もう一度君と…

弥生 桜香

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第六章

第六章「体育祭」3

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 そうこうしている内に宣誓やら準備運動が終わり、プログラム一番のスプリントと二番の五十メートルハードルの出場選手の待ちのコールがかかる。

「あっ、俺だ。」
「おー、行ってこい。」
「一着だぞ。」
「オッケー、オッケー、俺に任せろ。」

 ドンと自らの胸を叩く碧に涼也は苦笑する。

「こけんなよ。」
「こけねぇよ。」
「どうだかな。」
「俺のこの脚力を舐めるな。」
「いや、脚力の問題じゃないからな。」
「そうそう、お前のドジっ子素質の問題だ。」
「俺はドジっ子じゃねぇし、つーか、女扱いすんな。」

 怒鳴る碧に涼也は肩を竦める。

「おい、碧、別に女扱いしてねぇよ。」
「そうなのか?」

 キョトンと首を傾げる彼に涼也は苦笑する。

「お前が過剰に反応している理由は分かっているけど、そこまで、過敏にならなくてもいいと思うぞ。」
「でもさ。」
「今回のこれで挽回すればいいだろ?」
「そうだな、うん、汚名挽回するな。」
「ん?」
「あっ?」
「おう、頑張れよ。」

 碧の言葉に違和感を覚えた連中は首を捻り、明らかに間違いだと分かっている面々は額に手を当て、それに気づいていない数名はニコニコと笑っている。

「おい、お前。」
「ん?何だよ。」

 声を掛けて来た樹を見た瞬間、碧は顔を顰める。
 きっと本能的に何かを言われるのかを分かっているだようだ。

「お前は馬鹿か。」
「何だよ、喧嘩売ってるんなら買うぞ。」
「ああ、バカだったな。」
「……。」

 徐々に碧の怒りのゲージが上がるのが、誰の目にしても明らかだった。

「お前な…。」
「汚名は返上するものだ。」
「ん?」

 涼也は何で人の怒りのゲージを上げてから自分の話に持っていくのかと、樹の神経を疑いたくなる。
 そして、唐突に話が変わった事に碧は怒りを取り払って首を傾げている。

「因みに名誉挽回が正解だ。」
「えっと?」
「つまり、お前は汚名を更に擦り付ける気か?」
「へ?」
「だから、お前は馬鹿だと言っているんだ。」
「うー……。」
「勉強するって言ったよな。」

 目を逸らす碧に樹の眉が跳ねる。

「言ったよな。」
「はい…。」
「明日からみっちりするからな。」
「えー。」
「いいな。」
「ふぁい…。」

 どこか不服そうな碧に樹は満足そうに笑った。

「お前ら、つーか、、碧さっさと行けよ、係の奴が困るだろう。」
「ああああああっ!樹のばかあああああああっ!」

 涼也の言葉に碧はハッとなり、怒鳴りながら張りし出した。
 これから走るのに全力疾走している碧に対し、女子は温存しなさいよ、と怒鳴っているが、きっと碧にはその声が届いていないのだろう。
 ただ、碧はあんなに全力疾走したのにもかかわらず、一種目目の競技では見事に一着でたどり着き、さらに、今までの成績を塗り替える偉業もなした。
 さて、競技はまだ始まったばかり。
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