さまが何も言わなければそこでこの話を終らせればいいのに、お兄さまは研究しか頭がないのかこの手の空気を読めないのだ。
「容姿は女の子で通るが、実年齢は駄目だろう。」
「死にさらえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ。」
やはり、こうなりましたか。
私は額に手を当て、溜息を一つ零します。
「イザベラ…。」
助けを求める兄に私は冷めた目を向けます。
「お兄さまが全面的に悪いんですよ。」
「ちょっと。」
「テレーゼお義姉さま、私は姿を戻してきますので、お部屋に来てくださいね。」
「分かったよ~、うふふふ。」
「うああああああああああああああああああああああっ!」
早足にこの場を立ち去ると背後から兄の叫び声が響き渡る。
不幸か幸いか、この家には兄の悲鳴で助けに来る人はまずいない、それは相手が彼の結婚相手だと分かっているからだろう。
そして、全面的に兄に非がある事が分かっているからだ。
そして、私が姿を戻し終え、お茶の準備を終えた頃にすっきりとした顔のテレーゼお義姉さまがやって来た。
その後ろには兄がいないのはいつもの事だ。
「いいえ、大丈夫ですよお義姉さま。」
「はー、本当にどうして、こいつとこんな可愛いイーちゃんが兄妹なんてありえないよー。」
説明しますと、目の前にいるこの幼げな少女はお兄さまの妻である、テレーゼお義姉さま。
歳はお兄さまよりも二つ上の姉さん女房になるのですが、見た目で言えば実年齢よりも上に見られるお兄さまと実年齢よりもかなり下に見られるお義姉さまなので、三十代のおじさんと幼な妻みたいな感じがします。
はっきり言えば犯罪ですね。
お兄さまとお義姉さまはこの家にはご一緒には住んでおらず、小さな社宅で住まわれております。
お二人とも魔道具を作られる職人であって、公的な職人なので、騎士であるクラウディアお姉さまとよく会っているそうです。
「ねー、イーちゃん聞いてる?」
少し拗ねたテレーゼお義姉さまに私は苦笑する。
「聞いておりますよ。」
「ならいいんだけどさ、それにしても、ここはいつ来ても豪華だよね、壊しそうで怖いや。」
「そうでしょうか?」
「そうだよ、これ一個売ったら魔道具幾つ作れるだろう。」
「持って帰るか?」
首を傾げそんな事を言う兄に、テレーゼお義姉さまは噛み付くように言います。
「あんたは実家だからそんな事言うかもしれないんだけど、それ普通犯罪だよ、止めてよね、マジで…。」
「何でだ?」
「本当に何でこんな奴と結婚したんだろう……。」
「そりゃ、一緒になった方が研究はかどるからって言ったからだろう。」
「……もうやだ…、人生研究に捨てたあたしが言うのも変だけど、どうしてこんな変な奴とっ捕まえて結婚したんだろう。」
「だから、研究の。」
「分かってるわよっ!」
噛みつくように叫ぶテレーゼお義姉さまに私は苦笑を漏らす。
「うわーん、イーちゃんに笑われた、あんたの所為よ。」
「そうなのか?」
「そうなのっ!」
びしりと指を突き付けられた兄はしゅんとなる。
「すまない。」
「えっと…。」
「あー、いいのいいの。」
誰に謝っているのか分からない兄に私はどうしたものかと戸惑っていると、カラカラと笑ったお義姉さまは手を振る。
「こいつはいつもの事だしね。」
「……。」
「本当に何でこんな奴なんだろう。」
「……。」
このプリプリと怒る感じ、前の親友の子と同じだな、と現実逃避を始めそうになる脳内に叱咤しながら笑みを浮かべる。
「えっと、テレーゼお義姉さまとお兄さまは本日はどうしたんですか?」
「あー、うん、イーちゃん、第三王子に求婚されたって聞いたからさ。」
「本気なのか?」
「はい。」
私ははっきりと頷いた。
ここで少しでも躊躇すれば、彼らはきっと止めにかかるだろう。
たとえ、国王の命令に背いたとしても、法を破る事になったとしても、彼らは家族を大切にする。
だから、たとえ身分差があったとしても、身内として守る。
それは私も同じだ。
アルファードに害をなすもの。
家族に手を出すもの。
そういう人がいれば私は容赦しない。
「本気なんだな。」
「勿論です、そうでなければ、私はどんな手段をとっても、逃げますから。」
「そうか。」
「つまりは、イーちゃんの一目ぼれ?」
「……。」
テレーゼお義姉さまの言葉に私は苦笑する。
傍から見れば私たちは一目ぼれ同士なのかもしれない、でも私たちは互いに互いを知っている。
「違うの?」
「魂が引き合っているから、一目ぼれとは違うような気がして…。」
「……。」
私の言葉にテレーゼお義姉さまは目を輝かせる。
「素敵じゃない。」
「そうか?」
あまり関心がないのかお兄さまがそんな事を呟けば、テレーゼお義姉さまは呆れたような顔をする。
「女の子はそういう話が大好きなの。」
「女の子……ね。」
テレーゼお義姉さまをじっと見ているお兄さまに私は呆れ、テレーゼお義姉さまはわなわなと震え出す。
「何が言いたい訳?」
ここでお兄さまが何も言わなければそこでこの話を終らせればいいのに、お兄さまは研究しか頭がないのかこの手の空気を読めないのだ。
「容姿は女の子で通るが、実年齢は駄目だろう。」
「死にさらえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ。」
やはり、こうなりましたか。
私は額に手を当て、溜息を一つ零します。
「イザベラ…。」
助けを求める兄に私は冷めた目を向けます。
「お兄さまが全面的に悪いんですよ。」
「ちょっと。」
「テレーゼお義姉さま、私は姿を戻してきますので、お部屋に来てくださいね。」
「分かったよ~、うふふふ。」
「うああああああああああああああああああああああっ!」
早足にこの場を立ち去ると背後から兄の叫び声が響き渡る。
不幸か幸いか、この家には兄の悲鳴で助けに来る人はまずいない、それは相手が彼の結婚相手だと分かっているからだろう。
そして、全面的に兄に非がある事が分かっているからだ。
そして、私が姿を戻し終え、お茶の準備を終えた頃にすっきりとした顔のテレーゼお義姉さまがやって来た。
その後ろには兄がいないのはいつもの事だ。
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