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第六章
第六章「体育祭」14
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俗にいうお姫様抱っこでゴールしてしまった碧はもう熟れたトマトのように顔が真っ赤になっていた。
「お疲れ様です、紙を回収します。」
係の人に碧は折られた紙を渡し、係の人(男)はその内容を確認し、そして、同情するような目で彼を見ていた。
「……。」
「……。」
同情の眼差しを向けられた、二人の無言の表情は異なっていた。
一人は訳が分からず、眉を吊り上げ、不審そうな顔をしているし。
もう一人は理由が分かっているのかまるで、穴があったら入りたいようなそんな顔をしていた。
『おっと、一位で到着した奴らの借り物の内容は何と「ファーストキスの相手、または最近キスした相手」だっ!』
「……。」
「なっ……。」
実況放送をしていた係の言葉に碧は死んだ魚のような目をし、樹は絶句していた。
『ぱっと見は美男美女なんだけどな……、残念ながらどっちも男か、すげー不憫だが、仕方ないな。』
何が仕方ないのかと樹は怒鳴りたくなる。
一方、碧は過去の数々の経験からか嫌な予感がひしひしとしているのだが、同時に逃げられないのだと悟っているのか、もう表情がなかった。
『そんじゃ、キスやってくれ。』
軽く言われた言葉にとうとう樹が切れた。
「てめぇ何言ってやがる。」
『仕方ないだろう、そういう進行だし。』
なおも言い募ろうとする樹だったが、それは物理的に止められる。
グイッと首元を掴まれ、そして、温かい何かが彼の口元に押し付けられたのだ。
「……。」
「……。」
「……。」
「……………っ!」
シンと静まり返る中、ようやく樹がハッとなる。
そして、樹が正気に戻ったと分かったのか、樹の唇を奪った人物はグイッと自分の口元を拭った。
「これでいいんだろうっ!」
男らしい態度に反して、その眼は死んでいるようだったが、それに気づいているのは多分ごくごく数名の人間だけだろう。
「お、おま……っ!」
顔を真っ赤にして言葉を詰まらせる樹に碧はハッと鼻で笑う。
「どうせ、しなきゃらならねぇならさっさとすませる。」
「……お前という奴は慎みがないのか。」
「女じゃあるまいし、何言ってるんだよ。」
「あっ?」
今にも喧嘩が勃発しそうな二人に係の人は狼狽え始める。
「どうせ、お互いに初めてじゃないんだし、もういいじゃねぇか。」
「んだと。」
「つーか、俺だと役不足な訳?」
「……。」
ない胸を突き出す碧に樹はブチ切れる。
「へー、そうか、お前はそんなにもオレとキスをしたい訳だ。」
「なっ、何でそんな事になるんだよっ!」
完全に血が上っているのか、変な事を考え始める樹に碧は顔を真っ青にする。
「お前、変な事やるんじゃーーっ!」
時すでに遅し、碧が逃げる前に今度は樹が碧の口に己のそれを押し当てた。
「んーーーーーーっ!」
もし、口が押えられてなければ碧は絶叫していただろうが、残念ながら彼の口は元凶であるそれによって塞がれていた。
そして、彼らは気づいていないが外野からの黄色い悲鳴が上がっているのだが、残念ながら自分たちしか見ていない彼らが気づく事はなかった。
「お疲れ様です、紙を回収します。」
係の人に碧は折られた紙を渡し、係の人(男)はその内容を確認し、そして、同情するような目で彼を見ていた。
「……。」
「……。」
同情の眼差しを向けられた、二人の無言の表情は異なっていた。
一人は訳が分からず、眉を吊り上げ、不審そうな顔をしているし。
もう一人は理由が分かっているのかまるで、穴があったら入りたいようなそんな顔をしていた。
『おっと、一位で到着した奴らの借り物の内容は何と「ファーストキスの相手、または最近キスした相手」だっ!』
「……。」
「なっ……。」
実況放送をしていた係の言葉に碧は死んだ魚のような目をし、樹は絶句していた。
『ぱっと見は美男美女なんだけどな……、残念ながらどっちも男か、すげー不憫だが、仕方ないな。』
何が仕方ないのかと樹は怒鳴りたくなる。
一方、碧は過去の数々の経験からか嫌な予感がひしひしとしているのだが、同時に逃げられないのだと悟っているのか、もう表情がなかった。
『そんじゃ、キスやってくれ。』
軽く言われた言葉にとうとう樹が切れた。
「てめぇ何言ってやがる。」
『仕方ないだろう、そういう進行だし。』
なおも言い募ろうとする樹だったが、それは物理的に止められる。
グイッと首元を掴まれ、そして、温かい何かが彼の口元に押し付けられたのだ。
「……。」
「……。」
「……。」
「……………っ!」
シンと静まり返る中、ようやく樹がハッとなる。
そして、樹が正気に戻ったと分かったのか、樹の唇を奪った人物はグイッと自分の口元を拭った。
「これでいいんだろうっ!」
男らしい態度に反して、その眼は死んでいるようだったが、それに気づいているのは多分ごくごく数名の人間だけだろう。
「お、おま……っ!」
顔を真っ赤にして言葉を詰まらせる樹に碧はハッと鼻で笑う。
「どうせ、しなきゃらならねぇならさっさとすませる。」
「……お前という奴は慎みがないのか。」
「女じゃあるまいし、何言ってるんだよ。」
「あっ?」
今にも喧嘩が勃発しそうな二人に係の人は狼狽え始める。
「どうせ、お互いに初めてじゃないんだし、もういいじゃねぇか。」
「んだと。」
「つーか、俺だと役不足な訳?」
「……。」
ない胸を突き出す碧に樹はブチ切れる。
「へー、そうか、お前はそんなにもオレとキスをしたい訳だ。」
「なっ、何でそんな事になるんだよっ!」
完全に血が上っているのか、変な事を考え始める樹に碧は顔を真っ青にする。
「お前、変な事やるんじゃーーっ!」
時すでに遅し、碧が逃げる前に今度は樹が碧の口に己のそれを押し当てた。
「んーーーーーーっ!」
もし、口が押えられてなければ碧は絶叫していただろうが、残念ながら彼の口は元凶であるそれによって塞がれていた。
そして、彼らは気づいていないが外野からの黄色い悲鳴が上がっているのだが、残念ながら自分たちしか見ていない彼らが気づく事はなかった。
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