私モブ(幽霊)だよねっ!

弥生 桜香

文字の大きさ
118 / 122
北斗サイド

ギブギブッ

しおりを挟む
「北斗?」

 俺の名前を呼ぶ彩実を無視して、俺は彼女を空き教室に連れて行く。
 ようやく落ち着いて彼女と話せる。
 でも、先に…。

「…北斗。」

 俺は我慢できずに彩実を抱きしめた。
 自分よりもずっと小さな体。
 知っていたはずなのに、知らない。
 その抱きしめた感覚。
 匂い。
 胸が締め付けられるように痛んだ。
 やっとこの手で掴めたんだ。

「えっ?」

 固まる彩実を無視して俺は彼女を堪能した。
 まだ、足りない気がしたが、それでも、少し充電した俺はこいつに話しかける事にした。
 さて、何を言うか。
 色々言いたい事がある。
 恨み言も。
 こいつが何を考えているのか。
 これからの未来。
 ……そして、俺はこの一言放つ。

「……言い逃げしやがって。」
「えっ?」

 思ったよりも低い声が出てしまった。
 思っていたよりもずっと、このことについては怒っていたようだな。
 少し他人事ように思いながら、俺はジッと彩実を見ていた。
 すると、彼女はそろそろと顔を上げ、顔を引きつたせた。

「ほ、北斗さん?」

 何故か冷や汗を流し、俺に対して「さん」付けする彩実に少し疑問を抱くが、それよりも、俺は彼女に俺の気持ちをぶつける事にした。

「お前さ、人がどんな気持ちであんな言葉を言ったと思っているんだ。」
「えっと。」
「それなのに、自分だけ告白して消えやがって。」
「こ、告白っ!」

 半ば八つ当たりの自覚はあった。
 でも、彼女はそれを受け入れている。
 半分心配になるが、俺が気を付けるしかないだろう。
 というか、こいつ告白した自覚なかったのかよ。
 というか、そうなると、俺は告白だと思ったのに違ったのか?
 それだと俺はどんなけ愚かな奴だ?
 いやいや、あれは無意識かもしれないけど、こいつの告白だ。
 俺はそう言い聞かせて、話を続ける。

「しかも、誰がお前の他に好きな奴がいるって?」
「あ、あははは。」

 俺が好きなのはこいつ以外にはいないのに、酷い話だな。
 俺はあの時の事を思い出し、目が据わる。
 彩実は何か感じ取ったのか、乾いた笑いを浮かべている。
 もう遅いんだよな…。
 哀れな彩実。
 だけど、こいつは俺の地雷を踏んだんだから、仕方ないよな?

「お前さ、俺の気持ちに気づいてあんなこと言っただろう?」

 図星なのか、目を逸らそうとする彩実。
 残念。
 俺が逃がすと思ったか?
 俺は彩実が逃げないように腰を強く抱く。
 これで、逃げられねぇよな?
 苦しいのか、うめき声が聞こえたが、無視だ、無視。

「残念だったな、俺は絶対にお前を離さない。」
「……。」

 俯く彩実が何となく俺を拒絶しているように見えた。
 だから、ついつい、余計な事を言ってしまう。

「姉貴に止められたんだよ。」

 本当は会いに行きたかった。
 そうすればこんな風に暴走する事はなかっただろう。
 でも、早く会いに行っても、暴走してたかもな。
 例えば…。

「本当はお前の所に行って見舞いついでに契約書にサインしてもらったのにさ。」

 びくりと体を揺らす彩実。
 怖がらせてしまっただろうか?
 でも、もう遅い。
 お前はこの俺の前に現れたんだ。

「まあ、姉貴の止められた範囲が俺からお前に近づかない、という話しだったけどな、まさか、お前から俺のテリトリーに入り込むなんてな。」

 顔を引きつらせる彩実だか、そこには嫌悪はなかった。
 もし、本気で彩実が嫌がるのなら少しくらいは手加減をするつもりだったが、本気で嫌がる様子がないので、ついついやり過ぎてしまう。

「今更逃げられると思うか?」

 彩実の耳元で囁く。
 本能で、もがくが、しょせんは女の力だ。
 男の俺には敵わない。

「ほお、まだ逃げられると思うのか?」

 そろそろやめにした方がいいと分かっているのに、ついつい、遊んでしまう。
 それがいけなかったのだろう。
 もし、この時に俺が理性通りに動いていたら、少しは違う事があっただろう。
 だけど、俺はついつい、暴走してしまっていたのだ。

「――っ!」

 何が起こったのか分からなかった。
 だけど、体がしびれる感覚に、俺は彩実が何かをしたのだと理解する。
 弛緩した腕から彩実は抜け出す。

「ひゅーはー、ひゅーはー、し、死ぬかと思った…。」

 大げさだ、と思うのだが、彼女の目元に浮かぶ涙を見て、完全にやり過ぎたのだと理解する。

「北斗は私を殺す気だったの?」

 殺す気なんてない。
 ただ、暴走しただけ。
 だけど、それはただの言い訳でしかない。

「悪い。」
「本当に、私が悪いのも分かるのけど、絞め殺すのは勘弁してよ、もう一度霊体になるどころが今度は本当に死んじゃうんだからね。」

 そうか、こいつは生身だ。
 俺の腕力だけで簡単に殺してしまう、そんなか弱い生き物なのだ。
 ………か弱い…のか?

「話聞きたいけど、もうちょっとしびれていてね。」

 こいつはまともに能力の使い方を知らないはずなのに、死なない程度で、しかも、俺がこいつに手出しできない適量で痺れさせやがった。
 ある意味天才なのかもしれない。
 そんな事を思っていたが、運が悪い事に、彩実の携帯が鳴る。

「……彩実。」
「あははは。」

 タイムオーバー。
 せっかくの時間なのに、最後の最後は痺れさせられて終わりだなんて、あんまりだろう。
 でも、まあ、仕方ないか…。

「今日の所は見逃してやる、だから、今週の土曜日の午後時間空けとけ。」
「えっ?」
「大丈夫だ、次は絞め殺すなんてへまはしねぇよ。」
「……。」

 約束を取り付ける。
 大丈夫だ、再会したんだ。
 もう二度と会えないというわけじゃない。
 彩実は了承のつもりなのか、俺に仕掛けた痺れを取った。
 そして、俺はこいつにこれ以上手を出さないように校門まで連れて行く。
 幽体では何度か行っているが、もしかしたら、迷子になるかもしれないからな。
 そして、彩実を無事彼女の母に託し、俺は残りの仕事をして、終わってから、姉貴から一通のメールを見つける。
 そこには知らないメールアドレスとメッセージが書かれていた。

「「どうせ、あの子のメールアドレスを聞いていないのでしょ?
 愚弟、しっかりしなさいよね」……。」

 確かに、俺はあいつのメールアドレスを聞くのを忘れていた。
 流石は姉だが…。
 なんつーか、閉まり悪いな…。
 俺は半分感謝しながらも、それでも、素直に感謝できない微妙な感情を抱えながら、彩実にメールを送った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

あの日、幼稚園児を助けたけど、歳の差があり過ぎてその子が俺の運命の人になるなんて気付くはずがない。

NOV
恋愛
俺の名前は鎌田亮二、18歳の普通の高校3年生だ。 中学1年の夏休みに俺は小さい頃から片思いをしている幼馴染や友人達と遊園地に遊びに来ていた。 しかし俺の目の前で大きなぬいぐるみを持った女の子が泣いていたので俺は迷子だと思いその子に声をかける。そして流れで俺は女の子の手を引きながら案内所まで連れて行く事になった。 助けた女の子の名前は『カナちゃん』といって、とても可愛らしい女の子だ。 無事に両親にカナちゃんを引き合わす事ができた俺は安心して友人達の所へ戻ろうとしたが、別れ間際にカナちゃんが俺の太ももに抱き着いてきた。そしてカナちゃんは大切なぬいぐるみを俺にくれたんだ。 だから俺もお返しに小学生の頃からリュックにつけている小さなペンギンのぬいぐるみを外してカナちゃんに手渡した。 この時、お互いの名前を忘れないようにぬいぐるみの呼び名を『カナちゃん』『りょうくん』と呼ぶ約束をして別れるのだった。 この時の俺はカナちゃんとはたまたま出会い、そしてたまたま助けただけで、もう二度とカナちゃんと会う事は無いだろうと思っていたんだ。だから当然、カナちゃんの事を運命の人だなんて思うはずもない。それにカナちゃんの初恋の相手が俺でずっと想ってくれていたなんて考えたことも無かった…… 7歳差の恋、共に大人へと成長していく二人に奇跡は起こるのか? NOVがおおくりする『タイムリープ&純愛作品第三弾(三部作完結編)』今ここに感動のラブストーリーが始まる。 ※この作品だけを読まれても普通に面白いです。 関連小説【初恋の先生と結婚する為に幼稚園児からやり直すことになった俺】     【幼馴染の彼に好きって伝える為、幼稚園児からやり直す私】

【完結】好きって言ってないのに、なぜか学園中にバレてる件。

東野あさひ
恋愛
「好きって言ってないのに、なんでバレてるんだよ!?」 ──平凡な男子高校生・真嶋蒼汰の一言から、すべての誤解が始まった。 購買で「好きなパンは?」と聞かれ、「好きです!」と答えただけ。 それなのにStarChat(学園SNS)では“告白事件”として炎上、 いつの間にか“七瀬ひよりと両想い”扱いに!? 否定しても、弁解しても、誤解はどんどん拡散。 気づけば――“誤解”が、少しずつ“恋”に変わっていく。 ツンデレ男子×天然ヒロインが織りなす、SNS時代の爆笑すれ違いラブコメ! 最後は笑って、ちょっと泣ける。 #誤解が本当の恋になる瞬間、あなたもきっとトレンド入り。

社畜OLが学園系乙女ゲームの世界に転生したらモブでした。

星名柚花
恋愛
野々原悠理は高校進学に伴って一人暮らしを始めた。 引越し先のアパートで出会ったのは、見覚えのある男子高校生。 見覚えがあるといっても、それは液晶画面越しの話。 つまり彼は二次元の世界の住人であるはずだった。 ここが前世で遊んでいた学園系乙女ゲームの世界だと知り、愕然とする悠理。 しかし、ヒロインが転入してくるまであと一年ある。 その間、悠理はヒロインの代理を務めようと奮闘するけれど、乙女ゲームの世界はなかなかモブに厳しいようで…? 果たして悠理は無事攻略キャラたちと仲良くなれるのか!? ※たまにシリアスですが、基本は明るいラブコメです。

三年間片思いしていた同級生に振られたら、年上の綺麗なお姉さんにロックオンされた話

羽瀬川ルフレ
恋愛
 高校三年間、ずっと一人の女の子に片思いをしていた主人公・汐見颯太は、高校卒業を目前にして片思いの相手である同級生の神戸花音に二回目の告白をする。しかし、花音の答えは二年前と同じく「ごめんなさい」。  今回の告白もうまくいかなかったら今度こそ花音のことを諦めるつもりだった颯太は、今度こそ彼女に対する未練を完全に断ち切ることにする。  そして数か月後、大学生になった颯太は人生初のアルバイトもはじめ、充実した毎日を過ごしていた。そんな彼はアルバイト先で出会った常連客の大鳥居彩華と少しずつ仲良くなり、いつの間にか九歳も年上の彩華を恋愛対象として意識し始めていた。  自分なんかを相手にしてくれるはずがないと思いながらもダメ元で彩華をデートに誘ってみた颯太は、意外にもあっさりとOKの返事をもらって嬉しさに舞い上がる。  楽しかった彩華との初デートが終わり、いよいよ彩華への正式な告白のタイミングを検討しはじめた颯太のところに、予想外の人物からのメッセージが届いていた。メッセージの送り主は颯太と同じ大学に進学したものの、ほとんど顔を合わせることもなくなっていた花音だった。

【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!

雨宮羽那
恋愛
 いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。 ◇◇◇◇  私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。  元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!  気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?  元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!  だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。 ◇◇◇◇ ※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。 ※アルファポリス先行公開。 ※表紙はAIにより作成したものです。

10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました

専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

処理中です...