逆行したら別人になった

弥生 桜香

文字の大きさ
22 / 136
第一章

一転

しおりを挟む
 シンと静まり返る村。

 刹那、私の耳に金属がぶつかり合うような音が届く。

「近い。」

 耳をすませば片方が劣勢なのがよく分かる、辛うじて剣を受けるが、このままではきっとすぐに決着がついてしまう。
 精霊たちは私の意図を感じ取ってくれたのか、それぞれが私の指示を待たずして動いてくれる。

 大丈夫。

 絶対に死なせはしない。

 ようやく私の視界に争う人影を見つけた。
 どうやって穏便に相手をしようかと考えていた所にいい知らせと悪い知らせが同時に飛び込む。

 いい知らせは、一組の賊が捕えられた事、残り八組。

 悪い知らせは、小さな子どもが人質に取られた、その時に子どもの母親と祖父が怪我を負ってしまっている。

 さらに、賊は異変に気付き始めたのか、合流しようとする動きもみられる。
 舌打ちしそうになるが、時間は無駄に過ぎるだけだ。

「水よ。」

 私は脳に足を止める指示と同時に逆に走り込むを送る。

「彼の者たちに降り注げっ!」

 視界に入っていた者たちに向かって水の精霊たちがありったけの水を掛ける。

「うわっ!」
「何だ、この水はっ!」
「何だっ!」
「ただの水?」

 騒がしくなる向うを無視して、私は意識の一部を無効に向けて口にする。

「凍てつけっ!」

 私の力をかなり使って先ほど掛けられた水は氷へと変化する。

「なっ!」
「くそっ!」
「動けない。」

 敵味方関係なく動けなくした私は次の賊に向かって駆け出す。
 できれば戦える人たちには手伝って欲しい所だが、そんな事はいってはいられない、今は辛うじて負傷者のみで済んでいるが、その内重傷、最悪の事態では死人が出る。
 そうすれば彼が傷つくかもしれないし、あの小さな子にもそんな光景を見せたくない。
 彼らが知るのは美しい世界を見て欲しい。
 醜い人間の欲や、人の死などは回避できるのならば回避したい。

「…………。」

 私は目を瞑り留め金を外す。
 子どもの身では大きすぎる力は毒となり、自分を傷つけてしまう上に、漏れ出す力は敵味方関係なく委縮させてしまう。
 私についてきた精霊たちも私の力に怯えているのか、離れ始める。
 でも、意外な事に相棒だと思っていた子や数は少ないが精霊たちが私の周りについてきてくれていた。

「ありがとう。」

 小さくお礼を言い、私は空中に手を伸ばし、氷で作った仮面を被る。

 凍てつかせたのは本当に水だったのだろうか?

 否、私は凍らせたかった、この心を。

 敵も味方も関係なく怪我を負わせてこの醜い騒ぎを終らせたかったが、もう無理だった。

 それならば、鎮圧させればいい、一瞬にして蹴散らすように。

 敵も味方も関係なく、力によってねじ伏せる。

 息を吸い、そして、リミッターを外した私は屋根を伝い走る。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした

藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると 土地を蝕む邪気となって現れる。 それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。 派手な奇跡は起こらない。 けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。 ――その役目を、誰一人として理解しないまま。 奇跡が少なくなった。 役に立たない聖女はいらない。 そう言われ、私は静かに国を追放された。 もう、祈る理由はない。 邪気を生み出す原因に目を向けず、 後始末だけを押し付ける国を守る理由も。 聖女がいなくなった国で、 少しずつ異変が起こり始める。 けれど彼らは、最後まで気づかなかった。 私がなぜ祈らなくなったのかを。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない

三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。

お妃さま誕生物語

すみれ
ファンタジー
シーリアは公爵令嬢で王太子の婚約者だったが、婚約破棄をされる。それは、シーリアを見染めた商人リヒトール・マクレンジーが裏で糸をひくものだった。リヒトールはシーリアを手に入れるために貴族を没落させ、爵位を得るだけでなく、国さえも手に入れようとする。そしてシーリアもお妃教育で、世界はきれいごとだけではないと知っていた。 小説家になろうサイトで連載していたものを漢字等微修正して公開しております。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

没落領地の転生令嬢ですが、領地を立て直していたら序列一位の騎士に婿入りされました

藤原遊
ファンタジー
魔力不足、財政難、人手不足。 逃げ場のない没落領地を託された転生令嬢は、 “立て直す”以外の選択肢を持たなかった。 領地経営、改革、そして予想外の縁。 没落から始まる再建の先で、彼女が選ぶ未来とは──。 ※完結まで予約投稿しました。安心してお読みください。

処理中です...