逆行したら別人になった

弥生 桜香

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第一章

どうして、私はここにいる

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 目を瞑るが、眠気なんてやってこなかった。

 なんでも寝返りを打つが、居心地が悪く、ため息を吐きながら、私は起き上がる。

 精霊たちが気を利かせて、小さな光を出してくれる。

 私は大きなガラス扉を開け、そして、バルコニーに出る。

 ふらり、ふわりと、あたたかな色合いの光が飛び交う。

「…………………どうして私はここにいるのだろう。」

 目を閉じ、考える。

 私は「前」の自分の時に彼が生きて欲しいとは願っていた。

 だけど、今の現状を願ったわけではなかったはずだ。

 私はもっとモノとして彼に使ってもらおうと思った。

 この命を燃やし、彼の生きる道を作る為に。

 なのに、現状は違う。

 何をどう間違って彼の許嫁にされそうになっているのだろう。

「…おかしいな。」

 ため息を一つ零し、私は、空を仰ぐ。

 彼にはもっと別の人がいるはずなのに。

 「前」の旅では彼の許嫁候補の人が居た。

 「前」の旅では彼に懸想する人が居た。

 「前」の旅では彼を憎からず思う人が居た。

 なのに、私は彼女たちを置いて、居てはいけない立ち位置についてしまおうとしている。

 色々可笑しい。

「私なんかが…。」

 私は醜い。

 見た目も。

 心も。

 私は汚い。

 この手を血で何度汚しただろう。

 彼以外の人間を排除しようとしただろう。

 私は――。

「マラカイト?」
「…ジェダイド?」

 横から声がして右を見ると、そこにはジェダイドが居た。

「お前も眠れないのか?」
「ええ。」

 だいぶ離れているが、声が聞こえないわけでもない。

 でも、他の人の迷惑になるだろう。

「ジェダイド、そっちに行ってもいい?」
「はあ?」

 怪訝な顔をする彼に私はネグリジェをたくし上げて、手すりに足をかけ、飛ぶ。

 隣のバルコニーに移り、ジェダイド側の端までくればまた飛び越える。

「お、おい。」

 焦る彼だけど、私にしたらこんなことは平気だった。

 だって、崖の上から飛び降りる訳でも、足の指ほどのへりに足をかけるわけでもないのだ。

 ただ、両手を伸ばしたくらいの距離を飛ぶだけだ。

 落ちたとしても、たった三階の高さだし、死ぬわけない。

「お待たせしました。」

 すたりとその場に降り立てば、何故かジェダイドは脱力したのか、その場に座り込んだ。

「ジェダイド?」
「……お前はそう言う奴だったな。」
「……?」

 私はジェダイドの言いたい意味が分からず、小首を傾げた。
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