逆行したら別人になった

弥生 桜香

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第一章

生贄

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 村にたどり着いた瞬間、私たちは囲まれた。
 村の人たちは逃がさんとばかりに殺気立ち、そして、先導していた男が声を張り上げる。

「喜べ、この娘が贄となってくれると申し出た。」
「何と。」
「ありがたい。」
「それじゃ、助かるんだな。」
「ああ。」

 喜ぶ人々に私は諦めるしかないかと思う。
 そして、最初は呆然としていたジェダイドだったが、彼らの意味が分かったのか顔を真っ赤にしている。

「――っ!」

 今にも怒鳴りそうな彼の口を私は塞ぐ。

 抗議の視線を向けられるが、私は首を横に振った。

 馬車では舞を奉納するなんて言っていたが、実際は生贄だった。

 薄々は理解していた。

 何故、女性が舞を舞うだけなのに逃げ出したのか。

 何故、男たちはあんなにも必死になって女性を追いかけて来たのか。

 何故、「前」の龍が人の所為で大切な人を失ったと言ったのか。

 私の持っている欠片(ピース)を繋ぎ合わせれば、必然と答えは出た。

 何故、女性が逃げたのか。

 それは、女性が生贄で殺されそうになっていたから。

 何故、男たちが追ってきたのか。

 それは、若く明らかに乙女でありそうな敵年齢の女性が彼女しかいなかったから。

 まあ、ここは私も引っかかる所だが、女性の次に若い女と言えば、私よりも明らかに幼い子どもしかいないのだから、仕方ないことかもしれない。

 そして、何故、龍が人の所為で大切な人を失ったのか。

 こちらは推測でしかないのだが、身重だったもしくは子育て中だった妻の龍は生贄によって、汚れた湖に耐え消えず、その毒によって亡くなった。

 もしくは人の怨念によってその身が汚れたのか。

 どちらにしても、あの夫だった龍でさえ病に侵されていたのだ、きっとその妻の龍だって何らかの形で病を患っていたのだろうと、推測される。

 つまりは、これを留める事が出来るのなら、妻の龍が亡くなる事はないかもしれない、勿論そうできたら嬉しいけど、あくまでも、亡くなった原因がこの生贄事件に寄っての話だけれども。

 その為には私は話しに乗らないといけない。

 だから、怒るジェダイドを止めるしかなかった。

「さて、贄の少女は納屋に出も突っ込んでおくか。」
「ええ。」
「そうだな。」
「この餓鬼どもはどうする。」
「そうだな、大人しく出ていけばいいが。」
「無理じゃないか。」

 ジェダイドの顔を見た大人がそう言う。

 確かにジェダイドならば外に追い払ったとしても、今の彼なら実力行使で私の元までやってきそうだ。
 少し前の彼ならそんな事をしなかったはずなのに、どうしてここまで強くなったのだろう。
 だけど、その強さというか意志の強さは今はいらないのだけど…仕方ないですね。
 色々と諦めないといけなと分かっている私は取り敢えず、大人たちの反応を待つ。
 これで、もし、ジェダイドを巻き込むような事を言い出すのならどうしてくれよう…。

「もう面倒だ、この贄の餓鬼と一緒に放り込もうぜ。」
「だが。」
「どうせ、下手に引き離すと何仕出かすか分からないぞ。」
「確かに。」

 男の言葉に私まで納得してしまった。
 確かにここで私と引き離されたジェダイドが何をするのか私でさえ分からない。
 予想外の行動をされるくらいなら確かに一緒にいてもらった方がいいだろう。

「それじゃ決まりだな。」
「おい、餓鬼ども来い。」
「……。」

 視線でジェダイドはどうするかと問うてくる。
 私はそれに対して静かに頷く。
 今はまだ、待機。
 彼らは贄である私には危害を与えないし、そして、ジェダイドに対しても手荒な行動はしないだろう。
 それならば、大人しくついていく。
 この後暴れる事になりそうだから、今は大人しくしておこう。
 こうして、私たちは一緒の納屋で一晩を明かす事になる。
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