もう一度君と…

弥生 桜香

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第七章

第七章「ハロウィン」10

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 碧は今回のイベントが始まる二時間前に拉致された。
 学校帰り普通に歩いていると、行き成り車に連れ込まれた。

「な、何すんだよっ!」

 碧は自分を浚う人物を睨みつけようと顔を上げた瞬間、色を失った。

「ハロー。」
「な、な、な…。」

 絶句する人物の目の前にはもうすでに仮装している人物がいた。

「素晴らしく良い反応をするわね。」
「何で…。」
「あら、毎年顔を覗かしているじゃない。」
「確かに毎年見に来ているけど、何で今年は拉致しているんだよ。」
「まあ、拉致なんて言葉知っているの?」
「今の俺の現状そのものだろう。」

 碧の言葉に藍妃は感動しているようだった。

「勉強嫌いのあおちゃんがちゃんと勉強しているなんて。」
「感動するところそこじゃないだろう。」
「突っ込みの場所が違います。」
「あら、田中。」
「ですから、田中ではありません。」

 運転をしている唯一の良識人である彼は突っ込みを入れるが、藍妃によって脱線させられる。

「まあ、いいわ、そういえば、貴方はなんの仮装をするつもりなの?」
「この格好がすでに仮装なようなものですが?」

 若干苛立ちのような険のあるような声に碧はびくりと体を震わせるが、藍妃は飄々とした顔で受け流す。

「あら、そうなのかしら?」
「明らかにそうでしょう。」
「似合っているから忘れていたわ。」
「……。」

 色々言いたい事がありそうな雰囲気を発するが、彼は一言も漏らす事もなく、否、溜息一つで全てを吐き出し、運転に専念する。

「大変だな……。」
「あら。何がかしら?」
「いや、藍妃さんの世話は大変だな、と思った訳じゃないからな、絶対思ってないからな。」
「……。」

 藍妃はとても残念な子を見るように碧を見る。

「こんな馬鹿な所も可愛いけど、その口、今は余計よね。」
「いひゃああああああああああああああ。」

 藍妃はニッコリと微笑みながら碧の柔らかそうな頬を捻りを聞かせながら横へと伸ばす、因みにその時彼女の付け爪が食い込んでいるのだか、彼女は気づていないふりをしている。

「ねぇ、あおちゃーん。」

 猫なで声の藍妃に碧は涙目になりながら見上げる。

「おねえさんねー。とーーーーっても傷ついたわ。」
「……。」
「だから、その慰謝料。その体で返して頂戴ね?」

 語尾にハートマークがついている藍妃の口調に碧は青ざめる。

「どうしようかしらね?」

 碧は必死で助けを求めるように視線を彷徨わせるが、残念ながら彼女から助けてもらえるような人はここにはいない。
 いや、一人いたのだが、その人物は自分に被害を広げられたくなかったのか、大人しく藍妃に碧を差し出していた。

「やっぱり、相手はあの名倉の小僧にして…。」

 碧はブツブツと訳の分からない言葉を吐きだす藍妃に抓られながら遠い目をして、目的地に早く着くように祈った。
 しかし、着いたら着いたで女装という地獄が待っている事に残念ながら今の彼は気づいてはいなかった。
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