もう一度君と…

弥生 桜香

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第六章

第六章「体育祭」5

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 涼也は自分の番を待ちながら周りを見渡す。
 今回彼が出場する競技はスウェーデンリレーでアンカーなので、一番距離が長い。
 なので、周りにいる面々は中・長距離が得意な人が多い。
 涼也はどちらかと言えば短・中距離が得な方なので、この競技に関しては勝てるかどうかは前走しだいなのだった。
 そして、今は第二走者が走っており、三位と言う微妙な位置にいる。

「……。」

 涼也は「前」の自分がどんな種目に出ていたのかとフッと思い、思い出そうとしたが、残念ながら走っていたような気がするという、曖昧なものだった。
 それもそうだろう、もうかなりの前の話であってよっぽど同じ競技に出ていたとかそういう何か印象がなければ思い出す事はそうそうない。
 ただ、碧が色々やらかしたな、という思い出はあるのだが、その色々が何だったのか、思い出せないが、きっと彼は今回もやらかすんだろうな、とどこか遠い目をする。
 そうこう考えていると第三走者になっていた。
 いつの間にか一人抜き二位に浮上しているが、一位とかなり間が空いているうえに、三位とは僅差だった。
 このまま逃げ切れるかはまだ分からない。

「さて…。」

 涼也は軽くその場でストレッチを繰り返す。

 第一走者はトラック半周。

 第二走者はトラック一周。

 第三走者はトラック一周半。

 第四走者はトラック二周。

 そして、アンカーの涼也はトラック三周となっている。
 何で自分がトラックを三周は知らないといけないのかと頭の片隅で文句が出てくるが、かと言ってあの場で文句を言えば色物に回される可能性があったので、彼が文句を言うという選択肢はなかった。
 第四走者が全員一度目の前を通過したのを確認したら涼也はスタート位置に着く。
 自分のクラスは何とか二位を保っている。
 しかし、一位との差はまだかなりあり、三位とは気を許せば間違いなく抜かされる。

「……ふぅ。」

 深呼吸をして己を落ち着かせる涼也は構える。
 そして、一位のチームがバトンを渡し走り出す、すぐに自分のクラスメートが来て自分にバトンを託す。

「わりぃ、詰めれなかった。」
「大丈夫だっ!」

 涼也は謝るクラスメートにそう言い残し走る。
 二周目までは体力を温存するように涼也は走る。

「……。」

 三位との距離は徐々に開いていくが、一位との差はまだかなりあった。
 涼也は自分の体力と相手の速さ、そして、残りの種目等を考え、一周半を過ぎた時に一気に加速する。
 実況をする生徒が何かを言っているようだが、今涼也の頭にあるのはどうやって一位を取るかだった。
 徐々に一位との差が縮まっていく。
 相手も涼也に気づいたのかスピードを上げるが、涼也の方が早いのか差が縮まっていく。
 二周目にして涼也と一位の所為との差は十歩ほどまで縮まっている。

「……。」

 思ったよりもきつくなり、涼也の息が上がる。
 口から血の味がするが、涼也はそれを無視してひたすら走る。

 残り半周。

 差は五歩まで縮まる。

 あと少し。

 あと少し。

 ようやく一位と並ぶ。

 あと一歩。

 あと一歩。

 そして、ゴールのテープに突っ込むようにして二人はゴールする。

「接戦の末に勝ったのはーー。」
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