逆行したら別人になった

弥生 桜香

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第一章

限界という壁

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 街とは違い密集していない家に私は途中、空中で足場を作り何でもないように走る。

 私が完全に壊れるまでもって三十分。

 それまでに片をつけなければならない。

 もし、私が「前」の自分ならばリミッターを外さなくとも、風の力の感知で間違いなく三組ほどの距離だったら地の力で縫い付けて動けなくする事も可能だったかもしれないが、残念ながら私にはそのような力はない。
 出来るのは自分の視界に入る範囲程度、または感知できる距離まで。

 あまりの力のなさに自分に腹が立つ。

 どうして私はこんなにも無力なのだろう。

 いくら、精霊たちの力を借りれたところで、それを維持するための体力も気力、そして、技術がたらない。知識があってもこの体ではすぐに限界を迎える。
 いくら、体術が使えたとしても、数人がかりの大人ではその技術も無に帰す。体格差もあれば、持久力も純粋な力も相手にはかなわない。

「本当に私は無力……ね。」

 無力を嘆いていても今あるだけの力で乗り切らなければならない。
 自分が不甲斐ないと思うのなら生き残り、ジェダイドの為に力をつけなければならない。

 だって、彼は私と違って愛されているから。

 まだ、自分という殻に閉じこもる前の彼を守りたい、だから、今ここで死ぬわけにもいかないし、あの瞬間まで私は私の命、ジェダイドの命、セラフィナイトの命以外を犠牲にしてでも生き残らなければならない。

 たとえ、悪魔と罵られようが。

 死神だと怯えられようが。

 関係などない。

 私には私の理由がある。

 人は身勝手な生き物だ、それを他人に強要するつもりも、分かってもらうつもりもない、自己満足の為に私はひたすら限界を乗り切らなければならい。

 何度血を流そうと、何度血反吐を吐こうと、何度気絶しようと、私は立ち上がり目的の為に一歩を踏み出す。

「――っ!」

 ようやく敵の姿を目にし、私は体を強張らせる。

 遅かった。

 予想外の事にいつの間にか、賊が一人の村人と接触しており、賊たちは村人の一人を地に転がし、金目の物を漁っている。
 村人は遠目で分かりにくかったが、辛うじて息がある。
 私は気配を殺し、地に降り立つ。
 完全に油断しきっている彼らの背後に立ち、急所を狙う。

「うっ!」

 呻き声を上げられ、私は僅かに舌打ちをする。

「誰だっ!」
「餓鬼?」

 本当は素早く一人を倒し、すぐに残りの賊を倒そうと思ったのに、失敗してしまった。

 私はニッコリと微笑み。

 そして、地面を蹴る。

 回し蹴りに鋭い肘鉄。賊も流石にこんな子どもが攻撃なんてしてこないという思いがあったからか油断しており、何とか一瞬にして片付いた。

「……時間かかり過ぎね。」

 私は反省しながら倒れている村人に手をかざす。

 幸いにも致命傷ではないが、このまま血を流せば失血死を迎える。

「聖なる光よ……彼の者に癒しを。」

 温かな光が村人を包み込み、傷が一瞬で癒える。
 私はそれを見届け、振り返れば精霊たちが自主的に動いて、賊を地面に縫い付けていた。

「ありがとう。」

 私がそういうと彼らは私に寄り添う。

「あと……。」

 目を瞑り現状を確認する。

 西にあった二つの組が合流し、六人に。

 この近くにある二組も私がたどり着く前に合流する。

 子どもを人質にしたところは彼女を盾にしながら、マギーおばさんの家の方に向かっている。
 先ほどの自衛団とは別の所が賊と接触、こちらは先ほどの所と違い、危なげなく交戦している。

 残り四組、でも、自衛団の所を除けば三組。

 自分の残された時間を考えればギリギリ……厳しい。

 でもやらなければジェダイドの身に危険が及ぶので、泣き言何て言ってられなかった。
 私は気持ちを切り替え、再び屋根まで飛び上り駆け出した。
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